
就職活動で多くの方を悩ませる「自己分析」、特に「自分の強みの整理方法」について解説します。
1. 強みはインパクトよりも再現性
「あなたの強みは何ですか?」と聞かれたとき、どのようなことを思い浮かべますか?「積極性がある」「コミュニケーション力がある」「リーダーシップがある」「どんなことにも諦めない」「目標達成力」など、さまざまな言葉とそれに関連する経験が思い浮かぶかと思います。中には、強みと言われてもなかなか思い浮かばないということもあるかもしれません。
ぜひ知っておいてほしいことは、「特徴」と「強み」の違いです。就職活動でよく考える自分の特徴として、「価値観やこだわり」「興味関心」「能力やスキル」の3点を考えることが多いと思います。その特徴の中で「学校で生かせるもの」がいわゆる「強み」です。職場でも発揮できる、再現できる、いわゆる「再現性」があるものということです。
極端な例ですが、100メートルを10秒で走れても、学校現場でそれを生かせるでしょうか?それだけ速く走れること自体はすごいことですが、残念ながら強みにはなりません。
学校に就職しても、「積極性」や「リーダーシップ」が本当に発揮できるでしょうか?おそらく、「積極性」や「リーダーシップ」を発揮した状況と、職場となる学校の状況は異なります。そのため、強みとして言葉よりも、それらがどんな状況でどのように発揮されたかの方が重要です。
例えば、「部活の部長としてリーダーシップを発揮した」という場合、
- そもそも何が評価されて部長になったのか
- 部長として何を考えたのか
- 実際に何をしたのか
この「何」の部分が、学校で生かすイメージができるかどうかが重要です。生かすイメージができないと、インパクトがある言葉だとしても学校で再現ができません。
2. ストーリーよりも思考と行動
強みを整理するときは、まず今までの経験を振り返ります。その時、ストーリーとして振り返るだけでなく、「思考」と「行動」を抽出することを意識してみましょう。
例えば、「部活の部長として部員の練習参加率を高めるよう努めた」という経験があったとします。
その時、実はさまざまな要素があります。
- なぜ参加率を高めようと思ったのか → 目標の設定、現状の分析
- 高めるために何が必要だと考えたか → 現状の分析
- どんな行動をとろうとしたのか → 現状の分析、計画
- その行動は実行できたのか → 実践の工夫
- できた場合 → なぜできたのか → 振り返り
- できなかった場合 → 他の手段として何をしたのか → 代案を考える
- 結果としてどうなったのか
これらの中でさまざまな思考や行動をとっています。これらをどう表現するかは人それぞれです。授業では、目標設定も大切ですし、生徒それぞれの状況を把握することも必要です。自身の考えをどのように実行するかも、人それぞれです。
今回は一つの経験を例にしましたが、他の経験でも共通する思考や行動をとっていることがあると思います。もし他の状況でも実行できるものがあるならば、それが強みとなる可能性が高いです。
また、このように経験を分析していくと、学生の場合はガクチカ(学生時代に力を入れたこと)、転職の場合は成功体験などの具体性が増します。すると、相手にも自分が何に力を発揮してきたのかがより伝わるエピソードになります。
3. 自己分析だけでは不十分
前提として、自分の強みの全てを相手が受け取るわけではありません。応募者が強みとして表現したもののうち、相手が強みだと感じたものを受け取ります。
就職活動の自己分析に限って言うと、自己分析は興味のある業界、応募する学校との接点を整理する作業です。自分の強みを考える際も、強みを生かす先のイメージがないと、「そもそも強みとなるかどうか」がピンとこないと思います。
そもそも自分にどんな特徴があるかという観点で過去の経験を整理することは大切です。一方で、どのような力が発揮されやすいかは業界ごとに異なります。また、学校ごとでも異なります。例えば、「相手に寄り添って考える」という強みは、学校が異なると対象となる生徒の雰囲気も異なりますし、考えた上で何をするかが変わってきます。
何が自分の強みなのかは、いわゆる業界分析も同時に行った方が効率が良いと思います。教員志望であれば、教育業界全体の動向や、私立・公立の違い、各学校の特色などを事前に調べておくことが重要です。
4. 第三者のフィードバックも大切
「強みとは学校で生かせる自分の特徴」です。そのため、他の人から自分がどう見えているかも大切です。これは「ジョハリの窓」という概念で説明できます。
ジョハリの窓は、ジョセフ・ルフトとハリ・インガムが発表した、自己分析の手法の一つです。自分から見た自分と、他人から見た自分を比較することで、自己理解を深められます。
具体的には、友人や家族、先生などに、自分の長所や短所、どのような時に力を発揮していると思うかなどを聞いてみましょう。自分では気づいていなかった強みを発見できるかもしれません。
5. まとめ
自己分析で強みを見つけるためには、以下の3つの方法を意識しましょう。
- 再現性を重視する: インパクトのある言葉だけでなく、具体的な経験に基づき、学校現場でどのように生かせるのかを説明できるようにする。
- 思考と行動を分析する: 経験をストーリーで語るだけでなく、その時の思考や行動を具体的に分析することで、より深い自己理解につなげる。
- 業界・学校分析と並行する: 自分の強みがどのような環境で生かせるのかを考えるために、教育業界や学校についての情報収集も行う。
さらに、第三者のフィードバックを得ることで、自分では気づかない視点から、自分の強みを見つけられます。
これらの方法を実践することで、効果的な自己分析を行い、就職活動でアピールできる「強み」を作り上げられるでしょう。