
教員人材センターでは、学校理解・職場理解のための取り組みとして、私立中高教員1DAYインターンシップ(現:1DAY私学体験会)を開催しています。今回は、2022年春にドルトン東京学園中等部・高等部で開催されたインターンシップの模様をレポートし、私立学校の魅力やインターンシップの内容をご紹介します。
私立中高教員1DAYインターンシップとは
教員人材センターが主催するこのインターンシップは、大学生や大学院生など、将来教員を目指す方々を対象に、実際の私立学校の現場を体験し、職場としての理解を深めることを目的としています。多くの企業ではインターンシップが実施されていますが、学校現場では職場理解のための機会が少ないのが現状です。教育実習は教員になるための訓練が中心であり、就職先としての学校を見る余裕は限られています。そこで、教員人材センターが学校と連携し、独自の視点で選定した先進的な私立学校で1DAYインターンシップを開催しています。
ドルトン東京学園1DAYインターンシップ概要
2022年度は5月17日に開催され、大きく3つの内容で構成されました。
- 学校説明: ドルトン東京学園の教育理念や特徴について、先生方から説明を受けました。
- 授業見学・校内見学: 実際の授業風景を見学し、校内を自由に散策することで、学校の雰囲気や設備などを体感しました。
- ワークショップ: 参加者同士の意見交換やグループワークを通して、教員としての役割や学校の在り方について考えを深めました。
ドルトン東京学園とその教育
「ドルトン」とは、アメリカの教育家ヘレン・パーカストが約100年前に提唱した教育メソッド「ドルトンプラン」に由来します。モンテッソーリ教育やジョン・デューイの思想を取り入れたこのメソッドは、「自由」と「協働」の2つの原理を重視しています。ドルトンプランが実践された町、マサチューセッツ州のドルトンが名称の由来となっています。
ドルトン東京学園の教育内容説明
インターンシップ当日は、当時の副校長(現校長)である新居先生から学校説明が行われました。「学校にあるのがあたり前、を疑う」という言葉が印象的で、ドルトン東京学園では黒板やチョーク、定期テスト、校歌、校則、PTAなど、従来の学校であたり前とされているものが存在しないそうです。これは「学ぶのに一番心地よい状態にする」という考えに基づき、生徒たちが主体的に必要と考えるものは取り入れていくという方針によるものです。インターンシップ当日の服装が自由であったことも、同様の意図によるものでした。
新居先生は、「先生は生徒に知識等をインストールするためにいるのではなく、学びたいという意欲を持たせる存在ではないか」と述べられており、これは現代の教育で重視されている主体的な学びの考え方と一致しています。
校内(授業)見学
参加者は安居先生から「今まで自分が受けたものと違うかもしれないところを探してください」という課題を与えられ、自由に校内を見学しました。ドルトン東京学園の特徴として、中央に生徒が集まるスペースがあり、その周りを囲むように教室が配置されています。また、教科ごとに教室が分かれており、生徒が授業ごとに教室を移動するスタイルとなっています。これは、従来の先生が教室に移動する方式とは対照的です。参加者は授業風景を見学し、先生と直接話をするなど、貴重な時間を過ごしました。
グループワーク
校内見学後、参加者は教室に戻り、見学の感想を共有した後、グループワークに取り組みました。テーマは「先生とはどんな存在か?」「その存在であるなら、学校にいるもの/いらないもの」の2つでした。「学校にいるもの/いらないもの」というテーマは参加者にとって新鮮だったようで、「ネットで情報は集められるけれど、紙の本も必要だと思う」「そもそも教室っている?」「学校単位の大会はいる?」など、活発な意見交換が行われました。
ワークの最後に安居先生は、五重塔と建売住宅の例を挙げ、「職人技で作られる五重塔と統一的に作られる建売住宅、生徒はどちらになる方がいいのでしょうか?」と問いかけ、参加者に深い考察を促しました。
参加者の主な感想
参加者からは以下のような感想が寄せられました。
- 「より一層教員になりたいという思いが強くなりました。」
- 「学校見学もでき、実際に先生のお話も聞けるという非常に勉強になる機会でした。他の学生の考え方からも学ぶことが多かったため、グループワークがあったことも良かったです。ありがとうございます。」
- 「他の参加者の方と意見の交換ができたことが良かったです。また、自由に授業の見学をさせていただけたので生徒の様子がよく分かりました。」
まとめ
このインターンシップを通して、参加者は実際の学校現場を体験し、教員の仕事や学校の在り方について深く考える機会を得られました。特に、ドルトン東京学園の革新的な教育理念や自由な校風は、参加者に大きな刺激を与えたようです。教員人材センターでは、今後もこのようなイベントを開催していく予定です。ご興味のある方はぜひご参加ください。