現在、教員採用のあり方は少しずつ変化しており、特に私立学校では各校が掲げる「独自の教育」を支えるため、選考の基準や評価の視点に新しい動きが見られます。「公立と私立では何が違うのか」「選考ではどこを見られているのか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。今回は、教員人材センターのアンケート結果から、大学生の皆さんが今後の就職活動に役立つポイントを、8つのQ&Aで詳しく解説します。
Q1. 【応募基準】どのような基準で私立学校を選んでいますか?
A1. 「学力レベル」と「勤務地」が二大要素ですが、実は「建学の理念」も約3割が重視しています。
2025年度の進路アンケート(回答者89名)によると、学生の皆さんが最初の志望先を検討する際、まずは現実的な判断基準が上位を占めました。
【応募時に重視した項目ランキング】
- 学力レベルが希望と合っている(38.2%)
- 勤務地が良い(32.6%)
- 建学の理念・方針に共感できる(30.3%)
注目すべきは、入り口の段階ですでに「建学の理念・方針への共感」を重視している志望者が3人に1人存在するという点です。単なる条件だけでなく、私立特有の教育の根幹を意識して応募先を選別している事実は、自身の教育観を大切にする学生の皆さんの誠実な姿勢の表れといえるでしょう。※2
Q2. 【志望度の変化】「教育理念」への関心は、内定後にどう変化しますか?
A2. 選考が進むにつれ「理念への共感」が「条件面」を逆転し、最大の入職理由になります。
私立学校採用における非常に興味深いデータがあります。内定承諾の段階では、当初の「条件重視」から「価値観の合致」へと優先順位が変化します。
【内定承諾時に重視した項目ランキング】
- 建学の理念・方針に共感できる(35.8%) ↑(応募時より上昇)
- 学力レベルが希望と合っている(32.8%) ↓(応募時より下降)
- 教育内容に共感できる(22.4%)
これは、選考過程での面接や校内見学を通じて、情報の断片だった理念が、現場の先生や生徒の姿を通じて「体感」へと変わるためです。「この学校の教育を一緒に創りたい」という感情的な納得感が、最終的に条件面を凌駕する最大の入職決定要因となっています。※2
Q3. 【採用スケジュール】私立学校の募集時期は、どの程度「早期化」していますか?
A3. 6月までに約66%の学校が募集を開始しています。春先からの準備が成功の鍵です。
2025年度採用の調査では、6月までに採用活動を開始した学校が65.9%に達しました。前年度比で見ても、学校側の約41%が「時期を早めた」と回答しており、募集開始は年々前倒しになっています。
特に大学4年生の春先は、公立の選考準備や教育実習と重なり非常に多忙な時期ですが、ピーク時に第一志望群の募集を見逃さないことが大切です。4月時点での自己分析や、履歴書の基礎部分の作成を済ませておくなど、早めの行動が求められます。※1
Q4. 【併願状況】平均して何校くらいの選考を受けていますか?
A4. 3校以上に応募する層が6割を超え、複数を比較検討するのが主流です。
私立学校を志望する大学生の多くは、一つの学校に絞るのではなく、複数の求人を並行して検討しています。
【私立学校の応募校数ランキング】
- 5〜9校(31%)
- 1校(22%)
- 3校(18%)
データが示す通り、全体の6割以上の方が3校以上の選考を受けています。複数の学校を併願することは、不採用のリスクを分散させるだけでなく、実際に足を運んで各校の雰囲気や教育環境を直接比較できるという大きなメリットがあります。
自分の軸に合った数校を厳選し、それぞれの教育理念に基づいた深い対策を行うことが、納得の内定への近道となります。※2
Q5. 【履歴書の対策】書類選考で最も力を入れるべき箇所はどこですか?
A5. 「志望動機」の内容です。昨年度よりも重要度が10%以上も急上昇しています。
以前はスキルや経験が重視されていましたが、現在は「自校のカラーに合うか」を測る動機が、通過の大きな決め手となっています。
【書類選考の決め手ランキング(年齢以外)】
- 志望動機(42.9%) ※前年32.0%から大幅アップ
- 職歴:職務内容(36.3%)
- 職歴:勤務先(30.8%)
新卒である大学生にとっては、実績以上に「なぜ本校なのか」という独自性が問われます。その学校のパンフレットやWebサイトを精読し、自身の大学での学びや教育観が、その学校のどのような点と合致するかを具体的に言語化する作業が不可欠です。※1
Q6. 【模擬授業のポイント】合格点を取るために最も意識すべきことは?
A6. 「授業の組み立て方(構成力)」です。7割以上の学校が「教え方」以上に「設計」を見ています。
教育実習での経験も大切ですが、採用選考における模擬授業の評価ポイントは明確に「構成力」へとシフトしています。
【模擬授業の通過ポイントランキング】
- 授業の組み立て方(70.8%) ※前年48.9%から激増
- 説明の仕方(37.5%)
- 興味を持たせる工夫(31.9%)
ICTの活用や主体的・対話的で深い学びが普及する中、教師には「時間をどうデザインするか」という設計能力が求められています。限られた時間内で「導入・展開・まとめ」が論理的か、学習のねらいが明確か。板書の美しさ以上に、この授業の「設計図」の完成度が通過の分かれ道となります。※1
Q7. 【面接の評価項目】面接で重視される「人柄」とは、具体的に何ですか?
A7. 「円滑なコミュニケーション能力」が41.8%でトップ。協調性が見られています。
面接では、専門知識以上に「同僚としての適性」が問われます。
【面接の通過ポイントランキング】
- 円滑なコミュニケーション(41.8%)
- 真面目さ・誠実さ(37.4%)
- 教科に関する知識(36.3%)
私立学校は教職員同士の連携が非常に密であるため、組織の中で周囲と柔軟に協力し、生徒や保護者と信頼関係を築ける能力が合格の条件となっています。面接では、一方的な自己アピールに終始せず、面接官との「丁寧な対話」を意識することが重要です。※1
Q8. 【入職の決め手】第一志望群ではない学校でも、内定を受諾するケースはありますか?
A8. 内定承諾者の約66%が、当初は「第2志望以下」でした。選考中の「体感」が判断を変えます。
驚きのデータとして、最終的に入職を決めた方のうち、「当初から第1志望群だった」のはわずか34%に留まります。
【入職予定校の当初の志望度】
- 当初は志望していなかった(42%)
- 当初から第1志望群だった(34%)
- 第2志望以下の志望群だった(24%)
これは「ここでなら自分は活躍できそうだ」という感覚が、事前のイメージよりも重要であることを示しています。まずは選考の場で学校の空気に触れ、自分自身の強みがその学校の課題とどうマッチするかを確かめることが、納得のいく進路決定への近道です。※2
教員人材センターからのメッセージ
今回のデータが示す通り、私立学校の採用選考は「条件面」から始まりますが、最終的には「教育理念と人への共感」で決まるという特徴があります。
「自身の志望動機で、教育理念への共感が十分に伝わっているか」「最新の模擬授業トレンドに対応できているか」――もし少しでも不安を感じられたら、ぜひ当センターの個別相談をご活用ください。2024-2025年の最新動向を熟知したアドバイザーが、皆さんのこれまでの歩みと熱意を、私立学校が求める形へ整えるお手伝いをいたします。
みなさんの教員としての第一歩が、実りあるものとなるよう心より応援しております。
【データ出典】
※1 教員人材センター「(私立学校対象)2025 採用に関するアンケート」(2025年4月・回答総数91校)
※2 教員人材センター「(2025卒対象)2025 進路に関するアンケート」(2025年・回答総数89名)


