
今回は、2022年7月に廃止が決定した「教員免許更新制度」について、廃止後の免許の扱いを中心に解説します。
1. 教員免許更新制度の概要
教員免許更新制度は、2009年4月に導入された制度です。この制度導入により、教員免許に10年の有効期限が設けられ、更新するためには30時間の講習受講が必要となりました。それ以前は教員免許に有効期限はなかったため、教員現場に大きな影響を与えました。
この制度は、文部科学省によると「その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身につけることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すもの」とされています。つまり、教員の質の向上を目的としたもので、当時から問題視されていた「教員の質」を改善するための施策として、当時の安倍内閣によって進められました。
この制度は現場にさまざまな影響を与えました。まず「更新時期」に関する混乱が起こりました。今まで期限がなかったものにいきなり期限が設けられたため、すでに免許を取得していた方の期限は、取得時期に関係なく生年月日で決められました。そのため、いきなり期限を迎える人や、自分の期限がいつなのか分からないという人が多くいました。
次に、30時間の更新講習の負担も大きな影響を与えました。多忙な教員が、さらに30時間の講習時間を作る必要が生じたのです。
もう1点は、有効な免許所持者の減少です。更新をしなければ教員として現場に立てないため、未更新者が増えると現場に立てる教員が減るという問題も発生しました。
2. 教員免許更新廃止後の免許について
2022年7月の廃止後、免許はどのように扱われるのでしょうか。
(1) 概要
2022年5月13日に文部科学省から公表された情報に基づき説明します。
まず、施行日である2022年7月1日時点で考えます。教員免許の有効期限が2022年7月1日以降の場合は、その免許は更新の必要がない免許となります。
(2) 新免許状の場合
新免許状とは、更新制度が開始された2009年4月以降に授与された教員免許です。有効期間が満了する日が記載されているのが特徴です。
廃止時点で有効期限が2022年7月1日より前、つまり期限切れの場合は、「免許が失効」します。有効な免許にするには、再授与申請手続きを教育委員会で行い、再度免許を授与される必要があります。
(3) 旧免許状の場合
旧免許状とは、2009年3月31日以前に授与された免許です。有効期間が満了する日が記載されていません。
旧免許状の場合は、現職かそうでないかで扱いが異なります。現職の定義は、「免許の有効期限の日に教員として働いていたか」です。
- 現職ではない場合:
- 一度も更新していないケース、一度更新したが現在期限が切れているケースも、手続きの必要なく期限のない免許となります。この状態は「休眠」と表現されます。
- 現職の場合:
- 現職である、つまり免許の有効期限当日に教員として働いている方の場合は、免許は失効します。例えば、埼玉県教育委員会が2022年5月18日に発表した内容によると、「令和4年3月31日が有効期限であったが、2ヵ月前の令和4年1月31日までに更新等手続きを行わず、期限当日の令和4年3月31日に現職教員等であった方(当日に定年退職、任期満了を含む。)は、所有した免許状の効力が戻るわけではありません。」と記載されています。つまり、免許期限が切れる日当日が教員として働いている方が対象となります。
参考:埼玉県教育委員会 https://www.pref.saitama.lg.jp/f2210/kyouin-menkyo-hattentekikaishou.html
3. その他Q&A
- ペーパーティーチャーとは?
- 教員免許を取得したものの、教員として働いたことがない方を指します。
- 再授与申請に必要なものは?
- 詳細は各自治体の教育委員会が決定します。現在、一例として挙げられているものは、
- 申請書
- 学力に関する証明書(学位と単位の取得・修得状況確認)
- 介護等体験証明書(小中学校教員に必要な体験実施状況)
- 戸籍抄本・謄本(原簿に登録するための氏名・本籍地の確認用)
- 宣誓書(免許授与の欠格要件に該当しないことの確認) などです。
- 詳細は各自治体の教育委員会が決定します。現在、一例として挙げられているものは、
4. まとめ
更新制度は廃止されますが、すべての教員免許が自動的に期限のない免許となるわけではありません。まずはお手元の教員免許が、上記で説明したどのケースに当てはまるかを確認することが重要です。ご自身の状況を把握した上で、必要に応じて各自治体の教育委員会にお問い合わせください。