教育業界の現状とは?今起こっている変化や今後の動向を解説

#働き方改革

監修者

田坂圭吾

教員人材センター キャリアコンサルタント

学校教育

近年の教育業界の変化は大きく、メディアでもよく取り上げられています。 小学校でプログラミングや英語の授業が導入されたことが大きな話題となったのは、記憶に新しいことでしょう。


新しい教育が始まったことによって新しい人材の需要が増えた一方で、やはり少子高齢化が叫ばれる中、教育業界の将来性や展望に不安を抱いている方もいらっしゃるはずです。 特に、教員を目指している方、今すでに教員であるという方にとって、近年の教育業界の変化は、まさに自分事。


しかし、教育業界にどういった変化が起きているのか、すべてをしっかりと把握している方はそれほど多くないでしょう。


この記事では、知識として覚えておきたいこの業界の現状や、今起こっている代表的な変化、そして、将来性などを説明していきます。 これから教員を目指そうとしている方も、現在教員であるという方も、ここで一度、業界の事情を整理し、確認してみましょう。


現状や変化を知れば、自分が今後どういった身の振り方をすべきかが見えてくるかもしれません。


教育業界の役割

まず説明するのは教育業界の役割ですが、それは「現代社会で生きていける人物を育むこと」です。


特に義務教育や、高等教育を行う教育機関は、子どもたちの進路や今後のキャリアに大きな影響を与えるでしょう。


文部科学省の「新学習指導要領について」によると、「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む」ということが、教育業界、ひいては学校に求められていると示しています。


文部科学省「新学習指導要領について」

IT化やグローバル化が日夜進む中で、そういった社会の中で活躍できる人材を学校の教育を通じて育むのが、教育業界の役割であり、求められていることと言えるでしょう。


教育業界の現状

先述のようなことが求められている教育業界も、日々目まぐるしく変化していっています。 教員を目指している・教員である身として、最低限知っておくべき教育業界の現状について、以下で詳しく説明します。


学習指導要領の改訂

そもそも学習指導要領とは、全国のどこの学校で教育を受けても一定の水準が保たれるよう、文部科学省が定めた教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準です。 この学習指導要領では、小学校・中学校・高等学校などに分類し、それぞれの教科などの目標や大まかな教育内容を定めています。 各学校では、この学習指導要領を参考に、教育課程(カリキュラム)が編成されているのです。


その学習指導要領が新しくなり、中学校では2021年度から全面実施、高等学校では2022年度から年次進行で実施されることになったのはご存知の方も多いはず。


学習指導要領改訂の理由は、近年のグローバル化、ビッグデータや人工知能の活用による技術革新などと言われており、子どもたちが自ら考え行動する「生きる力」を育むことが、新しい学習指導要領の目標です。


この「生きる力」を構成するのは、「知識および技能の修得」「思考力、判断力、表現力の育成」「学びに向かう力、人間性のかん養」という3つの柱であるとされ、これらを育むための授業や活動が、新しく盛り込まれています。


大学入試制度の変化

大学入試に関しても、大きく変化しようとしています。 まず、これまで各大学の一般入試を控えた受験生たちの第一関門である一方で、二次募集・三次募集などでその得点を利用できる、ある意味で支えとなっていたセンター試験が、2020年の1月を最後に廃止されました。


センター試験に取って代わる新たな入試制度は、「大学入学共通テスト」です。


大学入学共通テストでは、以下のような変化が見られます。

・全教科で「全て答えなさい」という回答形式が導入される

・英語の試験は設問も英語になる

・英語の試験から発音、アクセント、並び替えの問題がなくなる

・英語の試験で筆記、リスニング、それぞれの配点が変更になる

・英語の試験で、配点変更に伴い、試験時間が増加する


これまでより高い英語力、また、受験する全教科に対する、より一層深い知識が求められることになるでしょう。


e-ラーニングやICTの普及

昨今の教育業界では、e-ラーニングなどが急速に普及しています。 e-ラーニングは、好きな時に、自由に講習を受けられるもので、生徒が自分の都合に合わせて学ぶことができるため、教育現場で人気を得ているシステムです。


また、教員の業務効率化のために、教育現場ではICTの活用も徐々に普及。 PCだけではなく、タブレットなどを生徒に配布して、効率的に授業を進めたり、課題に取り組ませたりする動きが、このICTに該当します。


学外学習費の増加

文部科学省の「子供の学習費調査」によると、前回調査の平成28年度に比べ、平成30年度の学校外活動費が増加しています。


学校外活動費とは、家庭内学習のための教材費用や、学習塾・予備校の費用、習い事の費用などのことです。


特に私立学校に通う生徒の学校外活動費が多いのが見受けられます。 ただし、公立学校に通う子どもの場合も、中学校・高等学校の段階では、学校外活動費が増加傾向に。 受験を控えている生徒も多い中学校・高等学校の学校外活動費は、主に学習塾や予備校の費用だと考えられています。


文部科学省「子供の学習費調査」

教育業界の今後の動向

近年、教育ICTの台頭などで、教育業界の市場が少しずつ拡大しています。 今後教育業界で注目すべき事柄について、各々詳しく説明します。


エドテック普及の可能性

エドテックとは、「Education」と「Technology」を掛け合わせた造語です。 先述したe-ラーニングの新しい呼び方、と表現すればわかりやすいかもしれません。 インターネットやデジタルメディアを利用した学習サービスであることには変わりませんが、技術が進歩し、社会で求められるものが変化した現代では、新しい呼び方としてエドテックが使われるようになりました。


エドテックの具体例としては、生徒向けの勉強アプリや、AIを利用した一人ひとりのレベルに合わせた教材提供などです。


また、教員からの課題配布・生徒からの課題提出などをWeb上で行うことも、エドテックを用いれば可能になります。 教員は、生徒の課題進捗などを即時確認することができるのです。


エドテックが注目される理由としては、生徒の学習・理解状況を教員が把握することによって、遅れている生徒をいち早くサポートできることがひとつ。 また、経済的理由などから高等学校に通えない子どもも、エドテックのオンライン講習を受けることによって、高等学校に通っている生徒と同等の教育を受けられる、と考えられていることが挙げられます。


さらに、海外の大学で行われている講義を日本でも受けることができるため、これまでにはない新しい教育サービスの提供も実現しているのです。


教育内容の変化

また、新学習要領の実施、教育ICTなどによって、教育内容にも大きな変化が見られます。


英語教育

英語教育の変化は大きく、2011年には、小学校5年生・6年生で「外国語活動」が必修となりました。 2020年から小学校で始まった新学習指導要領では、この外国語活動の実施を3年生・4年生に引き下げ、5年生・6年生では、「英語」が正式教科となっています。


近年のグローバル化を強く意識したもので、「外国語活動」は、小学生のうちから英語に対する苦手意識を取り除こうという狙いがあるものです。 これはあくまで「活動」なので、通知表などには記載されませんし、教えるのも担任の教員となります。


5年生・6年生では本格的に「教科」として英語が加わり、授業時間は年間でなんと70時間も確保されているのです。 もちろん、通知表への記載もあります。


幼年期から比較的簡単な英語に触れることで、英語力や英語に対する意識などの基礎が作られ、中学校・高等学校での英語学習がよりスムーズになることが期待されているのです。


アクティブラーニング

アクティブラーニングとは、生徒が自分で考え、主体的・対話的に行動し、深く学ぶといった意味を持っています。


これまではいわゆる「一斉授業」と呼ばれ、教員が教壇に立ち、一方的に一人語りをするような授業形式がとられてきました。 この形式では、生徒の主体性を引き出すことは不可能です。


アクティブラーニングには様々な種類が存在しますが、「問題解決型学習(Project Based Learning)」「研究学習」などは取り入れやすい学習法ではないでしょうか。


「問題解決型学習(Project Based Learning)」とは、生徒があるテーマに対して解決策を考え、話し合い、何を調べなければいけないのかを明確にした上で学習する方法です。 そこで新たに得た知識を問題に適用したり、学習したことを要約したりすることも必要になります。 これにより、主体的に取り組み、知識を応用する力を身につける、といったものです。


「研究学習」も「問題解決型学習(Project Based Learning)」と近しいもので、生徒が自ら課題を見つけ、情報収集や情報の整理・分析を行い、生徒独自の最適な答えを導き出すといった取り組みです。


ただ、「研究学習」の情報収集は文献やインターネットからだけではなく、フィールドワークによっても収集します。 このフィールドワークを通して、ボランティアなど、社会に関わる活動に触れる機会が増えるため、研究学習は、地域社会への参画や貢献が目的とされているのです。


プログラミング教育

プログラミング教育の導入も、話題のひとつです。 このプログラミング教育は新学習指導要領で、小学校5年生・6年生から導入されました。


ただし、小学校で行うプログラミング教育は、企業のエンジニアなどが使う難しいプログラミング技術を、そのまま子どもたちに身につけさせることが目的ではありません。 実は、「プログラミング的思考」というものを育むために設けられたものです。


「プログラミング的思考」とは、物事を順序だてて考え、熟考しながら解決していく力、また、現在生活に必要不可欠となったPCなどをはじめとしたコンピュータをより効率的に活用する力を養うことが目的となっています。


教育業界の就職・転職事情

ここ数年で大きく変化している教育業界への就職事情ですが、有利となるのは、やはりいまだに「教育学部卒(卒業見込み)」のようです。


ただし、求人の条件として「教育学部出身であること」という内容を掲げている教育機関はほとんどありませんし、実際、教育学部以外でも、教員免許の取得は可能です。 教育学部ということばかりにとらわれずに、教員免許を取得するために必要なカリキュラムが整えられた大学・大学院などで教員を目指すと良いでしょう。


また、教育業界の転職状況ですが、教育機関で正規の教諭として雇用されている場合は、雇用が安定していることもあり、特に私立学校の教員に関しては、それほど積極的に転職活動が行われない傾向にあります。


公立学校の教員に関しては、正規の教諭でも、例えば残業代が出ないことに不満を感じたり、勤務先を自分の意志で選ぶことが難しい現状に不満を抱いたりして、私立学校への転職を希望している方は多く存在するようです。


ただし、私立学校勤務であったとしても、非正規雇用の非常勤講師などは、よりよい待遇や正規雇用を求めて、転職活動を進んで行うことも少なくありません。


教員の働き方改革も徐々に進められてはいますが、完全に浸透しきるのには、まだまだ時間がかかるでしょう。 教員一人ひとりの事情によるため一概に「転職事情はこうである」とは言えませんが、好待遇な環境を求めていることは、どの教員も同じです。


教育業界の将来性

教育業界最大の課題は、「少子化問題」です。 また、学校外活動費の増加などの事実もあり、教員を目指している方、現在教員をされている方にとっては、業界の将来性に不安や疑問を抱く場合もあるでしょう。


また、約10年スパンで行われる学習指導要領改訂を機に、各家庭では子ども向けの学習サービス(エドテックなど)に関心を抱く可能性もあります。


少子化という大きな問題と併せて学校外活動費の増加などの事実がある業界ですので、期待大とは言い切れませんが、新しい教育環境に特化した人材を学校が求めている、ということは言えるのではないでしょうか。


これまでご紹介してきた新たな教育の数々によって、それらを指導しきれる教員の需要は確実にあるはず。 知識がないのであれば、それこそエドテックなどを利用して、教員自ら学びにいけば良いのです。


教員の需要といった視点で将来性を考えると、完全に安心しきれるものではないかもしれませんが、自分をどんどんアップデートしていくことで、この変化の流れに乗ることができるでしょう。


変化する教育業界の中では、自分自身の進化も必須

新しい教育の開始や、最新テクノロジーの導入などが急速に進む中で、「自分はこの変化に追いつけている」と、自信を持てる方は多くはないかもしれません。 しかし、教員をめざしている、もしくは現役で教員である、という方は、業界の変化をマイナスに捉える必要はありません。


むしろ、自分自身を成長させる良い機会だと思えば、肩の荷がおりるはずです。 実際、最新の教育を自分のものにするために努力を重ねれば、この業界でいつの時代も需要のある人物となれでしょう。


「教員人材センター」では、エージェントとの一対一の個別面談で、学校勤務に関する様々な相談を承っております。 教育業界を熟知したスタッフですので、お抱えの不安や悩みを解消するお手伝いも、もちろん可能です。


また、1都3県、300校の私立学校との深い繋がりがございますので、就職や転職を希望されているといった方にも、希望に沿った職場をご紹介いたします。 業界に対する不安・悩みや、就職や転職に関するご相談でしたら、ぜひ「教員人材センター」にご相談ください。


びす太(KJC-01)

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