
今回は、文部科学省が発表した令和6年度概算要求の中から、特に学校現場に関わる部分をピックアップしてご紹介します。
1. 支援スタッフ関係の大幅拡充:188億円(前年比91億円増)
支援スタッフ関連の予算が大幅に拡充されています。
- 教員業務支援員の配置に126億円
- 前年予算55億円から大幅増額です。なお神通にすると、28,100人分です。支援員の主な役割は、学習プリントの準備、来客・電話対応、行事準備の補助など、教員の負担軽減に繋がる業務を担います。
- 副校長・教頭マネジメント支援員の新設に17億円を要求しています。
- 学校で最も多忙とされる副校長・教頭の事務処理のサポートを担います。2,350人分の配置を想定しています。主な役割は、教職員の勤務管理事務支援、施設管理、保護者や外部との連絡調整、学校徴収金等の会計管理など、管理職の負担軽減に貢献します。退職教員、教育委員会勤務経験者、民間企業等での事務経験者など、幅広い人材の活用が想定されています。
2. 教員定数等の整備に1兆5,302億円
教員定数関連の予算も微増しています。
- 小学校高学年の教科担任制の強化
- 令和4年度から4年かけて進める予定だった教科担任制の整備が、1年前倒しで令和6年度に完了する見込みです。これにより、小学校高学年の学級担任の週当たり授業時数は3.5コマ程度の軽減が見込まれます。
- (イ) 35人学級対応
- 35人学級対応は引き続き維持されます。
- (ウ) 主任手当・管理職手当の改善
- 主任手当・管理職手当の改善に各4億円が要求されています。
3. 教師人材の確保強化に22億円要求
教員不足が深刻化する中、人材確保のための予算も確保されています。
- 教員の魅力発信、外部人材の活用支援:5億円
- 教育委員会等が民間企業や大学と行う取り組みに対し支給されます。支給対象は、教師の任命権を持つ都道府県・指定都市教育委員会、人事協議会、公益財団法人などの外郭団体です。
- 大学の地域教員希望枠(地域枠)の拡大・教科:17億円
- 高校生の進路に関係する取り組みです。地域枠とは、大学のある地域の教員を目指す方を対象とした大学入試の枠です。この地域枠の導入費用を支援します。その他、地域の課題に則したカリキュラム作りなども支援対象です。全国の教職課程がある国公私立大学が対象で、少なくとも35大学分の支援を想定しています。
4. GIGAスクール関連予算の拡大
GIGAスクール構想の推進に向けた予算も拡充されています。
- 端末の更新に新規148億円
- 新型コロナの影響で前倒しで整備された1人1台端末の更新が必要となる時期を迎えるため、予算が計上されました。今年度(2023年度)の補正予算案で、各都道府県に総額2,643億円の基金が創設され、端末更新が進められる方針です。
<基金について>
基金とは、政府が特定の目的のために積み立てたお金です。国や地方自治体の予算は「1年ごとに作り、年度内に使い切る」のが原則ですが、基金は年度をまたいで執行できるため、使うタイミングを柔軟に決定できます。
- (イ) 学校内のネットワーク環境分析に新規10億円
- GIGAスクール構想を進める中で浮き彫りになったネットワーク環境の問題に対応するため、アセスメント(診断)に必要な予算が計上されました。
- 先端技術(ARやVR)の活用、生成AIの導入・活用に向けた研究・調査:2億円
5. 部活動の地域移行は段階的に推進
部活動の地域移行の本格的な移行はまだ先になる見込みです。「地域クラブ活動への移行に向けた実証事業(27億円)」「中学校における部活動指導員の配置支援(18億円)」「地域における新たなスポーツ環境の構築等(4億円)」の合計49億円が要求されています。令和5年から7年までは「改革推進期間」として、体制を整える期間となるようです。
6. まとめ
文科省の文教施策としては、教員数を含めた学校に関わる人材の増強と、GIGAスクールの環境整備に力を入れたいと考えていることが分かります。
一方で、財務省は教員数や給与に関しては、業務の効率化をメインとし、数に頼らないようにすべきという認識を示しており、両者の間に認識の差が見られます。
しかし、岸田首相も「教師は学校教育の充実・発展に向けて欠かせない存在である一方、厳しい勤務実態の中にある。環境は大変厳しい。こうした認識の下に、さまざまな取り組みを進めていかなければならない」と述べ、教員の長時間勤務という現状を踏まえ、改善策に取り組むべきとの認識を示しています。
※参考