音楽の先生になるには音楽家としての表現力も大切ですが、それ以上に生徒への指導力が求められます。本記事では、音楽の先生になるための流れや向いている人の特徴、教員になってからの仕事内容まで詳しく解説します。
音楽を教える仕事に興味を持っている人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
中学校や高校で音楽を教えるためには、教員免許が必要です。正式名称は「教育職員免許状」と言います。教員免許には、大きく以下の3種類があります。
もっとも一般的な免許は普通免許状です。特別免許状は試験の難易度が高い傾向にあり、有効範囲も授与を受けた都道府県内の学校のみとなります。臨時免許状は教員の欠員などが発生した場合、例外的に授与される免許で有効期限は3年です。
ここでは普通免許状について解説します。普通免許状には、一種免許状、二種免許状、専修免許状の3種類があります。
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一種免許状は、学士の学位を有する人が取得できる教員免許です。学士の学位は大学などで定められた教育課程を修了し、卒業することで授与されます。現在中学校や高校の教壇に立つ教員の多くは、この一種免許状を保有しています。
二種免許状は、短期大学士の学位を有する人が取得できる教員免許です。短期大学士の学位は短期大学などで定められた教育課程を修了し、卒業することで授与されます。
二種免許状保有者は、中学校をはじめ幼稚園、小学校で教員として働くことが可能です。ただし、高校の教員免許には二種免許状の区分がないため、一種免許または専修免許が必要となります。
専修免許状は、修士の学位を有する人が取得できる教員免許です。修士の学位は大学院の博士前期課程(修士課程)を修めることで授与されます。現職の教員がステップアップのために取得するケースもあります。
音楽の先生になるには、教員免許を取得し教員採用試験に合格する必要があります。以下では、教員になるための詳しい流れを解説します。
音楽の先生になるには、教員免許が必須となるため、教職課程が設置されている大学に進学すると取得しやすくなるでしょう。中学校や高校の一種免許状を取得する場合は、教科及び教職に関する科目と教育職員免許法施行規則第66条の定める科目に合わせて、67単位以上の習得が一般的です。また、教育実習や7日間以上の介護等体験など、大学外での活動も必要です。
教員免許は教育学部でなくとも取得可能です。音楽の教員を目指している人は、教職課程が設置されている大学の音楽学部でも免許を手にすることができます。ただし、教員免許取得が卒業要件に含まれる教育学部とは違い、音楽学部での免許取得は任意となるため、取得単位数が増える傾向にあります。
中学校の音楽は3年間の必修科目です。学習指導要領でも歌唱や演奏などの実技を重視しているため、技術や知識とともに指導力が求められるでしょう。音楽大学でも教育系大学の音楽学科でも取得できる免許状に差はありませんが、中学の教員は教育系大学の出身者が多い傾向にあります。
音楽家としてよりも教育者として生徒と音楽を楽しみたい人は、中学校の音楽の先生に向いているかもしれません。
高校の音楽は選択必修科目です。学習指導要領でも音楽史や音楽理論といった講義の割合が増加します。専門性が高くなるため、音楽大学出身者は高校の教員を目指す人が多い傾向にあります。
もちろん歌唱や演奏などの実技指導もあるため、教育者としての技術も必要です。ただし、中学校と比べて教員一人あたりの授業コマ数は少なく、自身のスキル向上のために時間を確保しやすいでしょう。よって、教員として働きながらも、音楽家として技術と知識を磨きたい人は、高校の音楽の先生に向いているかもしれません。
中学校も高校も教員免許を取得することは難しくありません。法令で定められた必要単位数を修得して卒業し、各都道府県の教育委員会に授与申請を行うことで取得できます。
音楽教員の場合、音楽の専門知識や技術に関する講義はもちろん、児童心理学やコミュニケーション学など教育に関する講義を選択することで、実務に生かすことができるでしょう。
教員免許を取得した人すべてが教員になれるわけではありません。音楽の先生として働くには、自治体が実施する教員採用試験を受けて合格する必要があります。音楽の教員は公立、私立ともに採用数が極めて少なく、毎年競争率も高いことが特徴です。
そのため、非常勤講師として働く可能性も視野に入れておくとよいでしょう。非常勤講師として現場経験を積むことで、教員採用試験の対策も行いやすくなるはずです。また、実技試験も課されるため、日頃から練習しておきましょう。
音楽の先生に向いている人はどのような人なのでしょうか。ここでは、主に2つの特徴を解説します。
音楽が好きで音楽の楽しさを人に伝えたいと思える人は音楽の先生に向いています。教員を目指す人の中には、音楽家としての華やかな実績を持つ人もいますが、教育者としての自覚を持って働くことが大切です。
特に必修科目である中学校では、音楽が苦手な生徒を受け持つこともあるでしょう。そういう生徒に対しても、しっかりと向き合って育てる力が必要です。
音楽の先生の仕事は授業だけではありません。合唱コンクールや行事での器楽指導など、幅広い指導が求められます。また、声楽出身者であっても、ピアノをはじめとする楽器の演奏技術は必須です。
よって、できないことを積極的に学ぶ姿勢や、もっと上手に指導したいという向上心がある人は、音楽の先生に向いていると言えるでしょう。
音楽が好きで向上心が高い人は音楽の先生に向いていると言えますが、実際に教員として生徒を指導するために、求められるスキルもあります。ここでは、音楽の指導や生徒への向き合い方について、求められるスキルを紹介します。
音楽の先生として、生徒に指導できるレベルの技術は必須です。特にピアノの演奏は教員としての大きな指標となります。実際には、ピアノ演奏が苦手な音楽の先生は少なくありません。
しかし、最低限のピアノ演奏ができなければ授業にも支障が出るため、生徒に的確な指導はできないでしょう。
大学での専門知識を生かすことも大切ですが、生徒に音楽の基礎を伝えるためには、バランスの取れたスキルを身に付けていることが求められます。
コミュニケーション能力は、すべての指導者に求められるスキルです。一方的な授業を行うのではなく、コミュニケーションをとりながら進めていくことが重要です。特に合唱や演奏では、生徒一人ひとりの状況を把握し、向き合いながら導いていくことが必要となります。
教員の心構えとして、すべての生徒に対して平等に接することを忘れてはいけません。ひいきしていると思われてしまうと、多くの生徒をまとめることは難しくなります。
平等に褒め、平等に指導することを心がけてください。
音楽の先生の仕事は多岐にわたりますが、ここでは主な内容について解説します。
クラス担任を受け持つ場合は、教科指導に加えて以下の業務が発生します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ホームルームは基本的に毎日行われます。学校によっては、「朝の会」「帰りの会」といった名称で呼ばれています。出欠の確認や教員からの連絡事項の伝達、日直による挨拶など、事務的な位置づけも大きいですが、クラス運営には欠かせない業務です。
受験を控える最終学年だけでなく、どの学年を受け持っても定期的な進路相談・進路指導を行う必要があります。生徒の希望や現状の悩みを聞き出す力、一人一人の考え方を認めて寄り添う気持ちが大切です。
文化祭や運動会といった大きな行事から、読書週間やボランティア募集といったピンポイントな行事まで、幅広い活動の準備に携わります。
教科担当業務として、担当クラスの音楽の授業を受け持ちます。音楽教員としてのメイン業務といえるでしょう。
入学式などの式典や保護者会といった校務の仕事もあります。特に担当コマ数の少ない高校の音楽教員は、校務業務を任されやすい傾向にあります。
吹奏楽部、合唱部などの部活動指導も音楽教員の重要な業務です。複数の部活動指導を担当するケースもあります。
ここでは、音楽の先生を目指す人が日ごろから意識して行っておくとよいことを紹介します。
狭き門である採用試験を突破するためには、ピアノ演奏と歌唱力は欠かせません。音楽の先生として働くためには、ピアノ演奏と歌唱力を重点的に磨いておくとよいでしょう。
生徒に指導することを想定し、どのように伝えたらわかりやすいかという点も意識しながら行うと将来役立てられます。
演奏は一人でもできますが、音楽の授業は一人ではできません。専門性を高めることも重要ですが、幅広い音楽に触れることも大切です。
コンサートや音楽の催し物に積極的に足を運び、音楽の引き出しを増やしておくとよいでしょう。
子どもと関わる機会を作ることで、教員としてのスタートをスムーズに切るができます。ピアノを弾きながら歌ったり、生徒へ声掛けをしたりすることは、簡単に見えて意外と大変です。子どもと接することに慣れておくとよいでしょう。
音楽の先生は採用人数が少なく狭き門です。先生個人の音楽家としての表現力も大切な一方で、生徒への指導力も求められるため苦労することもあるでしょう。しかし、その分やりがいのある魅力的な仕事です。
音楽が嫌いと言っていた生徒が楽しそうに歌っている姿を目にしたとき、コンクールに向けてクラスが団結して練習しているときなど、大きな達成感を抱くシーンもたくさんあります。
授業を通して音楽の楽しさを生徒に伝えられる音楽教員を目指してください。
教員人材センター編集部
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