教員免許を取得するためには教育実習が必須です。実際に教員の仕事を体験できる教育実習を心待ちにしている人も多いでしょう。
教育実習は行き当たりばったりで進められるものではありません。また大学側が全てをサポートしてくれるわけではなく、自分で準備を進める必要があります。
この記事では中学や高校の教員を目指している人へ向けて、教育実習の事前準備についてプロセスや注意点などを解説します。
目次
教育実習の事前打ち合わせでは、実習先の担当教諭とともに実習の詳細について相互確認を行います。多くの場合、実習が始まる1~2ヶ月前に実習先へ赴き、担当の先生と段取りや授業の内容などを話し合います。事前打ち合わせは、実習をスムーズに行うに当たって不可欠なものです。
特に重要なポイントの1つは、「この実習先はどのような教育方針で何を重視しているのか」を把握することです。実習生といえども、実習が始まればその学校が本来求めている教員として生徒と接する必要があります。事前打ち合わせから教育実習は始まっていると考えて臨みましょう。
事前打ち合わせが1~2ヶ月前に行われることを考慮すると、事前打ち合わせの準備はさらに早くから進める必要があります。3年生の3月に入ったら教育実習を意識してスケジュールを立てていきましょう。ここでは事前打ち合わせに必要な準備について解説します。
まずは事前打ち合わせに必要な資料をそろえます。一般的には誓約書・教育実習調査票・実習日誌・実習の手引き・成績証明書・健康確認表などが必要となります。
大学では事前打ち合わせの前にオリエンテーションが行われ、必要な準備についての説明があります。オリエンテーションには必ず参加して自分がどのようなスケジュールで準備を進めればよいのか、どれほどの準備期間が必要なのかを確認しましょう。
特に健康確認表の記録には注意が必要です。健康診断や麻疹の抗体検査など結果が出るまでに時間を要する項目もあるため、早めの準備を心掛けましょう。
多くの場合、実習先へのアポイントは自分で電話をかけて行います。ここで注意したいのは電話をかける時刻です。中学や高校の場合、基本的に午後3~4時までは授業が行われています。その後は部活動などがあるものの教員の勤務時間は午後5時までです。これらのことを考慮して、電話は午後4~5時の間にかけるのが望ましいでしょう。
もちろん電話は通じても担当の教員が不在というケースもあります。その場合「都合の良いときに折り返し連絡をください」というお願いは失礼だと感じる人もいるため、担当の教員がいる時間帯を電話口の人に聞くなどして再度こちらから連絡しましょう。
事前打ち合わせの服装はリクルートスーツがましいでしょう。
また校内は土足禁止のケースが多いため、スリッパを持っていくと安心です。事前打ち合わせの内容を記録するメモ帳と筆記用具も忘れずに持参しましょう。
教育実習では、打ち合わせも含めて現場の教員と仕事の話をします。自分も社会人の一員という意識で言葉使いや服装などは注意しましょう。
事前打ち合わせの流れは実習先によって多少異なるものの内容は共通しています。ただ話を聞くだけではなく自己紹介など自分が話すシーンもあるため、ある程度シミュレーションしておくと安心です。ここでは事前打ち合わせの流れを解説します。
まずは他の実習生も含めて全体での顔合わせが行われます。教育実習は実習先が複数の実習生を受け入れるケースと、実習生は自分だけというケースがあります。いずれの場合でも自己紹介は必須です。何を話したらよいか分からなくて困ることがないよう事前に練習しておきましょう。
その後、全体での打ち合わせが行われます。ここでは学校の教育方針や実習生に求めることなどが示され、校内を見学させてもらえることもあります。説明後に感想を求められることもあるため、ただ見たり聞いたりするだけではなく自分なりに感じたことをメモしながら参加しましょう。
全体での打ち合わせ後は担当する教科ごとに詳細な打ち合わせが行われます。実際に行う実習や授業について詳しく説明されるため、一つひとつの事柄を綿密に把握することが重要です。分からないことはメモを取りながら話を聞きます。話を遮って都度説明を求めると予定している時間では足りなくなってしまうこともあるため、相手に配慮した質問の仕方を心掛けましょう。
事前打ち合わせでは授業に関する打ち合わせが最も重要なポイントです。ここで分からないことをそのままにしてしまうと実習に入ってから困ることが数多く出てきます。聞き逃すことのないよう真摯な姿勢で臨みましょう。
事前打ち合わせでは実習に必要な内容が細かく説明される一方、担当する教員が「これくらい理解しているだろう」と思い込んで説明を省略したり伝達漏れがあったりすることもあるため注意が必要です。ここでは事前打ち合わせで必ず確認すべき5つのポイントを解説します。
中学や高校では担任の先生と教科ごとの先生がそれぞれ分かれていることが一般的です。教育実習でも同様に、担当するホームルームクラスと担当する教科が決められます。そのため、実習を指導してくれる教員も実習生1人につき学級担当と教科担当の2名がつくのが一般的です。
学級担当からはホームルームの運営、教科担当からは担当する授業の運営に関する指導を受けます。教科は大学の専攻によってある程度固定化されていることも多いものの、担当するホームルームは事前打ち合わせで初めて発表されることも少なくありません。分からないことは積極的に聞いて確認しましょう。
教育実習は5~6月に行われるケースが多く、その時点で生徒が学んでいる単元を担当するのが一般的です。実習先によっては9月以降に実習が行われることもあります。
事前打ち合わせでは受け持つ分野や単元を提示されるものの、授業の進度はクラスによって異なることも多いため、担当の教員に実情を確認することが重要です。事前打ち合わせ後は提示された内容に沿って実習の準備を進めます。
教員経験がない中で万全の準備をするのは難しいため、どのような準備をどの程度行っておけばよいのか担当の教員に確認しておきましょう。
授業で使用する教材や資料は実習先によって異なります。内容を確認することはもちろん、重点的に準備しておくポイントも把握しておくと安心です。実習先によっては指導案の提示を求められることがあります。その場合はフォーマットの有無や提出形式も確認しましょう。
教材や資料は貸し出される場合と自身で準備する場合があります。準備が必要な場合はできるだけ早くそろえて内容を把握しておくことが重要です。また、実習中の服装や靴は実習先のルールや担当する教科によって異なります。授業を行うに当たって着替えが必要になる場合は更衣室などの場所も併せて確認しましょう。
給食や部活動を実施している中学、高校は少なくありません。まずは実習で給食や部活動に参加するかどうかを確認しましょう。参加する場合は必要な持ち物も増えます。給食であればエプロンが必要になることもありますし、部活動では使用する道具をそろえる必要があります。
特に部活動に参加する場合は、タイムスケジュールに注意が必要です。教員の終業時間は午後5時であることが一般的ですが、部活動を担当している教員は定時後も練習などに参加したり休日も指導のために出勤したりしているケースが多くあります。実習生にそこまで求めることは稀ですが、相互の認識に齟齬がないよう確認しましょう。
実習先への登校は公共交通機関を使うのが基本です。一方、実習先によってはそもそも公共交通機関では登校が難しく車での登校が前提となっている場合もあります。実習先がどの交通手段を基本としているのかを確認し、車やバイク、自転車での登校が認められる場合は駐車場や駐輪場の場所も把握しておきましょう。
特に、車やバイクで登校する場合は保険の加入状況も確認しておくと安心です。学校は子どもたちが集う場であり、意図しない事故に見舞われることもあります。あらゆる可能性を考えて自分が安心できる状態で登校しましょう。
スムーズに実習を始めるためには事前打ち合わせ後の準備期間が重要です。実習先によって求められる準備は異なるものの、最低限行うべきポイントは押さえておきましょう。ここでは実習が始まるまでの準備について解説します。
まずは使用する教材の研究を行います。自分が教材の内容を理解することはもちろん、どうすれば生徒にしっかりと内容を伝えられるかを考えましょう。いざ生徒を目の前にして、初回からベテランさながらの授業を行える実習生は非常に稀です。実習が始まる前に動画撮影などを活用してシミュレーションを行いましょう。
その際に必要になるのが指導案です。指導案を綿密に作成することによってスムーズな授業が可能となります。指導案は担当の教員に提出することを求められますが、あくまでも授業を行う際の指針として自分自身のために作成しましょう。
2021年現在、教育現場は新型コロナウイルス感染症のために流動的な対応を迫られている状況が続いています。多くの生徒を相手にする実習生に求められることは徹底した体調管理です。「新型コロナウイルス感染症に対応した学校再開ガイドライン」などで必要な感染症対策を確認して実行しましょう。
しかしどんなに気を付けていても意図せず感染症に罹患してしまうこともあります。熱がある、体調が優れないといった場合は無理をせず、先方に正直に状況を伝えることが重要です。
教育実習には入念な準備が不可欠です。しかし、これほど多くの確認事項や準備があると思うと教育実習がとても高いハードルのように感じる人も多いでしょう。
初めから完璧な授業ができる人は非常に稀です。また、たとえ担当の教員から高評価を得たとしても、生徒からの評価は異なる場合もあります。最終的に教育実習を成功させるために必要なものは、教育に対する熱意や理念です。教員になる夢を叶えるためにも具体的なイメージを持ちながら準備を進め、教育実習に臨みましょう。
教員人材センター編集部
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