CBTとは?教育の現場で話題の最新ICT手法について解説!

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監修者

田坂圭吾

教員人材センター キャリアコンサルタント

学校教育

電子化の推進、オンライン授業の増加などの影響を受け、試験などに最新のICT(情報通信技術)を使ったCBTの導入が注目されています。民間の資格検定試験などで採用が進んでいますが、教育の現場においても入学試験などCBTによる試験が多くなっています。

本記事ではCBTの特徴、注目される理由を紹介するとともに、CBT導入によるメリットやデメリットについても説明します。


CBTとは

CBTとは「Computer Based Testing(コンピュータ ベースド テスティング)」の略称で、コンピュータを使った試験方式のことです。

通常はテストセンターという会場に、パソコンを設置して試験が行われます。紙を使った試験からコンピュータによる試験にすることによって、採点や結果通知に要する時間を短縮できるうえ、音声や動画を利用した問題も使えるので、語学検定などで活用されています。

またCBTは、問題を蓄積しておいて組み合わせを変えたり、出題を別問題と入れ替えたり、受験者によって異なる出題をすることにより、不正行為の対策をしやすい点も特徴です。

受験生にとっても台風などで受験できない恐れがあれば、日時や会場の変更が簡単にできるメリットがあります。反面、大規模試験における端末の確保、キーボードなどの端末操作技術の差が成績にも影響するなど、課題も多くあります。


IBTとの違い

CBTと似ているものにIBTがあります。

IBTとはInternet Based Testing(インターネット ベースド テスティング)の略で、CBTと同じくインターネットを利用した試験のことです。CBTと同じくコンピュータを使用しますが、自分のパソコンでインターネットを利用して、いつでも、どこでもテストを受けることができるのが特徴です。

CBTでは受験場所や試験会場などを予約する必要がありますが、IBTでは予約は必要なく、自分のタイミングで日時や場所を選べるというメリットがあります。タブレット端末やスマートフォンでも受験ができる検定試験も増えていて、IBTはCBTより自由度や利便性に優れています。

またCBTは全員が同じ環境で試験を受けるので公平性が高くなりますが、IBTは受験生によって試験環境はまちまちで、公平性は低くなります。厳格性においても、CBTは試験官に監視されているので厳格に試験を行えますが、IBTは本人確認やカンニングの防止などが難しく、厳格性に欠けます。


導入事例

CBTの導入事例が増えています。以下2022年3月現在で、CBTが活用されている事例を紹介します。


ITパスポート試験

ITパスポート試験は、ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべきITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験です。
全国47都道府県で随時実施されており、2011年11月の試験からCBTに移行しています。

※参考:ITパスポート試験|情報処理推進機構


秘書検定

秘書検定とは、秘書に求められる知識・技能について問う試験です。また一般常識や敬語の使い方、電話応対やビジネス文書の作成など、社会人に必要な能力が身についていることを証明できます。
2021年3月1日の試験よりCBTを導入し、現在は47都道府県300か所以上のテストセンターで実施しています。

※参考:秘書検定|公益財団法人 実務技能検定協会


スマートマスター・家電製品アドバイザー・家電製品エンジニア

一般財団法人家電製品協会では、スマートマスター・家電製品アドバイザー・家電製品エンジニアの3つの資格試験を実施しています。最近3年間の平均受験者数は約13,000人で、CBT導入によって、従来の会場数20数会場から約280会場に移行しています。

※参考:認定センター|一般財団法人 家電製品協会


英検(実用英語技能検定)

公益財団法人日本英語検定協会による英検は、紙による試験と並行してCBTによる試験も実施しています。紙の試験では、1次試験と2次試験を別日程で受ける必要がありますが、英検CBTではすべての試験を1日で受験できます。2020年度の受験者数は約368万人です。

※参考:英検(実用英語技能検定)|公益財団法人 日本英語検定協会


CBTの導入が増えている理由とは

CBTの導入が増えている理由について、以下で説明します。


多様な出題が可能になるため

従来の筆記試験は、文章や図表などを使った問題が中心でしたが、スピーキングが必要な語学の試験や動画を使う試験には対応できませんでした。しかしCBTではこうしたことにも対応でき、試験の表現力を高めることができます。このため新しい試験の実施が可能になり、受験者も自分の能力を知るための新たな指標が得られます。

主催者にとっても出題できる問題の幅が広がるため、従来の筆記試験でできなかった新しい試験を創設することが可能です。ホットスポット、ドラッグ&ドロップなどを用いて、知識だけでなく応用力も測定することもできます。

またCAT(Computer Adaptive Test)という技術を利用すれば、受験者の正解・不正解に応じて出題の難易度を変えて、その受験者に最適な問題を出題して、正確に受験者の能力を計測できる適応型試験を行うこともできます。


セキュリティの強化につながるため

紙の筆記試験の場合、試験会場にあらかじめ送付しなければならないので、関係者は内容を事前に知ることができます。また受験後、解答用紙を回収しますが、紛失する可能性もあります。受験時も、受験者はプリントされた同じ試験問題に解答するので、隣の人が解答をカンニングするリスクも否定できません。

このように筆記試験の場合、試験問題の漏洩や盗難、解答用紙の紛失などのリスクが付きまといます。しかしCBTの導入によって、セキュリティは強化されます。CBTでは、問題や解答は人手を介することなくインターネットで暗号化されて送受信されるので、セキュリティ的には安全です。

試験会場でのカンニングに対しても、会場では受験者同士はパーティションで仕切られていて、隣を見ることができないようになっています。また出題される問題は、受験者ごとに順番や組み合わせを変えることができるので、カンニングされたとしても答えが基本的に同一であることはありません。


受験者・出題者の利便性が向上するため

筆記試験では試験日が会場ごとに決められていて、自由に変更できないケースが多いです。このため受験者の都合でその日に受験できなくなった場合や、試験日に台風が来て公共交通機関が動かなくなった場合などには、受験者が受験を断念することもよくあります。

これに対してCBTの場合は、試験日時や会場を受験者が選べるうえ、試験も1年を通して全国各地で行われます。したがって、もし予定日の都合が悪くなれば、容易に変更が可能です。自分の好きなタイミングで、自宅や職場の近くで受験することができるようになります。

主催者側も受験希望者に対して、平等に受験機会を提供できるようになります。また、筆記試験の実施に必要な、試験会場、試験監督官、資材の手配などの業務がなくなるメリットがあります。

また試験が1年を通して各地で実施される場合、同じ問題を出題することはできないので、出題内容を変えていく必要がありますが、CBTでは試験問題を蓄積しておけば、問題の入れ替えや順序の変更などが容易に行えるのがポイントです。主催者側の負担も軽減されるでしょう。


電子化の推進を受けているため

政府は2026年度をめどに、公文書の管理を紙から電子化へ全面移行を進めています。秘匿が必要な試験問題も対象になっていて、試験業界では電子化を進める動きがあり、従来の紙を使う試験形式からコンピュータによる試験方式へ移行する主催者も増加しつつあります。

CBTの導入で採点作業も電子化されるので、受験者は結果を待つ不安もありません。短期間で試験結果が分かるというメリットがあります。

電子化を進める主催者にとっても、CBTは試験の申し込みから結果通知までをすべてインターネットで行えるので、紙を使った試験のような手間はかからず、業務の大幅な改善が可能です。

このように受験生にも主催者にもメリットがあるので、CBTによる試験方式が普及しつつあります。ただしコンピュータに慣れていない受験生の場合、操作に戸惑う可能性があります。この場合は、あらかじめ試験のサンプル動画を渡すなどの工夫が必要です。

主催者側も一斉試験と違い、一定数の問題を準備する必要がありますが、不正のリスクが低く、安定した試験を実施できるメリットは大きいでしょう。


緊急時の対応が取りやすいため

筆記試験では自然災害などの緊急時に試験の延期や中止が行われることがありますが、受験生にとってはその人のキャリアや人生に影響する重要な試験ということもあります。主催者にとっても、緊急時の対応には労力を必要とするので、台風や地震が多い日本では、災害など緊急時に対応できる試験モデルが求められていました。

CBTの場合は試験日の数日前でも、受験者は日時や会場の変更が簡単にできます。台風の接近などの緊急時でも安心です。主催者にとっても、CBTによって災害などによるリスクを軽減できるのは大きなメリットです。

またCBTにより災害対策として随時試験を実施する場合、随時開催に耐えられる試験問題数を準備する必要があります。しかし膨大な問題を蓄積しておけるので出題内容を組み替えたり、問題を修正したりすることができます。少ない問題数でも開催期間を短く設定することによって、対応することも可能です。


試験の流れから見るCBTのメリットとは

試験の流れから、紙ベースの試験とCBTを利用した試験を比較して、その違いを見てみましょう。


問題構築

紙での試験では試験の度に問題を作成し、印刷しなければなりませんが、CBTではCBTシステムに問題を登録しておくと、毎年数多く実施される社員の教育や社内試験などを、手間をかけずに作成できます。


招集・会場準備

紙での試験は決まった時間と場所で一斉に行われるので、受験者に時間が拘束されます。また会場の手配などの準備や運営に手間がかかります。

CBTの場合、47都道府県の主要都市に配置された試験会場を通年で利用可能です。そのため受験者は自宅や職場の近くの会場で都合がいい日時で受験できます。主催者にとっても、会場探しや資材の準備、発送、管理などの作業、試験監督官の手配などは必要ありません。


問題の配布・準備

紙での試験では試験用紙の印刷、保管、輸送など配布までのコストや時間がかかります。CBTの場合は、試験用紙の印刷や輸送などが不要なのでコストや運用面の問題を解消できます。また試験問題は受験者のパソコンに受験直前にダウンロードされるため、問題の保管や管理の手間、紛失のリスクの解消が可能です。


試験説明~答案回収

紙での試験は試験監督官が必要になるので、人件費がかかります。CBTでは試験の説明、時間の計測などがパソコン上で行えるので、試験実施に関する人件費を削減できます。


採点

紙での試験の場合は採点を人が行うので、時間もコストもかかります。CBTの場合、試験終了後に回答はサーバーに転送され、瞬時に採点されるので、運営側は、採点にかかる時間とコストを削減できます。


結果集計

紙の試験では採点結果の集計にも労力が必要になります。CBTでは採点結果の報告、集計もデータで管理できるので、運営側の手間が軽減されます。


受験者の管理

集計結果をもとに手動で受験者の管理を行う必要があります。試験後の運用コストも大きくなります。CBTの場合は、合否の結果など特定の受験者のデータを抽出でき、任意に選別して連絡し、受験させるなどの管理も容易に行えます。


CBTにおけるデメリット・注意点とは

一見すると欠点がないように見えるCBTですが、デメリットや注意点もあります。


パソコン操作が必要

パソコンへの苦手意識がある人には、敬遠されやすいという問題があります。
キーボードやマウス操作に自信がない方は、パソコン操作に慣れてから試験を受けた方がいいでしょう。


問題用紙への書き込みができない

CBTではペーパー試験と違って「問題用紙に書き込む、メモする」ことができません。
そのため、問題にメモ書きや、消去法で「バツ」をつけながら解くといった、解答の補助になるような作業が制限されてしまいます。


CBTは主催者側だけでなく受験者にとってもメリットがある

CBTは現在、多くの資格試験や検定試験、入学試験などに導入されています。その理由は、多様な出題が可能なこと、問題の漏洩などに対するセキュリティが強化できること、政府が進める電子化に対応できること、自然災害などの緊急時に対して対応しやすいこと、などが挙げられています。

CBTは主催者側だけでなく、受験者にとっても、受験日や会場の変更が容易で、筆記試験などに比べて試験結果も早く知ることができるなど、メリットが多い試験方式です。 今後、CBTの導入を検討する主催者が増えることが予想されており、試験のIT化が進むことでしょう。


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