今回は中学入試を中心に「入試問題の作り方」について解説します。普段何気なく目にしている入試問題が、どのような過程を経て作られているのか、その舞台裏をご紹介します。
1. 入試問題は学校の一大プロジェクト!
- 各教科(国語・算数・理科・社会)それぞれチームで作成します(1人で作ることはありません)。
- 各教科で役割分担が行われます(例:国語・算数では大問ごとに担当の先生が異なり、理科・社会では分野ごとに担当が分かれています)。
- 約半年かけて作成されます(スケジュール例)。
- 夏休み:各担当の先生が問題を作成します。
- 9月・10月:作成された問題を持ち寄り、検討会を行います。問題の質や難易度、出題範囲などを議論し、修正を加えます。
- 10月~12月:校正作業を行います。印刷会社が版組(レイアウト)したものを複数回にわたって校正し、誤字脱字やレイアウトの乱れなどをチェックします。多い場合は3校正ほど行う場合もあります。
- 試験回数が多い学校では、先生の負担も大きくなります。
1教科で5本程度の問題を作成することもあります。 複数回試験を行う学校では、各回で異なる問題を作成する必要があるため、先生方の負担は大きくなります。
2. 問題を作るときに注意していること
- 難しい問題・面白い問題ばかりではいけません。
- 平均点7割くらいを目指して作成する場合が多いです。平均点が高過ぎると合否の差が出にくくなり、低過ぎると受験生のモチベーション低下につながる可能性があります。試験時間内に受験生が全問取り組めるかどうかも意識して問題を作成します。そのため、できるだけ無答の問題を避けるように工夫します。
- 例:同じ問題でも選択式にするか記述式にするかで、正答率や問題に取り組む時間が変わります。
- 国語や英語は著作権の確認も必要です。
- 入試問題として使用することは問題なくても、ホームページ公開や問題集として利用できない場合があります。
- 言葉遣いや漢字には注意が必要です。
- 受験生が誤解しないような問題の出し方を心掛けます。また、漢字にルビをつけるか、ひらがなにするかなど、小学校で習っている漢字かどうかを考慮します。その他、うっかり漢字問題の答えが他の箇所に載ってしまう、といったミスがないように細心の注意を払います。
- 塾からの評価も気にします。
- 塾では各学校の問題の解答例を作成する場合があり、その際に「答えが出ない」「良い問題」「悪い問題」など、さまざまな評価を受けます。
- 例:大人なら知識で知っていることを、あえて考えさせる問題として出題した場合、塾からはあまり良い問題とは評価されない傾向があります。
3. 問題の材料は普段から集めている
- 全教科共通して言えることは、問題の材料は普段から集めているということです。 日常のニュースや書籍、資料など、さまざまなものからヒントを得ています。
- 算数:いろいろな問題を目にしたり、実際に解いたりすることで、出題の幅を広げています。 過去問研究も重要な情報源となります。
- 国語:良質な文章に触れるためには、普段からの読書が大切です。普段から読んでいないと、適切な素材文がなかなか思い浮かびません。
- 理科・社会:社会の動向(その年の主な出来事)は押さえておきます。また、自分の興味のある分野を問題に生かすこともあります。
4. まとめ
入試問題は受験生に対する学校からのメッセージと言われることもあります。それだけ重要なものです。 問題を通して、学校がどのような生徒を求めているのか、どのような教育を行っているのかを伝えようとしています。
先生も自分の意気込みを問題に込めやすいです。普段のテストは教科書や学習指導要領などの制約が多いため、先生らしさを出しにくいですが、入試問題ではある程度自由に問題を作成できます。
問題作成は私立学校ならではの業務と言えるでしょう。 公立学校の場合は、都道府県や市町村の教育委員会が作成した共通の問題を使用することが一般的です。