教員の働き方改革!文科省の「緊急提言」を解説!!

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2023.10.03

2023年8月末に文部科学省(以下、文科省)から発表された「緊急提言」。これは今後の学校における働き方改革の方向性を示す重要なものです。今回は、この緊急提言の主な内容を分かりやすく解説します。

1. 緊急提言の概要

正式名称は「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策」です。取りまとめた部会からは「『できることを直ちに行う』という考え方のもと、緊急的に取り組むべき施策をまとめた」と発表されており、まさに喫緊の課題への対応策がまとめられています。

この緊急提言では、大きく3つの視点から施策が提示されています。

  1. 学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進
  2. 学校における働き方改革の実効性の向上
  3. 持続可能な勤務環境整備等の支援の充実

2. 学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進

これは「学校・教員の業務の見直しをもっと進めましょう」という内容です。大きく3つの柱があります。

  1. 「学校・教師が担う業務に係る3分類」の徹底
  2. 授業時数や学校行事の負担を減らす
  3. ICTの活用

(1) 「学校・教師が担う業務に係る3分類」の徹底

「学校・教師が担う業務に係る3分類」とは、業務を以下の3つに分類するものです。

業務区分具体例
基本的には学校以外が担うべき業務登下校に関する対応、学校徴収金の徴収・管理
学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務調査・統計等への回答等、部活動
教師の業務だが、負担軽減が可能な業務授業準備、学習評価や成績処理、進路指導

この3分類に基づいた業務の見直しは、地域や学校によって進捗に差があります。そのため、国、都道府県、市町村、学校などが事例の共有を進めることが強調されています。

例えば、調査や統計への回答、学校徴収金の処理などは、以下のような改善策が考えられます。

  • 学校徴収金の例:現金のやり取りから口座振り込みへの変更
  • 複数の学校の事務処理を一括して行う事務センターの設置

また、2023年9月7日には文科省が警察庁に対し、警察に補導されるなどした場合の対応は保護者に責任があることを踏まえて対応するよう依頼しています。

このような内容も含めて、14の「対応策の例」が提言の補足資料としてまとめられています。

出典:3分類に基づく14の取り組みの実効性を確保するための各主体による「対応策の例」
https://www.mext.go.jp/content/20231010-mxt_soseisk02-000030032_6.pdf

(2) 授業時数や学校行事の負担軽減

標準授業時数を大幅に上回る学校が存在するため、授業時数の見直しが必要です。学校教育法が定める標準授業時数は週29コマ(年間1015時間)ですが、週31コマ(年間総授業時数は1086時間以上)の小学校(小学5年生)が1/4(25.8%)存在します。

学校行事の負担を軽減するため、昔から行っているという理由ではなく、教育活動として必要かどうかという視点で行事を見直すことが求められます。また、行事を行う場合も、運動会での開会式の簡素化や全体行進の省略による練習時間の削減、入学式・卒業式における慣例的・形式的な要素の見直しによる式典時間の短縮などが提言されています。東京都教育委員会は2023年9月5日に「学校における働き方改革へのご理解およびご協力のお願い」というメッセージを公開し、学校行事の見直しなどへの理解を求めています。

出典:東京都教育委員会「学校における働き方改革へのご理解およびご協力のお願い」https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/staff/staff_workstyle_reform_school/for_parents_and_local_people.html

(3) ICTの活用

ICTは学びと働き方改革に不可欠なツールです。

クラウドツールを活用した教職員間での情報交換や会議資料のペーパーレス化、民間企業向けクラウドツールの転用による校務処理の負担軽減、スケジュール管理のオンライン化、学校と保護者間の連絡手段の原則デジタル化などが提言されています。

その他のこと例として、指導案作成の効率化、採点ソフトの活用、外国人児童生徒などへの翻訳アプリの活用などが挙げられます。今後は生成AIの活用も進める予定です。

3. 学校における働き方改革の実効性の向上等

これは「働き方改革の施策が実際に効果の出るものにしましょう」という内容です。

  • 地域や保護者、教育委員会などとの連携
  • 教師の健康を考えた制度や対策の検討

(1) 地域や保護者、教育委員会などとの連携協働

教師と保護者、地域住民は、共通の目標である子どもたちの育成を目指し、信頼に基づいた対等な関係を築くことが重要です。過剰な苦情や不当な要求は、学校だけでは解決が難しい場合もあるため、教育委員会や行政の支援が必要です。

(2) 教師の健康と福祉

精神疾患による長期療養者数が増加しているため、メンタルヘルス対策が重要です。休憩時間や勤務間インターバルを確保することも重要です。「勤務間インターバル」制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることです。

4. 持続可能な勤務環境整備等の支援の充実

これは「学校として機能し続ける、教員として働き続ける環境を作りましょう」という内容です。

  • 教員や支援スタッフの人員増
  • 給与の見直し
  • 採用制度の見直し

(1) 教職員定数の改善

小学校高学年の教科担任制の強化など、教職員定数の改善が進められます。令和4年から4年かけて進める予定だったものが1年前倒しされ、令和6年度には整うように変更されました。計算上は小学校高学年の学級担任の週当たり授業時数は3.5コマ程度の軽減が見込まれます。これにより、教師の負担が軽減され、教育の質向上と働き方改革の両面で効果が期待されます。

(2) 支援スタッフの配置充実

教員業務支援員の小中学校への配置拡大、副校長や教頭の在校等時間が長い場合の学校マネジメントの専門的な支援、不登校児童生徒への支援やスポーツ・文化活動の最適化を考慮した支援スタッフの配置などが提言されています。

(3) 教師の処遇改善

職務の負担や職責を踏まえた給与体系の改善が検討されています。給特法などの法制度を含めた具体的な制度設計の検討が進められ、教師の処遇向上が計画されています。特に、主任手当や管理職手当の改善が重要視されています。

(4) 教師のなり手の確保

教育委員会、大学、民間企業などとの連携や協働による教職の魅力発信、人材需要と入職希望者のマッチングの効率化、入職前研修などが進められます。大学と教育委員会による教員養成課程の見直しや地域枠の設定、奨学金の返還支援に係る速やかな検討も進められます。地域枠自体は大分大学や福井大学、横浜国立大学、千葉大学などで導入例があり、埼玉大学も設ける予定です。文科省は予算をつけてこれを他の地域に拡大させたい意向です。

5. まとめ

今回の緊急提言は、学校の働き方改革を進めるにあたって、以下の2点を学校に関わる自治体、地域、保護者に理解を求めている点が重要です。

  1. 学校が今まで対応してきた業務は、今後の学校では対応ができなくなる可能性があること。
  2. 以前の教員が担ってきた業務の中には、今後の教員の業務とはならないものも出てくる可能性があること。

つまり、社会の変化や教育環境の変化に合わせて、学校や教員の役割を見直す必要があるということです。

これらの施策を進めるためには、人員の増員や予算の増額が不可欠です。しかし、仮に予算が確保できたとしても、どの業界も人手不足が問題となっている現状では、必要な人数を確保できるかどうかは不透明な部分もあります。

これから来年度の予算を検討する時期になります。一つでも多くの施策が着実に実行されるよう、新しい文部科学大臣の手腕に期待したいところです。

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