全国的に低下傾向が続いている教員採用試験の倍率。特に小学校教員の倍率は全国平均で2倍程度となり、人材確保の課題が浮き彫りになっています。今回は2025年に実施された「2026年度採用」の試験結果から、東日本エリア(北海道・東北、関東、甲信越・北陸・東海)の動向をデータを基に振り返ります。
1. 北海道・東北ブロック:都市部への集中と地方の課題
北海道・東北エリアでは、都市部である札幌市や仙台市の動向が注目されます。
| 自治体 | 2026年最終倍率(計) | 2025年最終倍率(計) |
| 北海道 | 2.0 | 2.0 |
| 札幌市 | 3.7 | 3.3 |
| 青森県 | 2.5 | 2.8 |
| 岩手県 | 2.3 | 2.5 |
| 宮城県 | 3.1 | 2.8 |
| 仙台市 | 3.3 | 3.8 |
| 秋田県 | 2.5 | 2.5 |
| 山形県 | 2.2 | 2.3 |
| 福島県 | 2.1 | 2.5 |
北海道
北海道全体では2.0倍と前年度並みでしたが、札幌市は3.3倍から3.7倍へと上昇しました。特に札幌市の中学校は4.8倍と、政令指定都市の中でも比較的高水準を維持しており、都市部への志向が見て取れます 。
東北
青森県、岩手県、福島県などで倍率の低下が見られる一方、宮城県は前年の2.8倍から3.1倍へ上昇しました 。
深刻なのは小学校の倍率です。秋田県(全校種計2.5倍)と山形県(全校種計2.2倍)は全体では横ばい・微減ですが、小学校単独で見ると、秋田県は1.2倍、山形県は1.3倍といずれも1倍台前半に留まっています 。
2. 関東ブロック:首都圏でも小学校教員の確保に苦戦
多くの受験者が集まる関東エリアですが、校種ごとの詳細を見ると厳しい実態が浮かび上がります。
北関東
茨城県が2.4倍と微増した一方、栃木県(2.9倍)、群馬県(2.9倍)は低下傾向にあります。特に栃木県は小学校・中学校ともに倍率を大きく下げました 。
南関東(首都圏)
東京都(2.0倍)や千葉県・千葉市(2.1倍)、神奈川県(3.2倍)など、全体倍率で微増した自治体が見られます 。しかし、小学校に限れば東京都、千葉県・千葉市ともに1.2倍となっており、首都圏であっても小学校教員のなり手不足は深刻です 。
また、さいたま市は前年の5.0倍から4.4倍へ、横浜市や川崎市などの政令指定都市も微減傾向となっており、大都市部でも減少が見られるケースがあります。
| 自治体 | 2026年最終倍率(計) | 2025年最終倍率(計) |
| 茨城県 | 2.4 | 2.3 |
| 栃木県 | 2.9 | 3.7 |
| 群馬県 | 2.9 | 3.1 |
| 埼玉県 | 2.6 | 2.6 |
| さいたま市 | 4.4 | 5.0 |
| 千葉県・千葉市 | 2.1 | 1.9 |
| 東京都 | 1.8 | 1.7 |
| 神奈川県 | 3.2 | 3.0 |
| 横浜市 | 2.0 | 2.1 |
| 川崎市 | 1.8 | 1.8 |
| 相模原市 | 3.0 | 3.2 |
3. 甲信越・北陸・東海ブロック:福井県の躍進と固定化する低倍率
民間企業との競合が激しいこのエリアでは、自治体による取り組みの成果に差が見られました。
甲信越・北陸
特筆すべきは福井県です。2025年度は合計1.7倍と低迷していましたが、2026年度は2.9倍へと大幅に回復しました。小学校(2.1倍)、中学校(3.7倍)ともに上昇しており、採用戦略の見直しが影響した可能性があります。
一方、富山県は1.6倍へと低下し、中学校の倍率低下が目立ちました。
| 自治体 | 2026年最終倍率(計) | 2025年最終倍率(計) |
| 新潟県 | 1.9 | 1.7 |
| 新潟市 | 2.0 | 1.7 |
| 富山県 | 1.6 | 1.9 |
| 石川県 | 2.7 | 2.7 |
| 福井県 | 2.9 | 1.7 |
| 山梨県 | 2.1 | 2.2 |
| 長野県 | 3.4 | 3.8 |
東海
愛知県(3.0倍)は横ばいでしたが、名古屋市は3.5倍と微増し、特に小学校が2.2倍から3.3倍へと大きく伸びました。
静岡県や三重県などは減少傾向にあり、多くの自治体で小学校倍率が2倍台を保っているものの、減少トレンドからの脱却には至っていない所も見受けられます。
| 自治体 | 2026年最終倍率(計) | 2025年最終倍率(計) |
| 岐阜県 | 2.9 | 3.1 |
| 静岡県 | 3.5 | 3.9 |
| 静岡市 | 4.1 | 4.0 |
| 浜松市 | 3.7 | 4.1 |
| 愛知県 | 3.0 | 3.0 |
| 名古屋市 | 3.5 | 3.3 |
| 三重県 | 2.9 | 3.4 |
校種による二極化
地域別の倍率に加え、今回の試験結果で顕著だったのが「校種による二極化」です。
- 小学校: 東日本のほぼ全ての自治体で1倍台〜2倍台前半と、広き門になっています。
- 養護教諭: 依然として高倍率が続いています。例えば富山県で51.0倍、新潟県で29.3倍、宮城県で21.0倍など、非常に狭き門です。
「小学校の低倍率」と「特定職種の高倍率」という二極化が、全体倍率だけでは見えない現状を表しています。
まとめ
2026年度の東日本教員採用試験は、多くの自治体で小学校を中心に低倍率が続く一方、福井県や名古屋市のように回復が見られた地域もありました。
受験者にとっては「教員になるチャンス」が広がっていると言えますが、倍率の低下は採用選考の機能低下や、現場の多忙感の裏返しとも捉えられます。今後は、採用試験の数値だけでなく、その背景にある働き方や処遇のあり方にも注目していく必要がありそうです。


