
今回は、今年実施(2024年採用)された教員採用試験の倍率を見ていきましょう。
※2024年採用の倍率は基本的に「合格者数÷一次受験者数」で計算しています。
1. 全体倍率
- 今年の平均倍率は約3.2です。
- 関西・四国の倍率は比較的高い傾向にあり、昨年の倍率と比べてもほぼ同じ自治体が多いです。
- 九州の倍率は比較的低い傾向にあります。昨年のワースト5は2倍を切っていませんでしたが、今回は1倍台になっています。特に東京の倍率の低さが際立っています。
<倍率が高い自治体5>
2024年度 | 2023年度 |
自治体 | 倍率 |
高知県 | 5.5 |
奈良県 | 5.3 |
徳島県 | 5 |
沖縄県 | 4.8 |
京都市・大阪府・香川県 | 4.6 |
<倍率が低い自治体5>
2024年度 | 2023年度 |
自治体 | 倍率 |
東京都 | 1.6 |
熊本市 | 1.8 |
佐賀県・長崎県・熊本県 | 1.9 |
2. 小学校の平均倍率は2.2
昨年は2.3だったので、さらに低下しています。3倍を超えている自治体は11自治体です。倍率が高い自治体もやや下がっていますが、その中で奈良県は昨年3.9倍から今年4.5倍と倍率を上げています。
1.5倍を切っている自治体は14(昨年も14)です。ほぼ1倍の自治体が3つあります。東京は志願倍率が1.8くらいありましたが、志願者2,603名に対し受験者1,985名、採用予定者1,440名に対し合格者2,009名という結果になりました。
<小学校倍率が高い自治体5>
2024年度 | 2023年度 |
自治体 | 倍率 |
奈良県 | 4.5 |
京都市 | 3.9 |
兵庫県 | 3.8 |
高知県 | 3.6 |
静岡市・徳島県 | 3.5 |
<小学校倍率が低い自治体5>
2024年度 | 2023年度 |
自治体 | 倍率 |
東京都・青森県・佐賀県 | 1.1 |
山形県・福島県・福岡県・長崎県・熊本市・熊本県・鹿児島県 | 1.2 |
3. 中学校の平均倍率は3.8(昨年:3.8)
倍率が高い自治体は昨年と比べても高いです。高知県は9.6(昨年:5.0)、奈良県は6.0(昨年:4.5)と昨年よりも倍率が高くなっており、特に高知県は約2倍になっています。一方で2倍を切る自治体が出てきました。昨年は佐賀県だけでしたが、今年は4都県あります。
志望者倍率では鳥取県が8.4と高かったものの(採用予定者40名に対し、応募者334名)、実際の受験者が278名だったため、倍率が下がってしまいました。
<中学校倍率が高い自治体5>
2024年度 | 2023年度 |
自治体 | 倍率 |
高知県 | 9.6 |
浜松市 | 6.4 |
仙台市 | 6.2 |
京都市・奈良県 | 6.0 |
栃木県 | 5.5 |
<中学校倍率が低い自治体5>
2024年度 | 2023年度 |
自治体 | 倍率 |
佐賀県 | 1.6 |
東京都・福岡県・熊本県 | 1.8 |
愛媛県 | 1.9 |
4. 高校の平均倍率は5.1(昨年:5.9)
高校は小学校・中学校と比べると倍率が高いですが、低下傾向にあります。6倍を超える自治体は15ありますが、昨年は22ありました。青森県は昨年より大きく倍率を下げましたが、それでも10倍以上です。
倍率が高い大分県は、中学校の志願者373名に対し受験者276名、高校の志願者421名に対し受験者328名と、受験しなかった人が一定数いたため、もっと倍率が上がる可能性がありました。
倍率が低い自治体も同様に低下傾向にあり、4倍を切る自治体は18、昨年は13でした。2倍を切る自治体も出てきました。
<高校倍率が高い自治体5>
2024年度 | 2023年度 |
自治体 | 倍率 |
沖縄県 | 12.7 |
青森県 | 11.0 |
京都市 | 9.4 |
大分県 | 8.4 |
高知県 | 8.2 |
<高校倍率が低い自治体5>
2024年度 | 2023年度 |
自治体 | 倍率 |
福井県・東京都 | 1.8 |
川崎市 | 2.0 |
熊本市 | 2.1 |
横浜市 | 2.3 |
5. 養護教諭の平均倍率は9.7(昨年:9.3)
養護教諭は全体的に倍率が高い傾向が続いており、10倍を超えている自治体が24もあります。自治体により倍率に差が大きいです。
<養護教諭倍率が高い自治体5>
2024年度 |
自治体 |
香川県 |
徳島県 |
福岡市 |
北九州市 |
茨城県 |
<養護教諭倍率が低い自治体5>
2024年度 |
自治体 |
北海道 |
鹿児島県 |
群馬県 |
岩手県 |
千葉県・千葉市 |
6. まとめ
今回の分析から、2024年度の教員採用試験は全体的に倍率が低下傾向にあり、特に小学校ではその傾向が顕著であることが分かりました。これは、文部科学省の発表にもある通り、受験者数の減少と採用者数の増加が要因として考えられます。
また、試験日程の前倒しは、一部自治体では志願者増につながったものの、全体として見ると志願者数の大幅な増加にはつながっていない可能性が示唆されます。これは、教員という職業の魅力や労働環境といった根本的な課題に、日程の前倒しだけでは対応しきれないことを示していると言えるでしょう。
来年度以降の教員採用試験では、以下の点に注目していく必要があると考えられます。