
教員の仕事は大変だというイメージが広く浸透していますが、実際に教員がどのような業務に苦労を感じているのでしょうか。本稿では、民間の調査データをもとに、教員の仕事における苦労の実態を、小学校・中学校・高校、そして年代別に分析します。
1. 小学校で最も苦労している仕事:「授業の準備」
小学校教員が最も苦労している仕事は「授業の準備」であることが調査で明らかになりました。中学校や高校と異なり、小学校教員は複数の教科を担当することが多いため、授業準備に多くの時間を費やすことが要因として考えられます。
「授業」「児童・生徒の学習指導」も平均よりも高い数値を示しており、授業とその関連業務全体が小学校教員にとって大きな負担となっていることが分かります。
そもそも小学校の授業時間数は多く、例えば小学5年生の場合、学校教育法施行規則が定める標準授業時数は週29コマ(年間1015時間)です。しかし、実際には週30コマ(年間総授業時数の平均は1059.9時間)で授業が行われているケースが多く、全小学校の4校に1校に当たる25.8%で週31コマを超えている(年間総授業時数は1086時間以上)という調査結果もあります。
※出典:「公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査」2021-2022年~文部科学省 https://www.mext.go.jp/content/20230419-mxt_kyoiku02_000029047_02.pdf
「授業の準備」に次いで、「保護者とのコミュニケーション」「学校行事の準備・運営」が小学校教員の負担となっていることも分かっています。テストの作成・採点、部活動・クラブ活動以外の業務はすべて平均を超えている状況です。
2. 中学校で最も苦労している仕事:「部活動」
中学校教員が最も苦労している仕事は「部活動」です。小学校では存在しなかった部活動が、中学校では教員の大きな負担となっています。
テストの作成や採点も平均を大きく上回っており、教科担任制の導入により教員1人あたりの担当生徒数が増加していることが影響していると考えられます。一方で、教科担任制の影響か、授業関係の業務は平均よりも低い数値となっています。PTA活動は小学校のイメージが強いですが、中学校教員の方が苦労を感じているという結果も出ています。
3. 高校で最も苦労している仕事:「授業の準備」
高校教員が最も苦労している仕事は、小学校と同様に「授業の準備」です。平均(および小中学校)よりも低い数値であるため目立ちにくいものの、「授業の準備」が最も負担を感じている業務であることに変わりはありません。テストの作成・採点、部活動は中学校と同様に高い数値を示しています。小中学校と比べて全体的な数値は低い傾向にあります。
4. 授業や保護者対応に苦労する小学校、テストや部活に苦労する中高
調査結果をまとめると、授業の準備、保護者とのコミュニケーション、学校行事、児童・生徒の生活指導は全体的に高い傾向にあり、特に小学校ではこの4つの業務が中学校や高校よりも高い数値を示しています。一方、中学校や高校ではテストや部活動が負担となっている傾向が見られます。
5. 特に20代は授業で苦労する
年代別に見ると、授業で苦労しているのは20代が突出しています。授業準備も含めると、若い世代が授業関連業務で苦労していることが明確に示されています。経験の浅さが影響していると考えられますが、どの世代でも一定数は授業の準備に苦労していることが分かります。
保護者とのコミュニケーションや学校行事、児童生徒への生活指導は、年代が上がるにつれて数値が低くなる傾向にありますが、どの年代でも苦労を感じている業務と言えるでしょう。
6. まとめ
教員といっても、勤務する学校種別や年代によって苦労する点は異なります。教員不足が深刻な小学校では、教員1人あたりの授業時間数を減らすことが負担軽減に効果的かもしれません(実際に国も授業時間数の削減を検討しています)。中学校や高校では、部活動やテスト関連の負担を減らすことが効果的であると考えられます(こちらも改善に向けた動きがあります)。
学校の働き方改革の動きが着実に実施されれば、教員の負担は軽減されることが期待されます。
出典:「教員の意識に関する調査2023」~ジブラルタ生命
https://www.gib-life.co.jp/st/about/is_pdf/20230712.pdf