教員の処遇改善方針:給特法と「働かせ放題」の現状を解説

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2024.06.05

2024年5月に文部科学省(以下、文科省)から教員の処遇改善などの方針が発表されました。今回は、その処遇改善の方針と文科省の考え方について整理します。
今回取り上げる資料は、「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」です。

1. 教職調整額は4%から10%以上へ

今回の「審議まとめ」で特に話題になっているのは、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)における教職調整額を、現行の4%から10%以上にする方針が示されたこと、そしてそれに対してさまざまな意見が出ていることです。

肯定的な意見としては、文科省が教員の給与という、これまでなかなか踏み込めなかった部分に言及した点が挙げられます。一方で否定的な意見としては、給特法の根本的な考え方は変わらないため、いわゆる「働かせ放題」の仕組みは温存されたままであるという点が指摘されています。

教職調整額の4%は、かつての残業時間8時間分に相当するとされていました。今回の10%への引き上げは、残業時間20時間分に相当することになります。金額に換算すると、月額で1~2万円程度のアップとなります。

2. なぜ「働かせ放題」になったのか

そもそも給特法は、時間外労働を制限するための法律でした。給料月額の4%に相当する額を教職調整額として上乗せ支給する代わりに、時間外勤務手当と休日勤務手当を支給しないことを定めています。

しかし、例外的に時間外勤務を認める業務を制限しており、いわゆる「超勤4項目」と呼ばれる業務は以下の通りです。

  1. 校外実習その他生徒の実習
  2. 修学旅行その他学校の行事
  3. 職員会議
  4. 非常災害の場合、児童または生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合

この考え方が、結果的に教員の「働かせ放題」につながる要因となっています。上記の「超勤4項目」に含まれない業務は、あくまで「教員の自発的行為」と解釈され、労働時間として扱われていないためです。

超勤手当の支払いに関する裁判は過去に何度か行われましたが、この「教員の自発的行為」という解釈が壁となり、訴訟を起こした教員側が敗訴しています。

3. なぜこの考え方は変わらないのか

文科省は、「教員の専門性・自主性・自律性」には、「勤務時間管理」がそぐわないと考えています。つまり、「労働時間に合わせて給与を支払うと、教員の専門性や主体性が失われる」という論理です。

文科省が考える教員の仕事の特殊性は以下の通りです。

  1. 教職の性質は全人格的なものであり、1人1人がそれぞれ異なるとともに、日々変化する目の前の子どもたちへの臨機応変な対応が必要である。
  2. どのような業務をどのようにどの程度まで行うか、教師自身の自発性・裁量性に委ねる部分が大きい。
  3. 教師の職務は、教師の自主的・自律的な判断に基づく業務と、管理職の指揮命令に基づく業務が日常的に混然一体となっており、正確な峻別は極めて困難である。
  4. 授業準備や教材研究等が、どこまでが職務なのか、精緻に切り分けることは困難である。

しかし、国立学校や私立学校は労働基準法に沿った働き方となっています。公立学校も同様に対応すべきではないかという意見に対して、文科省は以下の3点で公立学校と国立・私立学校は異なると説明しています。

  1. 公立教員は公務員であること
  2. 公立学校は、地域の多様な子どもが通学しており、臨機応変に対応する必要性が高いこと
  3. 公立教員は、定期的に人事異動があり、異動するごとに地域・学校に合った指導をする必要がある。指導の準備などをどこまで行うか、教員の裁量によるところが大きい

4. まとめ

教員の仕事はやりがいのある仕事であり、その点は広く認識されているはずです。問題視されているのは、あくまで労働環境です。給特法の考え方が、今後の労働環境改善につながるのかは疑問が残ります。

当初の4%から10%以上という案が出るまでに50年もの歳月が経過しました。仮に10%以上になったとしても、それがゴールとなってしまい、またしばらくの間処遇改善が行われないとなると、それは大きな問題と言えるでしょう。教員の労働環境改善には、給与の見直しだけでなく、業務内容の見直しや人員配置の改善など、多角的な視点からの取り組みが不可欠です。

参考資料:

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