セミナーレポート

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2011.09.25

私立各校の採用責任者に聴く 採用にあたって重視するポイントはここだ!

平成23年9月25日(日)開催
教員人材センター キャリアビスタセミナー

◆講師・学校紹介

大宮開成中学・高等学校
校長 山中 克修 先生(以下「山中先生(大宮開成)」)

本校は中高一貫の3クラス90名×6学年と高校からの外部募集410名×3学年の生徒数からなる学校です。教員採用は5月の連休明けから開始しており、採用形態は専任・常勤・非常勤の3種類に分かれます。専任と常勤については、待遇は同じですが専任は終身契約、常勤は1年契約と契約期間の違いがあります。常勤講師については3年を目処に専任教員にしています。また、非常勤講師から優先して常勤講師にしていますが、本年は常勤講師を8名採用し、内非常勤講師から常勤講師になった方は1名でした。現在は理科の常勤講師を1名非常勤講師を2名、また国語、数学、保健体育の非常勤講師を各1名募集する予定です。後は入学者数が多くなる場合には教員の追加募集を行うこともあります。

芝浦工業大学柏中学高等学校
副校長 久保田 剛司 先生(以下「久保田先生(芝浦柏)」)

芝浦工業大学の付属校は東京都板橋区に男子校、そして千葉県の柏市に共学校である本校があります。32年前にできた本校は、付属校といってもそのまま大学にあがるのは1割程度で、外部進学を目指す生徒が大半です。やはり理系進学を目指す生徒が多いです。教員については毎年10名ほど入れ替わりがあります。専任教員、特任教諭(常勤講師)、非常勤講師に分かれ、特任教諭(常勤講師)は1年契約で最長3年までとなっています。専任として採用する場合でも1年目は特任教諭(常勤講師)となります。非常勤講師も1年契約となります。次年度は社会・英語の特任教諭(常勤講師)及び社会の非常勤講師を募集する予定です。前2校と同様に採用が決まっていた方でも他の就職先を選んでしまうことがありますので、その時は再度教員募集をします。

國學院大學久我山中学高等学校
教頭 今井 寛人 先生(以下「今井先生(久我山)」)

本校は生徒数約2300名からなる学校です。教員採用については既にホームページ上で英語・数学・理科等の教員を募集しています。新聞の求人でも専任教員・非常勤講師の募集をしますが採用人数は決めていません。選考の過程でいい方がいれば専任又は非常勤として採用いたします。今までは各教科で教員採用をしていましたが、今年から採用委員及び校長の最終面接をする方法に変更しました。当校は50代の先生が多いため、本年度は29歳以下で募集をしております。しかし応募の状況によって、40代まで引き上げることがあります。2-3月には採用が決まっていた方でも公立校に就職してしまうことがありますので、その時は再度教員募集を行います。

桐光学園中学校・高等学校
教頭 村上 冬樹 先生(以下「村上先生(桐光)」)

本校は中高男女別学の学校です。教員数は専任教員が約170名、非常勤講師が約25名です。教員の年齢構成は40-50代が最も多く、今後数年で60歳の定年退職者が多くなるので、そのタイミングで教員募集も多くなることが予想されます。来年度の募集予定はまだ決まっていません。非常勤講師の来年度の継続の確認を行ってからその状況を見て募集を行います。また国語で専任教員の募集を行う可能性もあるといった状況です。

=パネルトーク開始=
― 書類・履歴書の見るポイントを教えてください。

山中先生(大宮開成)

本校では自己PRを重視し、9割の方を書類選考で落としています。書類はキレイか否かではなく丁寧に書かれているか、熱意が感じられるかを見ています。また私学に対する熱い思いやこういう教育をしたいという熱い思いが書かれているか、自分の長所をしっかりPRできているかなどを見ます。

村上先生(桐光)

学歴や職歴はもちろん確認しますが、書類は丁寧に書かれていることが基本です。また本校では別途自己PR書を作成していただいており、書類選考の際重視しています。非常勤講師は授業力を、専任教員は運動部を中心に部活動を担当してもらうことが多いです。そのため、指導経験や趣味・特技等も記入して下さい。

久保田先生(芝浦柏)

書類選考では丁寧さを重視しています。誤字脱字等のミスが多い方、年号の誤り又は封筒の宛名に敬称が書かれていない場合などは書類選考で落としています。きちんと正確に書かれていることが前提となります。また、自己PRに書式はありませんが、画像を使ってPRをしている等、他人と異なる工夫をしている方は目を引きます。自己PRは非常に重要です。

今井先生(久我山)

学生の方は書類にクラブ活動やアルバイトの経験なども記載して頂きたいです。クラブ活動でリーダーの経験をしていたらそれも書いて頂き、塾バイトの経験がある方はどういう体験をしてきたか、人と人とのかかわりの記述がある方に関してはポイントが高いです。もちろん丁寧に書いていない方は論外です。

― たまに細かくびっしりと枠いっぱいに記載している方がいらっしゃいますが、情報量が多すぎる書類というのはいかがでしょうか。

久保田先生(芝浦柏)

バランスが難しいですね。びっしり書けばいいものでもない。フォントを変えたりアクセントをつけて読みやすい自己PR文にしてもらいたいです。

山中先生(大宮開成)

封筒の宛名がワープロ打ちのものを時々目にしますが愕然とします。封筒の宛名も自筆で丁寧に記載してもらいたいです。字の大きさも適度な大きさで、バランスとか読み手のことを考えた書類作りを心がけて下さい。

― 続きまして筆記試験について伺います。

今井先生(久我山)

教科によって異なりますが、基本的には大学入試レベルの問題で7~8割解ければ合格となります。また国語科は国公立入試レベルを、数学科はこれは教員になるなら理解しておいてもらいたいという問題を出しています。しかし新卒の大学4年生などは大学入試問題等から遠ざかっていて解いてもいないと思われますので、面接選考の結果も合わせて総合的に評価し、採否を決定しています。

久保田先生(芝浦柏)

国語科は現代文・古文の両方を、東大等国公立入試レベルの記述式中心の問題を出しています。また理科は大学入試問題及び大学の専門の基礎レベルの問題、ここは知っておいてもらいたいという問題を出しています。

※大宮開成、桐光では現在筆記試験は行っておりません。

― 続きまして、どのような形で面接をするのか、どんな質問をするのか、また面接中に見るポイントを教えてください。

山中先生(大宮開成)

本校では面接というより面談と思っています。応募者との情報交換の場と考え、現在どのような採用活動をしているのかなどを聞いています。特に面接にパターンはございませんが、熱意、教員としての適性、人柄を見ています。本校では書類選考が通れば模擬授業までは進めます。また電話対応も私が直接行っているので、その時の対応もで大体人柄がわかります。面接の場で上手いことを言ったであるとか、失敗したであるといったことはあまり問題にしていません。

今井先生(久我山)

山中先生と同様に面接では応募者の人柄、人間性を知りたいと思い見ています。また本校は共学校になり20年以上たちますが、いまだに男子校と思っている方がいます。ホームページ等で学校のことを調べてから受けにきてほしいと思います。その他各教科の面接責任者の話をまとめると、学校の教育理念が自分の考えと異なる場合にどのように調整をつけるか、採用した場合に考えを変えてもらえるのかを聞いているとのことです。どうしても変えられないとのことならここでお断りしています。校長面接にも立ち会いますが、面接を受けているときの姿勢や目線、生徒に活力を出させる雰囲気をもっているのか等を見ています。

久保田先生(芝浦柏)

山中先生、今井先生の言葉にいくつか付け加えると、私学と公立とは大きく違いますので、私学人としてどういう心構えを持っているかを問う質問をします。常勤・非常勤は即戦力を期待しているので面接及び模擬授業の総合評価となりますが、専任については人物を見ますので対生徒、対保護者との対応力をみる質問もします。そして一番重要なのはコミュニケーション能力と考えているので質問に的確に答えられているかも見るポイントとなります。例えば今年採用した人は本校の生徒・保護者向け学校説明会に来たりするなど熱意が感じられたところもポイントとなりました。その他、特に実家を離れて一人暮らしの方は学校と家との往復のみの生活になりやすいので、ストレスなどで追い詰められることもあります。そこでオフの時間の使い方や趣味についての質問も交えます。このように様々な質問をさせていただき、応募者の今までの人生を正確に伝えていただいた上で本校と合う方を採用しています。

村上先生(桐光)

教科責任者との1対1の面接及び校長との1対1の面接を行います。校長面接では人間性を見ています。例えば教育実習や今までの教員経験を通じて上手くいかなかったこと、そして今後はどのように対応するかなどの質問をします。

― 面接の際、授業中寝ている生徒にどう対応するかなどの質問はしますか。

今井先生(久我山)

時に聞くこともあります。でも答えは一つではないので、実体験を話してもらったり、誠意を持って答えてもらえればOKです。

― 面接をして貴校に合うと感じた方とは具体的にどのような方ですか、印象に残った良い方、悪い方の例があれば教えて下さい。

久保田先生(芝浦柏)

大学院博士まで進み教科の専門性は高いのですが社会人としての常識が欠けている方、専門のことについては生き生きと話をするが、教育に関するごとなどの質問については黙ってしまう、こういった方はマイナスです。社会に目を向けている方を本校は求めています。また理科の先生で自分の専門は化学なので、化学以外の理科教科は教えられないと言う方はNGです。教えた経験は無くても新しいことに進んでチャレンジしようとする方を望みます。

山中先生(大宮開成)

名刺を渡したら座ったまま受け取るなども一例ですが、全体を通して、気遣い、気を使えない方はNGです。その点ができている方は好印象です。

今井先生(久我山)

第一印象が大事だと思います。清潔感が無い人はNGです。不潔な先生では生徒が授業に集中できませんし、質問にも行けません。気持ちよく会話のできる清潔感は大事だと思います。

村上先生(桐光)

一般企業経験者は社会人としてのマナーなどは鍛えられているとも思います。しかし必ずしもそれを優先することはありません。いろんな人がいて学校は成り立っていると考えます。また選考当日も複数の方を面接いたします。その時一番良かった方をご縁が合った方として採用しています。

― 次に模擬授業について、模擬授業中に重視するポイントを教えてください。

山中先生(大宮開成)

面接の後、最後に模擬授業をします。しっかりできているかどうか、具体的には授業のテンポ・スピード感を最重視しています。課題は前日以前に伝えていますので課題にどう真剣に取り組んだか、その点を模擬授業でみます。模擬授業で力が歴然とわかります。一番その点でよかった方を採用します。過去たくさんの方の模擬授業を見ているので妥当な判断ができていると思います。

今井先生(久我山)

教科によって異なりますが国語、社会は前日以前に課題を提示し、英語、数学、理科は当日に課題を提示しています。当日提示でも考える時間は与えています。模擬授業の時間も教科によって異なり数学は10-20分程度ですが、国語は40分程度行います。国語では授業の組み立て方を重要視しています。また数学では、声の出し方、話し方、板書をしている時の体の向き、視線等を見ています。教員は皆自信満々の方が多いので、注意しても授業の仕方はさほど変わりません。上記を踏まえて最も優れた方を採用しています。

久保田先生(芝浦柏)

今井先生に同感です。授業をする上で何がポイントかがわかる力を持っていることが大切です。これは元々持っている方もいますし、後から身につけていく方もいます。理系で学歴の高い方にありがちですが、苦手な生徒には大事と思われる説明を、自分が勉強をした時につまずかなかったために、飛ばして授業を進める方がいます。わからない人はどこでつまずくのか、それを授業に反映させているかはしっかり見ます。課題は1週間以上前に提示します。まれに教科書の脚注だけを使って説明をしている方がいますがそのような場合はNGです。事前に課題を提示しているので自分で独自に調べてきているのかを重要視しています。また中高一貫校で教えるのであれば板書の際に漢字が正しい筆順で書けているかもポイントとなります。

※桐光では現在模擬授業は行っていません。

― 最後に各校の求める人材像及び教員を目指す方へのメッセージをお願いします。

山中先生(大宮開成)

本校は教員の募集を行っているので宜しくお願いします。5月連休明けから常勤を中心に募集し、10月以降また募集を開始します。教員の採用基準は各校で異なります。教員になりたいのであればあきらめずに意欲を学校に見せて下さい。チャンスは来ます。年齢・性別・経験等関係なく意欲を見ています。採用されますよう頑張って下さい。

今井先生(久我山)

子供が近づいてくるとうるさいと感じる方は教員に向いていません。子供が好きな方、全ての子供を受けとめ子供を成長させてあげたい、そして自分も成長したいと思っている方は教員に向いていると思います。あの先生の授業を休んだら損をすると生徒に思わせる授業ができる方は大歓迎です。意欲のある方を待っています。

久保田先生(芝浦柏)

本日は辛口の話ばかりになってしまいましたが、学校という場は大人と子供が存在しているという特性があります。大人は教職員、子供は生徒を指しますが、教員は大人として子供である生徒に接しなければなりません。子供との距離感の取り方が非常に大事であり、子供をしかり、子供の手本とならなければなりません。また学校は個性と個性の出会いの場でもあります。あの先生の授業はすばらしいと思われる教員になって下さい。

村上先生(桐光)

私が今の学校の採用が決まったのは3月です。当時は1年でやめようと考えていましたが、ここまで続けてきました。人生、先というのはわからないものです。皆さん今後の教員採用に向けて頑張って下さい。本日はありがとうございました。



― 以上でパネルトークを終わりにいたします。先生の皆様、貴重なお話ありがとうございました。