
私立学校の教員は仕事のどのような点に負担を感じているのか、学校ごとに違いはあるのか。今回は、日本教育メンタルヘルス協会(JEMHA)が実施したストレスチェックの分析結果をもとに、私立学校の先生の働き方の特徴を見ていきます。
※日本教育メンタルヘルス協会(JEMHA)http://www.jemha.or.jp/
1. 私立(教員)の仕事の負担の特徴
他業種も含めた全国の平均と比較すると、私立学校では以下の特徴が見られました。
- 仕事の量と質、身体への負担: 全国平均を下回っている。これは、教員の仕事量や求められる仕事の質が問題視されている現状が、私立学校でも同様の傾向にあることを示しています。また、教員は立ち仕事など体力が必要な仕事であることも表れています。
- 技能の活用や仕事の適性、働きがい: 全国平均を上回っている。これは、教科の知識や授業スキル、生徒指導の経験など、教員として得た能力を発揮しやすい環境であることを示しています。企業では部署異動などがあり、自分のやりたいことや能力を生かせる仕事ができるとは限らない状況と比較すると、教員の職務特性が反映された結果と言えるでしょう。
これらのことから、私立学校の教員は自分が求めている仕事ができる傾向にあるものの、仕事の量や注力すべき仕事が多い傾向にあると言えます。また、職場の人間関係が全国平均より低くなっている点は注目すべき点です。
2. 学校によって状況はさまざま
数値の良い(負担が少ない)学校と数値の悪い(負担が多い)学校には、かなりの差があります。特に職場の人間関係や職場の環境(設備面など)は差が大きい傾向にあります。
民間企業でも人間関係などに良しあしが出やすいのと同様に、私立学校でも同じことが言えるかもしれません。また、学校内の設備(エアコンなどの空調設備やネット環境など)も影響していると考えられます。
学校とひとくくりにされがちですが、各学校で働く環境にはかなりの違いがあることが分かります。また、男子校と女子校を比べると、女子校の方が負担がやや大きい傾向が見られました。
3. 中堅の教員の負担が大きい~世代の差は?
年代別に見ると、負担の大きさに差が見られます。
- 30代の仕事の量や質の負担が大きい。
- 次いで40代の負担が大きい傾向にある。
- 20代は他の年代に比べると負担が小さいと言える。
これは、いわゆる主任などになるのが30代~40代の教員であり、学校の仕事の中核的業務を担うことが多く、他の教員のサポートをすることも多いため、結果的に負担が増えていると考えられます。
4. 昨年と比較して養護の先生の負担が増えている?~職務や校務の差は?
2021年と2022年の各教員の負担を見てみると、負担を感じている部分が2022年の方がやや増えています。特に養護教員の負担が増えている点が注目されます。
校務分掌の中でも「生活指導」の負担が増えていました。総務、教務、進路指導、生活指導、生徒会指導、入試・広報など各種校務分掌がありますが、そのうち生活指導で特に負担を感じている方の割合は、2021年は10.6%でしたが、2022年は18%と他の分掌よりも負担に感じている方の割合が増えています。他の分掌と比較すると、総務は14.8%→17.9%、教務は14.4%→17.3%、進路指導は17.5%→13.5%、入試・広報は9%→9.5%と、生活指導ほど大きな変化は見られません。
センター入試から大学入学共通テストに変わった際は「進路指導」の負担が増え、学習指導要領が改訂した際は「教務」の負担が増えました。今回の生活指導の負担増の理由の一つとして、オンラインから対面授業に変わったことで対応する生徒が増えたことが考えられます。不登校の生徒対応や保護者対応も、前回より対応に苦慮されている結果も出ています。
5. まとめ
今回の分析から、以下の点が明らかになりました。
- 同じ学校というカテゴリーであっても、職場環境はかなり違う。
- 人間関係に差が出ている。
- 世代や校務の内容によっても負担の度合いが異なる。
学校ごとに差があるということは、職場環境を良くする余地があるとも言えます。現場の先生方(特に管理職など)は、職場をより良くするための手がかりとして今回の分析結果を活用していただきたいです。
教員を目指す方は、「学校によって働く環境はさまざまである」ということを念頭に置いて就職活動を進めてください。自分に合った環境を見つけるためには、情報収集をしっかりと行い、複数の学校を比較検討することが重要です。