
この記事では、2023年度(2023年実施)の教員採用試験の応募状況をまとめます。
※2023年7月4日時点の情報 ※未発表の自治体、政令指定都市を除く ※倍率を公表していない自治体は「応募者数/採用予定者数」の値を記載 ※昨年の倍率も同様の基準で記載
1. 全国の校種別平均倍率
全国の校種別平均倍率は以下の通りです。
校種 | 2024年度(今年) | 2023年度(昨年) |
小学校 | 2.4 | 2.5 |
中学校 | 4.1 | 4.1 |
高校 | 6.3 | 6.7 |
合計 | 3.7 | 3.8 |
- おおむね昨年と比べてほぼ横ばいですが、高校はやや下がっています。
- 応募者数では全体的に減少傾向にあります。
- 昨年とほぼ同数か増加したのは11都県のみで、それ以外の府県では減少しています。
2. 全体倍率
全体倍率が高い自治体
倍率を下げている自治体が多いものの、昨年高い倍率だった自治体は引き続き高い傾向にあります。
2024年度 | 2023年度 | |
高知県 | 7.6 | 8.3 |
沖縄県 | 6.4 | 7.2 |
大阪府 | 5.9 | 5.0 |
徳島県 | 5.9 | 6.2 |
奈良県 | 5.6 | 5.3 |
全体倍率が低い自治体
同様に、昨年も低い倍率だった自治体は今年も低い傾向にあります。低い自治体の上位5件のうち、九州が3県含まれています。
2024年度 | 2023年度 | |
佐賀県 | 2.0 | 2.3 |
長崎県 | 2.0 | 2.1 |
山形県 | 2.3 | ー |
鹿児島県 | 2.3 | 2.7 |
富山県 | 2.5 | 2.3 |
山口県 | 2.5 | 2.9 |
3. 小学校の応募倍率
倍率が高い自治体
- 3倍を超えている自治体は7つで、表以外では沖縄県と京都府が含まれます。
- 高知県は相変わらず高いですが、それでも昨年と比べて1.5低下しています。
- 倍率が低い自治体が多い中、大阪、奈良は倍率を上げています。
2024年度 | 2023年度 | |
高知県 | 5.9 | 7.4 |
大阪府 | 5.2 | 3.7 |
奈良県 | 4.7 | 4.4 |
兵庫県 | 4.5 | 5.0 |
鳥取県 | 3.9 | 3.5 |
倍率が低い自治体
- 1倍台の自治体は17あります。
- 九州エリアの自治体が低い傾向にあります(大分は1.6、宮崎は1.5、沖縄は3.6)。
- 山形県は集団討論の廃止や、初任者には担任を持たせないという取り組みをしていますが、今年は倍率に大きな影響を与えていないように見受けられます。
2024年度 | 2023年度 | |
佐賀県 | 1.2 | 1.4 |
長崎県 | 1.2 | 1.3 |
福岡県 | 1.2 | 1.3 |
青森県 | 1.2 | 1.5 |
山形県 | 1.3 | 1.4 |
鹿児島県 | 1.3 | 1.5 |
熊本県 | 1.3 | 1.3 |
4. 中学校の応募倍率
倍率が高い自治体
- 平均はほぼ横ばいの中学校ですが、上位の自治体は倍率を上げています。
- 高知県は10倍を超えています。
- 鳥取県は4.5から8.4と大きく上昇しています。
2024年度 | 2023年度 | |
高知県 | 10.5 | 8.8 |
鳥取県 | 8.4 | 4.5 |
大阪府 | 6.6 | 4.6 |
京都府 | 6.4 | 5.8 |
奈良県 | 6.4 | 5.2 |
倍率が低い自治体
- 九州エリアの自治体が低い傾向にあります(大分は3.4、宮崎は3.4、沖縄は6)。
2024年度 | 2023年度 | |
佐賀県 | 1.7 | 2.0 |
山口県 | 2.1 | 3.0 |
長崎県 | 2.2 | 2.2 |
鹿児島県 | 2.2 | 2.9 |
熊本県 | 2.2 | 2.9 |
5. 高校の応募倍率
倍率が高い自治体
- 小中学校と比べて全体的に倍率が高い傾向にあります。
- 沖縄県は約19倍となっています(沖縄県の教員に占める正規教員率は他県よりも低いことも関係しているかもしれません)。
2024年度 | 2023年度 | |
沖縄県 | 18.9 | 15.5 |
青森県 | 13.5 | 18.0 |
福島県 | 9.6 | 10.1 |
高知県 | 9.2 | 9.0 |
島根県 | 8.6 | 7.5 |
倍率が低い自治体
- 関東の2都県が含まれています(東京は中高共通で倍率を出しており、今年から保健体育は小中高共通枠に移動となったため、1000人以上の応募者が中高共通の応募人数に含まれなくなりました。昨年と同じ計算をすると、約4.6となります)。
2024年度 | 2023年度 | |
福井県 | 3.3(3.28) | 3.2(3.16) |
長崎県 | 3.3 | 4.3 |
新潟県 | 3.4 | 3.1 |
千葉県 | 3.5 | 4.1 |
東京都 | 3.6※ | 4.1 |
6. 昨年との比較
合計の倍率が上がった自治体
昨年より合計の倍率が上がった自治体は少なくとも12あります。
- 鳥取県は試験日程を昨年よりも1~2週間早めた(今年は6/11)ことで、関西の受験日とかぶらなくなり、一次試験では関西でもすべての試験区分の受験が可能になった(今までは高校は鳥取のみ)。
- 大分県は今まで行っていた3次試験を今年から廃止し、3次試験の内容を2次試験に組み込みました(面接Ⅱなど)。
合計の倍率が上がった自治体(続き)
2024年度 | 2023年度 | 差 | |
大分県 | 3.3 | 2.5 | 0.8 |
島根県 | 3.6 | 3.1 | 0.5 |
宮城県 | 3.6 | 3.3 | 0.3 |
奈良県 | 5.6 | 5.3 | 0.3 |
合計の倍率が下がった自治体
昨年より合計の倍率が下がった自治体は、少なくとも28あります。
2024年度 | 2023年度 | 差 | |
岡山県 | 4.1 | 5.0 | -0.9 |
沖縄県 | 6.4 | 7.2 | -0.8 |
高知県 | 7.6 | 8.3 | -0.7 |
千葉県 | 2.9 | 3.5 | -0.6 |
東京都 | 2.7 | 3.3 | -0.6 |
7. 大学3年生の受験状況
今年度は、約4000人の大学3年生が教員採用試験を受験しました。
- 横浜市と川崎市は、大学3年生で内定まで出す制度を設けています。
- 今後の実際の受験者数や合格者数にも注目していきたいところです。
2024年度 | |
千葉県 | 739 |
東京都 | 2858 |
富山県 | 90 |
福井県 | 149 |
横浜市 | 68 |
川崎市 | 39 |
相模原市 | 139 |
8. まとめ
- 全国的な倍率はほぼ変わらず、全体的に厳しい状況が続いています。
- 現状の公立学校の体制を考えると、倍率が下がると臨時任用教員等の数が減るため、教員不足に直結します。
- 現在、産休・育休・病休などの正規教員の代わりは非正規教員が行っているため、代わりの教員がますます見つけにくくなります。
- 昨年から時期や試験内容等を変更した自治体もあります。倍率が上がった自治体もあれば、下がった自治体もあり、変更すれば必ず倍率につながるとは言い切れない部分があります。
- 受験制度の変更だけでは限界があると思われます。
- 来年から教採の時期が全体的に早まることになりますが、教員の仕事に興味がある方が前向きに応募しようと思える施策を打ち出してほしいです。
今回の情報が、教員採用試験を受験される皆さまのお役に立てれば幸いです。今後も最新の情報が入り次第、随時更新してまいります。