
文部科学省から発表された教員採用試験の採用倍率などのデータをもとに、近年の教採の状況を詳しく分析します。
1. 2021年実施の教採はどうだったか?
2021年に実施された公立学校の教員採用試験は、全体の採用倍率が3.7倍となりました。これは1991年度と並び過去最低となっています。特に小学校の採用倍率の低さが目立ち、2.5倍と前年(2020年実施)の2.6倍からさらに下がり、過去最低を更新しました。高校も5.4倍で、前年の6.6倍から大きく下がっています。一方、中学校は4.7倍と、前年の4.4倍からやや上がっています。
2. 小学校の状況
小学校の状況を詳しく見ていきましょう。
2020年は受験者数43,448名、採用者16,440名だったのに対し、2021年は受験者数40,636名、採用者16,152名となっています。採用者数に大きな変化がない一方で、受験者数が約3,000名減少したため、倍率も下がりました。
小学校は他の校種よりもともと倍率が低くなっています。10年前は4.4倍でしたが、その後下がり続け、2.5倍となりました。
具体的な数値で見ると、2011年の受験者数は約59,200名、採用者数は約13,600名です。一方、2021年は受験者数が約40,600名、採用者数が約16,200名となっており、受験者が減少しているにもかかわらず採用者数が増加しているため、倍率の低さがより際立っています。
3. 中学校の状況
次に中学校の状況です。
2020年より倍率が上がった中学校ですが、これは採用者数を前回よりも抑えた結果と言えます。2020年は受験者数44,105名、採用者10,049名だったのに対し、2021年は受験者数42,587名、採用者9,140名となっています。受験者数は減っていますが、採用者数も減っているため、結果的に倍率が上がったということになります。
全体的に小学校を上回る倍率となっていますが、10年間の低下幅は7.7倍から4.7倍と3倍です。小学校は4.4倍から2.5倍、高校は7.3倍から5.4倍と、それぞれ1.9倍下がっています。中学校はそれ以上の下がり幅となっています。
4. 高校の状況
続いて高校の状況です。
小学校同様、2020年より倍率が下がっています。受験者数が減少している一方で採用者数が増加しているため、採用倍率の低下は小中学校よりも大きくなっています。2020年は受験者数26,163名、採用者3,956名だったのに対し、2021年は受験者数23,991名、採用者4,479名となっています。
小中学校と異なり、2017年まで倍率はほぼ横ばいでしたが、それ以降は低下し続けています。低下傾向にあるものの、小中学校よりは倍率は高めです。
5. 新卒の状況
新卒の状況は学校種別ごとに異なっています。
2020年と2021年の新卒の受験者数を比較すると、小学校は17,228名から17,484名、中学校は13,867名から15,063名と増加しています。一方で、高校は7,428名から7,104名と減少しています。
過去10年の推移を見ると、小学校はほぼ横ばい、中学校は減少傾向が続き2021年に増加、高校はなだらかに減少していると言えます。今後の動向にもよりますが、高校を除けば、学生の受験者数はある程度保たれていると言えるでしょう。受験者数に直接影響を与えているのは既卒の受験者数だと考えられます。
新卒の採用率も各学校種別で違いがあります。小中学校、高校ともに10年間で採用率が上がっていることは共通しています。高校は12.4%から19.3%と約7%上昇、中学校は12%から23.5%と約2倍となっています。小学校は10年前が28.9%と高めでしたが、2020年・2021年で46.8%と、2倍とまでは言えませんが50%に近づいています。
民間企業出身者の採用は、2020年が1,175名、2021年が1,246名と増加しています。しかし、5年間の採用率は4%弱と、まだ多いとは言えない状況です。
6. まとめ
今回は文部科学省の発表をもとに、近年の教員採用試験の受験者数や倍率について分析しました。全体的に受験者数が減少し、倍率も低下していると言えますが、小中学校、高校それぞれで傾向が異なっています。
教員採用試験に興味を持っている方は、学生、社会人、教員経験者、民間企業経験者などさまざまだと思います。ぜひ自身が志望する学校種別の状況を確認し、今後の教員採用試験の動向も見ながら、ご自身の進路を検討してみてください。
<参考URL>
公立学校教員採用選考試験の実施状況 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1243159.htm