
今回は、2023年に行われた教員採用試験(教採)の主な変更点について解説します。各自治体で注目すべき変更点が多くありました。
1. 大学3年で受験可能に
2023年の教採で特に注目を集めたのは、大学3年生から受験が可能になったことです。東京都がこの制度を導入したのを皮切りに、他の自治体にも広がりました。
2023年3月7日時点では、東京、富山、福井、横浜市、川崎市、相模原市で大学3年次受験が実施されています。また、山梨県も来年以降導入する動きを見せています。
試験の仕組みは各自治体で異なり、一次試験の一部が受験できる場合もあれば、内々定まで出る場合もあります。
横浜市と川崎市では、大学の推薦が必要ですが、内々定まで出る制度となっています。
横浜市や川崎市のように、大学3年生で内定が出て、しかも大学推薦も必要となると、受験生は他の自治体や私立学校に挑戦しにくくなる可能性があります。これは、自治体による教員志望者の囲い込みという側面も持っています。
2. 廃止になった試験
選考の一部が廃止になった自治体もあります。群馬県では小論文が、徳島県では一般教養が廃止されました。
試験科目が減ることで受験生は楽になりますが、一方で、受けやすい自治体とそうでない自治体ができてしまうという側面もあります。例えば、徳島県を受験する予定の人は一般教養の勉強をする必要がなくなるため、他の県を受験することをためらう可能性があります。このような状況が続くと、受験生が特定の県に流れる可能性も出てきます。
3. 併願も可能に
受験生にとってありがたい変更として、いわゆる「併願」が可能になった点が挙げられます。
高知県を例に取ると、中学校を第1希望、小学校を第2希望として受験できます。第1希望で不合格だったとしても、第2希望で合格になる可能性があります。
中学校で不合格だった人が小学校で合格になるなど、教員の質という点で見れば複雑な側面もありますが、これは自治体が教員を確保したいという強い意向の表れと言えるでしょう。
4. 他県の教員を採用
他県の教員を採用しようという動きもあります。沖縄県では他の自治体の教員を対象とした特別選考があります。島根県や愛媛県も同様の選考制度を設けています。
出典:「令和5年度実施沖縄県教員候補者選考試験の主な変更について」https://www.pref.okinawa.jp/edu/jinji/saiyo/koritsu/r04jisshi/r5kyouinsiken.html
教員の年齢構成上、中堅層が不足しがちであるため、ベテラン教員を採用したいという意図は理解できますが、教員を送り出す側の自治体は人材不足に悩むことになります。
5. まとめ
2023年の教採では、各自治体が教員の囲い込みや自治体間での教員の取り合いを行うような動きが目立ってきました。東京受験や大阪受験などを行う自治体もあります。教員を目指す方はもちろん、採用する自治体や私立学校も、今後の教採の動向に注目していく必要があるでしょう。