
教員採用試験における重要な要素の一つが「志望動機」です。この記事では、よく見られる失敗例をもとに、志望動機をどのように改善していくべきかという視点から、3つの重要なポイントを解説します。
1. 志望動機で考えるべき3つのポイント
志望動機を作成する際には、以下の3つの視点を考慮することが重要です。
- 教員として目指すべきことは何か(教員像)
- 教科を通してどのような力を育みたいのか(教科指導の目的)
- なぜこの学校で教員として働きたいのか(学校への志望理由)
2. 教員として目指すべきことは何か
よく見られる例として、「これまでお世話になった先生に憧れて教員になりたい」という志望動機があります。例えば、「中学や高校時代に進路に迷っている時に、先生が自分の話を真剣に聞いてくれて寄り添ってくれた」「勉強が分からなくて困っている時に惜しまずに個別指導してくれた先生のおかげで、嫌いだった教科が好きになった」といった経験に基づいた動機です。
これらの経験は教員を目指すきっかけとしては素晴らしいものですが、採用担当者が知りたいのは「あなた自身がどのような教員になりたいのか」という点です。憧れの先生の姿は、あくまで目標地点として捉え、そこから自身がどのような教員を目指すのかを具体的に描く必要があります。
例えば、「進路指導で生徒の悩みに寄り添い、生徒が本当にやりたいことを後押しできる教員になりたい」という目標を掲げ、その理由や背景にある経験を述べることで、志望動機はより明確になります。憧れの先生の姿を、教員を目指すスタート地点ではなく、目指すべき目標として捉えることで、自身のビジョンを描きやすくなるでしょう。
3. 教科を通してどのような力を育みたいのか
「教科の面白さを伝えたい」という志望動機もよく見られます。例えば、「高校や大学でずっと日本史を学んできたので、日本史の面白さを子どもたちに伝えたい」「物理の世界がすごく面白いからこの物理の世界観を生徒にも伝えたい」「保健体育で小さな頃から運動が好きだったので、運動の楽しさや喜びを子どもたちに伝えたい」といった動機です。
これらの例は、自身の経験や学びの成果を生かして、質の高い授業を展開できるだろうという意欲を示しているように見えます。しかし、この志望動機には、その教科を学ぶことで生徒にどのような良さがあるのか、その教科を通してどのような生徒を育てていきたいのかという視点が欠けています。
「日本史が好きで日本史を教えたい」というだけでは、「子どもたちには日本史を学んでどうなってもらいたいのか」という教育意図が伝わりにくく、教員の自己満足に映る場合もあります。また、物理が苦手な生徒や運動が苦手な生徒への配慮が不足していると捉えられる可能性もあります。
例えば、「日本史を教えることによって、これまでの社会の成り立ちが分かり、これからの社会を形成していくための視座を身につけてほしい」「物理の法則を教えることによって、物事を論理的に考える力を身につけさせたい」「運動が苦手な生徒でも運動習慣を通じて健康の大切さを実感してほしい」というように、生徒に与えられる価値や教育的な視点から志望動機を見直してみると、より説得力のある内容になります。
教員の仕事で最も大切なものの一つは「授業」です。児童・生徒も生活の大半を授業で過ごします。そのため、志望動機で授業や教科指導に触れていない場合、採用選考を通過する可能性は低くなるかもしれません。
4. なぜこの学校で教員として働きたいのか
自身の教育観をしっかりと記述している一方で、「なぜこの学校で教員になりたいのか」という視点が欠けているケースも、特に私立学校の志望動機で多く見られます。採用担当者は、「なぜうちの学校で教員になろうと思ったのか」という学校への志望動機を重視しています。
例えば、「進路を切り開くような教育をしたい」という志望動機でも、応募する私立学校が大学受験を重視している場合、その学校のニーズとミスマッチが生じる可能性があります(「進路を切り開く」が具体的にどのような意味合いで使用されているかにもよりますが)。
応募する学校の教育理念や建学の精神をしっかりと理解した上で、「私の教育観はこの学校の理念に合致している」といった関連性を伝えることで、より効果的な志望動機になります。
特に私立学校では、男子校・女子校、仏教系・キリスト教系の学校など、さまざまな特色があります。例えば女子校に応募する場合、「女子生徒が男子の目を気にせずのびのびと学べる環境で、アクティブラーニングを行いたい」といった志望動機を述べると良いでしょう。また、キリスト教系の学校であれば、「誰1人分け隔てなく接し、平等に向き合う教育をしたい」といった理解を示すと、好印象を与えます。
5. まとめ
志望動機を作成する際の3つの重要なポイントを解説しました。
- 教員として目指すべきことは何か(教員像)
- 教科を通してどのような力を育みたいのか(教科指導の目的)
- なぜこの学校で教員として働きたいのか(学校への志望理由)
これらの3つの観点から志望動機を整理することで、より明確で説得力のある志望動機を作成できるでしょう。