本の要約と紹介 :『教員採用は生徒募集と同じであるZ世代採用のための戦略』

#教員の悩み
教員の採用

この度、石川一郎先生と教員人材センターによる本を出版しました。タイトルは『教員採用は生徒募集と同じである Z世代採用のための戦略』です。本の要約を通じて”いい教員の採用”についてご紹介していきます。


【第1章】ポストコロナで学校は変わる

2019年に中国の武漢で発生、2020年3月以降は日本でも大流行している新型コロナウイルス。このウイルスは、学校現場に大きな打撃・影響を与えました。

また、2020年4月から始まった学習指導要領改訂とともに学校・教員たちは大きく変わらなければいけなくなりました。

今まで行われてきた平成時代の教育を振り返ると、大きく3つに分かれます。とにかく受験に勝てるように、良い企業に就職できるようにということを重視した【知識詰め込み教育】、バブルが弾けた後は「やらせる勉強」から「自ら学ぶ勉強」へと舵を切った【ゆとり教育】、ゆとり教育により子どもたちの学力低下が懸念され開始された【脱ゆとり教育】です。

小学校では20年度から、中学校では21年度から、高校では22年度からスタートする新学習指導要領の3つの柱とは、【実際の社会や会社の中で生きて働く「知識および技能」】、【未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」】、【学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」】です。基本的な考え方は改訂前と変わっていませんが、改定前と決定的に違うのは、「より社会を意識している」という点です。

ただ受験やテストで高得点を取るだけではなく、学校で学んだことが社会に出ても役に立つ、といったことに重きが置かれています。

昨今ではAIやIoTがどんどん普及し、人に取って代わり、AIが仕事をする未来がもう間近に迫っています。この変化に対応するには、学校・教員は、①各教科の本質的理解を通じた 基盤となる資質・能力の育成。②協働学習・学び合いによる課題解決・価値創造。③日本人としての社会性・文化的価値観の醸成という役割をまっとうしなければなりません。

現場の教員たちはどんな状況でしょうか。
「若い先生は生徒に甘すぎる」「何を提案しても、上がOKを出さなければ変えられない」などの声がベテランからも若手からも挙がり、職員室の中で世代によってギャップが生じています。具体的に存在しているのは、50代以上の教員、40代の教員、20~30代の教員といった3つの世代。

3つの世代が、それぞれ自分が齟齬(そご)した時代の学校をベースにしながら教育について考えるため、なかなか価値観が合わないのです。50代のベテラン教員は、高度成長期に学生時代を過ごしています。

みんな、上を目指していたため、高校受験や大学受験が非常に難しかった頃です。あの時代の教員は競争社会で戦わせる力をつける指導に力を入れていたため、いわゆる詰込み教育を行っていました。

一方、40代の教員は50代の教員と同じように、学生時代に一生懸命勉強をしてきましたが、バブル崩壊によって就職氷河期を経験しています。「努力しても報われない」と感じたこともあったでしょう。学校でも採用枠が減ったため、どこの学校でも40代の教員は少なめです。

その後に登場するのが、いわゆる「若手」の20~30代の教員。「若手」一括りにしてしまいがちですが、バブルを知らない世代、ゆとり教育を受けてきた世代、デジタルネイティブ世代と、幅広く存在します。

ベテランの教員が努力や達成感を好む一方で、若手教員は自己肯定感や居場所といった言葉を好むように感じます。

このように、職員室にも3世代の教員が集まっているため、なかなか意見がまとまりにくいのです。しかし、今後の教育を支えていくのは、間違いなく若手教員。
ここで重要になるのが、「学校はどんな人を採用するのか」です。


【第2章】変化に対応できる学校になるために

とある学校の話です。
コロナ渦の混乱の中、立ち上がったのは、普段からYouTubeなどを視聴している20~30代の若手教員。動画を撮るのも撮られるのも慣れており、また、自分たちが学生の頃は予備校などで映像授業を受けていたという教員も少なくなく、動画授業に抵抗がありませんでした。

そこでこの若手教員たちが、「生徒たちが登校できないのであれば、動画授業に切り替えよう」と提案するのです。

ただし、若手教員はウェブ環境には慣れていても、授業の進め方はベテラン教員には適いません。逆に、ベテラン教員は授業はうまくても、ICTには不慣れであることが多いです。

ここで、互いの強みを生かし、動画での授業の組み立て方を互いに学んでいきました。

普段なら何か新しいことを始めようとすると反対意見や現状維持を望む人がいて、なかなか現状を変えることができません。しかし、今回はとにかく前に進んでいかなければいけない状況。新型コロナウイルスに対応するため、学校に大きな変化が起こりました。

これまで「みんな同じ」がよしとされていた学校現場ですが、多様性を認め合い、新しいアイデアを生み出すことの重要性に気づかされた教員も多いでしょう。

これから求められる教員とは「授業がわかりやすく、進度も適切である」「生徒指導の力がある」「保護者対応が上手」「学年主任として教員をまとめる力がある」などはもちろん、

「アクティブ・ラーニングと言われる双方向型の学び」
「ICTリテラシーを使いこなした学び」
「多種多様な教員集団を上下関係でなくつなげていく」
「カリキュラム全般を編成する」

といった観点を持った教員でしょう。

20~30代の若手教員は、物心ついた頃には携帯電話も普及しており、パソコンやインターネットも普通に使う社会で育ってきました。また、彼らが受けてきた教育は、いわゆる「ゆとり教育」。

さまざまな批判があった教育ですが、総合学習の導入や調べ学習、プレゼンなどが授業に取り入れられ、大学の教員養成課程でも、双方向的な学びの実践方法や研究学習に関しても学びました。

教員の教育観は、自分が受けてきた教育がベースになります。2000年以降のAIの急速な進化やグローバル化において、若者たちのマインドは今後ますます重要性を増すでしょう。

若手の中でも、特に今後教員採用に該当していく世代は、Z世代と呼ばれています。

いい人を採用するためには、いい人の定義を明確にしておかなければいけません。コミュニケーション能力がある、生徒のモチベーションを上げてくれる、など、なんとなくのイメージはあるでしょう。しかし、このなんとなくのイメージは採用にブレを生じさせます。

自校の教育理念を今一度確認し、いい人とはどんな人なのかを改めて考え、言語化してみれば、自校での「いい人」が明らかになります。

採用には、これまでよりもさらに戦略性が求められるでしょう。今いる教員が辞めたり、産休に入ったりして、その補填を採用するだけでは、プラスマイナス0です。

時間とお金をかけて採用をするのですから、プラスαの採用が必要になります。

例えば、新型コロナウイルスによりICTの重要性が高まった今、その分野に強い人材を採用すること。他には、大学進学実績を伸ばしたいから、国公立大学の受験指導に強い進学指導の主任を経験したことがある人材を採用することなど、今、学校に足りないマンパワーを強化するという考えで採用していくことが重要です。

こうした採用を実現するためには、再三になりますが、自校にとっての「いい人」とはどういった人材なのか、自校は何を目指しているのかなどのビジョンを明確にする必要があります。


【第3章】現在の採用を振り返る

ここで、現在の学校の採用を振り返ってみましょう。

学生は教員になりたいと考えた時、公立学校に就職するか、私立学校に就職するか、民間企業に就職するかを考えます。教員志望者が真っ先に考えるのが、公立の教員採用試験です。

公立学校の教員採用試験は、約一年がかりで挑む必要があります。毎年2~4月頃に各自治体から募集要項の発表があり、願書の提出期間はおおむね3月下旬~5月中旬までです。

一次試験が行われるのは6月下旬~7月上旬にかけて。その合否が出るのは、首都圏の1都3県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)は7月末あたりです。そのタイミングは自治体により異なりますが、8月上旬までには結果が出ます。

その時期になれば、民間企業の就活であればすでに内定が出ている時期です。

夏にようやく一次試験に合格すると8月中旬から9月上旬にかけて二次試験が行われます。結果発表は10~11月。

ここで合格すると「採用者登録名簿」に記載されますが、この時点ではまだ採用ではありません。12月くらいになって、それぞれの自治体で人事が改変された後に、名簿に記載されている人の中から配属先が決まっていきます。これが行われるのが、翌年の1月末~2月頃といった具合です。

さらに、教員採用試験に挑戦する人は、大学4年生だけではありません。前年に不合格だった人や、民間企業からの転職者も試験に挑むため、倍率が高くなる傾向があります。

一方で民間企業の採用は、4月半ば頃~6月頃で、6月頃までに内定や内々定を出す場合が6割だとか。選考期間が短く、3割を超える民間企業が最初の面接から9日以内に内定を出していることがわかっています。

また、大学2年、3年の時点でインターンシップを行い、早くから学生が働く事の理解を深める環境ができているのです。

さて、ここで気になるのが、私立学校の採用です。私立学校も民間企業と同じく、各学校で募集を行います。

来年度専任教諭の募集は、早い学校であれば3月末に出します。ピークは10月頃ですが、この頃は公立学校の教員採用二次試験の結果が出る時期です。そのため、二次試験で不合格だった人が私立学校に目を向けることになります。

こういった背景から、私立学校の採用は、公立教員採用試験の滑り止めのようなイメージを持っている学生も存在するようです。

募集については、もちろん学校のホームページにも掲載しますが、あまり有名ではない学校は、学生が検索する余地がありません。そのため、「日本私学教育研究所」のホームページへの掲載や、人材会社の利用なども見られます。

特に、採用の手間が軽減でき、かつ希望に沿った人材を採用するために、人材会社を利用する私立学校が増えてきているのです。

選考は、書類選考、筆記試験、模擬授業、面接といった流れで行われます。書類選考の時点で小論文を課す学校もあり、「今、教員に求められていることは何か」「あなたの研究を教育にどう反映させるか」といったようなテーマが多く用いられます。

小論文の内容によって、応募者の考えと学校の方針が合うかどうかを見るのです。筆記試験に関しては、大学入試レベル(センター試験レベル)の問題を出す学校が多く、次に待っている模擬授業では、15分程度、実際の教室を使って面接官に向かって授業を行います。

模擬授業を終えたら、最後に待っているのが面接です。面接は教科主任や校長、副校長と面接を行います。

私立学校では各選考に進むまでに2~3週間ほどかかることが多いようで、応募締め切りから内定まで2~3ヶ月ほどかかることが一般的です。教員が退職した場合などに、そのタイミングで補填として募集を行うため、多くの私立学校の採用は、教員を目指す人の目線に立ったものではないかもしれません。
だとすると、私立学校は「いい人」を採用できているでしょうか。

一般的な採用シーズンは決まっていますが、例えば先ほどの例のように、産休に入った先生が退職することになったから、代わりの教員を募集しよう、といったように、採用スケジュールも曖昧で、学校の中身や採用について、志望者に説明する機会もありません。

こうした状況で、はたして採用したいと思える人材と、自校で働きたいという志望者とが、マッチングするでしょうか。現在の採用がその場しのぎの対応ではなく、学校が求める人材を採用できるものとなっているかを見直す必要があります。

教育方針を明確にせずして、いい人材は獲得できません。志望者には、採用段階でリアルな学校を見せる必要があります。

受験生向けの説明会のように、教員志望者向けにも説明会を設けるといったことも有効でしょう。そうした場を設ければ、教員志望者は受験生と同じように学校側と質疑応答ができます。
事前に学校の内情を知っておけば、入職後のギャップを防げるはずです。

これまで学校がそういった採用を行ってこなかったのは、自分たちがずっと「選ぶ側」だったからです。しかし、近年は教員不足が問題となっています。

これからは組織のボリューム層だった50代がどんどん退職していく上、若い世代の人口は減少していくばかりです。これからは、ますます若い世代を奪い合う時代になります。学校側は、本気になって「選ばれる側」にならなければなりません。

学生の就職活動は、近年もっぱら売り手市場。今年は新型コロナウイルスの流行で今後の新卒採用がどうなるかはわかりませんが、経済が回復していけば、ふたたび学生は売り手市場になるでしょう。


【第4章】いまどきの若者の就活

さて、第2章で少し触れた「Z世代」ですが、これはどの世代を指すのかと言うと、これから学校が採用していくことになる学生を合わせた16~25歳のゾーンを指しています。

この世代の特徴として、一番は「ソーシャルネイティブである」というところです。生まれた時から携帯やインターネットがあり、小学校で情報リテラシーを学び、中高生ではスマートフォンやiPadを使いこなし、友人とのやり取りやクラスの連絡はLINEが基本。

ツイッターやインスタグラム、YouTubeなどのSNSを日常的に利用し、共感などを得ます。一方で、今の学校教員のボリューム層である50代の若い頃と言えば、ブランド志向が強く、ものを消費することで幸せを得ていました。ブランドの世界に憧れて、競争してきました。

個人所有に対する憧れが強かった50代と、みんなで共有することが当たり前なZ世代では、価値観が大きく異なるのです。

そんなZ世代は、自分の人生において、「今の職場が絶対だ」とは思っていません。そして、Z世代は自分が成長できるかどうかで職場を選ぶ傾向があります。

昇進などの組織内の評価ではなく、自身の成長など、自分の価値観に合う成功に重きを置いているようです。Z世代は、もちろん、学校という職場でも自分を成長させたいと思っています。

そのため、自分の成長が実感できない、新しいことに挑戦できないと感じると、またたくまに学校を離れていきます。またZ世代の就活の特徴は、これまでの世代よりも、より「自己分析」に時間をかけて就活をしているように感じます。
自分はこんなことをしたい、という叶えたい自分像を固めておくことで、働く原動力にするのです。

ただし、一方で業界研究などの仕事理解が不足しています。そのため、就活中のイメージと入職後のギャップが大きく、リアリティショックを受けやすくなるのです。

学生との接触が多い企業でさえもリアリティショックが起きてしまうのですから、就活の情報が不足している学校は、よりリアリティショックが起きやすいでしょう。

近年、教員の仕事の大変さが新聞やテレビでよく取り上げられています。労働時間が曖昧であったり、少子化が進むにつれて過保護なモンスターペアレントが登場したりなど、教員は教科を教える以外のことに対応する時間が増えました。

こうしたマイナスなイメージを払拭するために、学校側は自分たちの学校について詳しく説明をしていかなければなりません。


【第5章】私立学校の採用で見直すべき点

ここからは、私立学校の採用の見直すべき点を考えていきます。

第一に考えるべきは、「教員採用は、生徒募集と同じ」ということです。少子化が進み、2000年前後から、生徒の受験に対しては、学校説明会や入試説明会、授業体験や部活見学ができるオープンキャンパスなどを開催し、なんとか自分の学校に来てもらうように学校側がアピールを始めました。

こうした動きと同様に、教員採用においても、学校側から志望者に積極的にアピールしていかなければなりません。具体的には、教員志望者向けに、学校説明会の実施や、模擬授業の際に授業のアドバイスを行う学校もあります。

教員採用でも、応募者の気持ちや考えに寄り添った取り組みを行うことが、今後もっと重要になってきます。

また、いい教員を採用する際、どのような雇用形態で採用するかも重要です。雇用形態に応じた求める人物像を整理し、それを応募者に伝えることが大切でしょう。

ある学校では、専任教諭の要件に「難関国公立大学の受験指導ができる」と明示しています。程度はさておき、受験指導ができると考えている人が応募してくるので、選考の負担が減りますし、ミスマッチも減るでしょう。

採用には大きく2つの方法があります。

一つは、学校の求人を公開して、興味を持った人を募りその中から選ぶ「オーディション型」。
もう一つは、人材会社などを利用し、学校の求める人材に直接アプローチする「スカウト型」。

私立学校の採用は、オーディション型が一般的です。この場合、学校の知名度や印象が、応募人数や応募者の傾向に影響を与えます。また、応募多数の場合、選考に時間と労力がかかるでしょう。

一方、スカウト型は学校がイメージしている人に直接アプローチをするやり方です。
教員専門の人材会社であれば、スカウトマンのように学校が求めている人材を探し、学校に紹介を行うことができます。そのため、学校が求める人材と応募する人の能力等がマッチングしやすい特徴があります。私立学校の採用は少人数である点、応募者が多く集まるとは限らない点、学校が求める人材も多岐にわたる点から、スカウト型も積極的に取り入れたほうが良いでしょう。

スカウト型の採用を取り入れるのに欠かせないのが、人材会社です。
学校は求める人材を提示し、人材会社はそれに見合った人材を紹介します。採用が決まれば学校は人材会社に報酬を払うことになりますが、即効性の高さとマッチング度はオーディション型の比ではありません。

人材会社は、教員志望者に対しても求人の内容や応募する学校についてのアドバイスを行います。面談の場を設けることも多く、教員志望者の人柄なども理解しています。

学校と志望者のそれぞれの情報が集まるため、人材会社を利用するとミスマッチは少なくなります。

また、採用で見直せるポイントは多くあります。民間企業のようにインターンシップを設けたり、求人で仕事の情報をよりリアルに伝えたり、学生が就活をしやすいよう、民間企業の採用スケジュールに合わせた採用スケジュールにするなど、やれることは多くあります。

さらに、面接の場は、学校側が志望者を選ぶだけではありません。再三になりますが、学校側は、今、選ばれる立場にあるのです。お互いが一緒に働きたいと思えるかを見極めるのに加えて、面接官も応募者に評価されているという事実を忘れないようにしてください。

採用とは、私立学校の独自性の第一歩。
これまでのやり方に固執せず、柔軟に変化し、いい人材を獲得しましょう。

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教員人材センター編集部

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