
今回は、公立学校の教員採用試験(教採)の内容について解説します。教採は、教員を目指す上で避けては通れない重要な試験です。試験の流れ、試験の種類、そして対策のポイントをしっかりと押さえて、合格に向けて準備を進めていきましょう。
1. 教員採用試験の流れ
教員採用試験は、大きく分けて一次試験と二次試験の2段階で実施されます。
- 一次試験: 主に筆記試験が中心となります。
- 二次試験: 主に面接試験や実技試験などが実施されます。
試験の内容は自治体によって異なり、実施される試験の種類も異なります。例えば、東京都の教員採用試験では一般教養試験がありません。近年は、論作文試験の廃止や集団面接の廃止など、試験内容が変更されるケースが多く見られます。受験を希望する自治体の最新の試験情報を必ず確認するようにしましょう。
2. 筆記試験の詳細
筆記試験は、主に「教職教養」「一般教養」「専門教養」「論作文」の4種類があります。ただし、前述の通り、自治体によっては実施されない試験もあります。
(ア) 教職教養
教職教養試験では、「教育法規」「教育時事」「教育原理」「教育史」「教育心理」の5分野から出題されます。地方公務員法から出題されることも多いです。
※参考:令和5年度東京都公立学校教員採用候補者選考(6年度採用)問題・正答・配点(教職教養)https://www.kyoinsaiyopr.metro.tokyo.lg.jp/recruit/exam.html
また、教職教養などでは、それぞれの地域の教育内容を問う問題も出題されることがあります。
(イ) 一般教養
一般教養試験では、「人文科学」「社会科学」「自然科学」の3分野から出題され、主に小中高で学習する5教科(国語・社会・数学・理科・英語)の内容が出題されます。地元の文化などを問われることもあり、例えば京都府では世界遺産やお祭りなどに関する問題が出題されることがあります。
(ウ) 専門教養
専門教養試験では、各教科の専門的な知識が問われる内容が出題されます。中学校や高校の試験では、大学入試レベルに相当する内容が出題されることもあります。筆記試験の中でも難易度が高く、配点も高い傾向にあります。
(エ) 論作文
論作文試験では、実際に学校現場で対応する可能性のある問題がテーマになることが多いです。その他には、理想の教師像や心の教育をどのように行うかなど、自身の教育に対する考え方を記述するテーマが出題されることがあります。
(オ) 適性検査
クレペリン検査などの適性検査を行う自治体もあります。
(カ) 試験内容の違い
自治体によって、特定の分野の出題が多いなど、問題内容に違いがあります。回答形式もマークシート式なのか記述式なのかなど異なるため、必ず過去問を確認するようにしましょう。
3. 面接試験の詳細
面接試験も自治体によって異なり、「個人面接」「集団面接」「集団討論」の3種類があります。
(ア) 面接の種類
- 個人面接: 主に志望動機や自己PR、教員としての考え方などが質問されます。
- 集団面接・集団討論: 学校教育の課題などが話題になることが多いです。
(イ) 面接官
面接官は、教育委員会の人事担当者や指導主事、現職・退職した校長先生などが担当します。自治体によっては、民間企業の人事担当者やPTAの保護者が加わることもあります。人数は2〜4人程度です。
(ウ) 評価基準
面接などの評価基準は各自治体で公開されています。事前に確認しておきましょう。
4. 模擬授業・実技試験の詳細
模擬授業の実施形式も自治体によって異なり、大きく分けて以下の3種類があります。
(ア) 模擬授業の実施形式
- 内容事前提示: 受験者は指定された内容に基づいて学習指導案を作成し、当日それを実施します。全受験者が準備を行うため、試験官の採点は厳しくなる傾向があります。
- 教科のみ事前提示: 受験者は複数の特定教科の模擬授業を行います。小学校なら国語と算数、中高なら専門教科+道徳などです。
- 当日内容提示: 模擬授業の内容がその場で提示されます。略案などが書かれた用紙が渡され、それをもとにわずかな時間で準備しなければなりません。その他にも、当日キーワードのみ提示されるという形式もあります。
※参考:神奈川県 模擬授業テーマhttps://www.pref.kanagawa.jp/docs/y4g/cnt/f7272/20240619/3.html
※参考:大阪府 模擬授業テーマhttps://www.pref.osaka.lg.jp/kyoshokuin/kyosai/r5_3jitesutomondai.html
5. まとめ
教員採用試験は分野が多く、自治体によって出題傾向が異なります。すべての分野を満遍なく勉強できれば理想的ですが、十分な時間を確保するのは難しい場合もあります。そのため、早めに過去問を確認し、出題傾向を把握しておくことが重要です。過去問分析を通して、自身の strengths と weaknesses を把握し、効率的な学習計画を立てるようにしましょう。