
今年の夏に実施された2025年度採用の教員採用試験の倍率を見ていきます。
※倍率は基本的に「一次受験者数÷合格者数」で計算していますが、一部の自治体は「志願者数÷合格者数」で計算されています。
1. 全体倍率
今年の平均倍率は約3。昨年は約3.2だったため、やや減少しています。
関西・四国の倍率は比較的高い傾向なのは例年と同じです。倍率が高い自治体はあまり変わりませんが、今年はさいたま市が高倍率になりました。
低倍率のエリアは散らばってきています。例年九州エリアは倍率が低かったですが、今年は各地に散らばりました。福井や新潟の倍率の低さは災害の影響も考えられます。福井県は、833名応募で、461名受験と、受験辞退者の割合が高いです。東京の倍率の低さは例年同様です。
<倍率が高い自治体5>
2025年度 | 2024年度 | 2023年度 | |||
自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 |
さいたま市 | 5 | ⾼知県 | 5.5 | 京都市 | 6.4 |
徳島県 沖縄県 | 4.8 | 奈良県 | 5.3 | 沖縄県 | 5.7 |
奈良県 | 4.6 | 徳島県 | 5 | 徳島県 | 5.5 |
京都市 ⿃取県 | 4.2 | 沖縄県 | 4.8 | ⾼知県 | 4.8 |
京都市 ⼤阪府 ⾹川県 | 4.6 | 奈良県 | 4.6 |
<倍率が低い自治体5>
2025年度 | 2024年度 | 2023年度 | |||
自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 |
東京都 新潟県 新潟市 福井県 | 1.7 | 東京都 | 1.6 | 新潟市 ⻑崎県 | 2.0 |
川崎市 ⻑崎県 熊本市 | 1.8 | 熊本市 | 1.8 | ||
佐賀県 ⻑崎県 熊本県 | 1.9 | 北海道 富⼭県 佐賀県 | 2.1 |
2. 小学校の平均倍率は約2
昨年は約2.2だったため、やや減少しています。3倍を超えている自治体は、昨年は11でしたが、今年は7です。なおTOPは2年連続で奈良県です。
また、1.5倍を切っている自治体は22(昨年は14)です。1.5倍未満の自治体のうち九州エリアは8つあります(福岡市、北九州市、沖縄県以外)。
<小学校倍率が高い自治体5>
2025年度 | 2024年度 | 2023年度 | |||
自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 |
奈良県 | 3.8 | 奈良県 | 4.5 | 京都市 | 5.9 |
さいたま市 | 3.6 | 京都市 | 3.9 | 兵庫県 | 4.5 |
静岡市 豊能地区 | 3.4 | 兵庫県 | 3.8 | 奈良県 徳島県 | 3.9 |
⾼知県 | 3.6 | ||||
兵庫県 | 3.2 | 静岡市 徳島県 | 3.5 | ⾼知県 | 3.8 |
<小学校倍率が低い自治体5>
2025年度 | 2024年度 | 2023年度 | |||
自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 |
秋⽥県 千葉県・千葉市 | 1.1 | 東京都 ⻘森県 佐賀県 | 1.1 | 熊本県 ⼤分県 | 1.2 |
福島県 東京都 福井県 佐賀県 熊本市 宮崎県 ⿅児島県 | 1.2 | ⼭形県 福島県 福岡県 ⻑崎県 熊本市 熊本県 ⿅児島県 | 1.2 | ⻑崎県 佐賀県 富⼭県 ⼭形県 ⿅児島県 秋⽥県 | 1.3 |
3. 中学校の平均倍率は約3.5
昨年は約3.8でしたので、微減です。倍率が高い自治体は昨年と比べても高いです。高知県を筆頭に例年高倍率の自治体は上位になっています。全体・小学校・中学校と倍率が高い「さいたま市」は、今年度は採用見込み数を220名と前年度の400名より大幅に抑えたことにより、合格者数も前年度の400名から197名となりました。その影響がこの倍率につながっています。
2倍を切る自治体が増えてきました。佐賀県が連続してワースト1位です。
<中学校倍率が高い自治体5>
2025年 | 2024年度 | 2023年度 | |||
自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 |
⾼知県 | 7.3 | ⾼知県 | 9.6 | 京都市 | 7.3 |
さいたま市 | 7 | 浜松市 | 6.4 | 仙台市 | 6.8 |
浜松市 | 6.1 | 仙台市 | 6.2 | 沖縄県 | 6.7 |
⿃取県 | 5.9 | 京都市 奈良県 | 6.0 | 相模原市 | 5.7 |
京都市 | 5.7 | 栃⽊県 | 5.5 |
<中学校倍率が低い自治体5>
2025年 | 2024年度 | 2023年度 | |||
自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 |
佐賀県 | 1.6 | 佐賀県 | 1.6 | 佐賀県 | 1.9 |
新潟市 愛媛県 | 1.7 | 東京都 福岡県 熊本県 | 1.8 | ⻑崎県 | 2.0 |
福岡県 | 2.1 | ||||
⻑崎県 | 1.8 | 熊本県 | 2.2 | ||
⼭⼝県 福岡県 | 1.9 | 愛媛県 | 1.9 | 新潟市 | 2.4 |
※新潟市は、中高の試験区分が同じため、倍率は参考値です。
4. 高校の平均倍率は約4.7
高校は小中学校と比べると倍率が高い傾向にありますが、昨年平均の5.1から低下しています。 6倍を超える自治体は、2023年度が22、2024年度が15、今回が12となっています。
低い自治体も同様に低下傾向です。 4倍を切る自治体は、2023年度が13、2024年度が18、今回が23と増加しています。
<高校倍率が高い自治体5>
2025年度 | 2024年度 | 2023年度 | |||
自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 |
沖縄県 | 12 | 沖縄県 | 12.7 | ⻘森県 | 16.9 |
⿃取県 | 10.1 | ⻘森県 | 11.0 | 沖縄県 | 12.1 |
福岡市 | 9.1 | 京都市 | 9.4 | 京都市 | 12.0 |
⼭梨県 徳島県 | 7.6 | ⼤分県 | 8.4 | 福島県 | 9.5 |
⾼知県 | 8.2 | 島根県 | 9.2 |
<高校倍率が低い自治体5>
2025年度 | 2024年度 | 2023年度 | |||
自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 | 自治体 | 倍率 |
福井県 | 1.3 | 福井県 東京都 | 1.8 | 新潟市 | 2.4 |
新潟市 | 1.7 | 1.8 | 横浜市 | 2.5 | |
東京都 横浜市 | 2.0 | 川崎市 | 2.0 | 新潟県 | 2.6 |
熊本市 | 2.1 | 富⼭県 | 2.6 | ||
北海道 | 2.1 | 横浜市 | 2.3 | 北海道 | 2.8 |
5. 採用予定者数よりも合格者数が少ない自治体は23
熊本市や新潟県など募集人数不足や定員割れに関するニュースがありました。 採用予定者数と合格者数で比べた時、合格者数が採用予定者以上の自治体は23、未満の自治体も23となっています。
充足率が高い自治体でも、例えば高知県のように併願者が多いため、合格後の辞退で苦労していといったケースもあります。
<充足率が高い自治体5>
自治体 | 合格者数 | 採用予定者 | 充足率 |
⾼知県 | 400 | 254 | 157.5% |
⿃取県 | 321 | 257 | 124.9% |
東京都 | 4999 | 4005 | 124.8% |
新潟市 | 244 | 197 | 123.9% |
茨城県 | 1190 | 965 | 123.3% |
<充足率が低い自治体5>
自治体 | 合格者数 | 採用予定者 | 充足率 |
⼤分県 | 407 | 496 | 82.1% |
熊本市 | 262 | 314 | 83.4% |
新潟県 | 561 | 648 | 86.6% |
さいたま市 | 197 | 220 | 89.5% |
相模原市 | 119 | 129 | 92.2% |
6. まとめ
今回の教員採用試験では、早期化が大きな目玉でしたが、倍率に大きな影響は与えられなかったと言えるでしょう。
現在、教職調整額の変更など、教員の働き方に関する施策が議論されています。これらの施策が今後の倍率等にどのような影響を与えるのか、今後の動向を注視していく必要があります。