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一覧へ戻る私立採用担当者に聞く!専任教諭を目指す方への選考突破セミナー
平成29年8月4日(金)開催
教員人材センター キャリアビスタセミナー
講師・学校紹介
浅野中学・高等学校 校長 前田 渉 先生(以下 浅野 前田先生)
本校は、川崎と横浜の間にある新子安という駅にあります、男子だけの中高一貫校です。
今年創立97年目を迎え、ちょうどオリンピックの年に100周年を迎えます。
創立者は浅野総一郎という企業家です。
当初から進学校を目指していた学校ではありますが、1980年以降に完全な進学校にシフトしました。現在では、神奈川県の男子進学校の中では、ある程度の実績を残せる学校になっています。そのため、教員採用時にもその点をかなり意識しています。
芝浦工業大学附属中学高等学校 校長 大坪 隆明 先生(以下 芝浦工業大学 大坪先生)
本校は元々板橋区にあったのですが、2017年4月に江東区豊洲に新校舎を建て移転をしました。豊洲という場所は、芝浦工業大学のメインキャンパスがあるところで、中高大一貫で社会、世界に貢献できる研究者、技術者の育成を目指しています。
中高大一貫のものづくりや理工系のプログラムが非常に充実していて、芝浦工業大学に内部推薦で上がっていく生徒、外部進学をする生徒を合わせて、理系の進学率がだいたい7~8割程度です。また、理系の中でも工学部に進む生徒が非常に多いことが特徴です。
いわゆるサイエンスだけではなく、テクノロジーやエンジニアリング、インフォメーションに力を入れて教育を行っています。
元は男子校でしたが、今年から高校のみ女子を受け入れており、今年は19名入学しました。「リケジョ」と言うよりは、「工学女子」を育成したいと考えています。
順天中学校・高等学校 副校長 片倉 敦 先生(以下 順天 片倉先生)
本校は、北区王子にあります。1834年(天保5年)に大阪で創立されました。
元は「順天堂塾」という、和算の塾です。そのため本校も元は理系の学校だったのですが、現在はスーパーグローバルハイスクールに指定され、グローバル教育も行っていますし、理数選抜というクラスを設け、スーパーサイエンススクールのようなことも行っています。
よく「順天堂大学と関係はありますか」と聞かれますが、関係はありません。あちらは千葉県の佐倉市にありましたので「佐倉順天堂」、本校は大阪にありましたので「浪速の順天堂」と言われてきました。ですが、東京に移って、もう183年になります。
本校は寺子屋から発した訳ですが、江戸時代の寺子屋はどういう教育をしていたかと言うと、今で言う「PBL(プロジェクトベースラーニング)」なんです。
今まさにそういうことを言われている時代ですが、昔から日本ではそういう教育をしてきています。本校はそうした原点に帰りながら、教育を行っている学校です。
=パネルトーク開始=
― 専任教諭にどのようなことを期待しますか?
浅野 前田先生
本校では、新卒も専任教諭として採用されます。
2年目以降は担任含め、全ての仕事を受け持っていただくことになります。そのため、専任採用にあたっては、かなり慎重に行っています。
本校の進学実績をご覧になって試験を受けられる方が多いですが、1番大きな問題は、教科を教えることだけではないということです。
中学受験を経てきた子ども達を、日本で有数の大学を受験するような子に育てるという意味では学業的な力は必要なのですが、それと同時に、本校は部活動などに非常に熱心で、制限がありません。多い部活動は1週間に6日間やっていますし、運動部の場合、高校3年生の5月くらいまで活動して、そのまま大学受験をするということもあります。学校行事も多数あります。
そんな中で、1年目から専任としてきちんと仕事ができるような連帯力を持った人、チームの中に溶け込める人を、注意しながら採用しています。
芝浦工業大学 大坪先生
本校は、いきなり専任という例はあまりなく、基本的には有期雇用の「特別任用教諭(特任教諭)」として採用させていただいて、1年半後の夏休み前にもう一度変更の審査をします。それを経て、次年度から専任にするというスタイルを、ここ数年はとっています。
1年半というタイミングは、失礼な言い方になりますが、もしもそこで専任は難しいという結果が出たとしても、就職活動ができる時期ということで設定しています。
専任にするかしないかという1番大きなポイントは、まず「担任ができるかどうか」です。
教科の問題は、当然できることが前提です。ただ、新卒の方の場合は、スキルが劣っていることは当然分かっています。
私は教えるスキル自体は、すぐに上がると思っています。ただ、担任として人に与えていく、人と関わり合っていく、人を育てていくというマインドについては、そう簡単にはいかないところもあると理解していますので、やはり担任ができるかどうか、きちんとクラスを作れるかどうか、生徒たちに「こういったことを与えたい」というパッションがあるかどうかということを、1番大きなポイントとして見させていただいています。
もう1つは、「社会人、組織人である」という意識です。
働く以上は、教員であるということと同時に社会人であるべきですし、組織のために働く意識は絶対に必要だと思っていますので、そういったところも見させていただきます。
順天 片倉先生
本校では、採用時には「専任講師」という名前で採用します。
そして1年間経って、次の年の担任に指名されると「専任教諭」となります。
担任ができない教師に専任教諭はできないと考えていますので、「この先生だったら担任ができるな」と思った時点で専任教諭にさせていただきます。
では専任講師のままだとすぐに退職かと言うと、そういう訳ではありません。その場合も、副担任として長くいていただくことがあります。
専任教諭になるためには、生徒や保護者としっかりと関わっていける方、つまり「大人の」感覚を持っている方かどうかが重要です。
今の保護者には、様々なことについて何かとお尋ねされることがあります。人によってはそれを「クレーム」ということがありますが、そうではありません。保護者の方の疑問にしっかりと答え、それを基にして自分を改善できるような教師が大事だと思っています。保護者のいうことを糧にして、成長できるような教師を目指していただきたいです。
「教師というものは、保護者からのクレームが多くて大変な職業ですね」とよく言われますが、そうではないのです。保護者が皆さんを育ててくれている、という風に考えた方が良いかもしれません。
それから、やはり教師には非常に多くの仕事があります。
まずは教えることですが、それ以外に、学校の運営もしないといけません。部活動も、行事もあります。色んな企画もあります。
そして協調性、皆とチーム一丸となって目標を達成しようとする強い意思と、人をリスペクトできる感覚、そして多様性を大事にできる、ということも重要です。
本校では、帰国子女や留学生を受け入れています。そういう子に対して、多様性を見失うような発言をしてはいけません。日本の教育を受けてこなかった子ども達に、できないことがあるのは当たり前です。
では、何故そういう子どもを受け入れるのか。そういうことを理解できる教師になってほしいと思っています。
― 面接での具体的な質問、専任教諭採用ならではのポイントについて教えてください。
順天 片倉先生
1番大事なことは「大学での学びがどうだったのか」ということです。
例えば、どのような研究をしてきたのか、卒論にどのようなことを書いたのか、その卒論は評価されたのかどうか。要するに、しっかりと学習してきたのかどうかを見ます。
やはり、真面目に学習できていない人は教師には向かないのかな、という気がします。
本校では、スーパーサイエンススクールのようなことも行っています。スーパーグローバルハイスクールにも認定されています。ですから、高校でありながら、大学での学びのようなものも大事にしているのです。
生徒には必ず研究論文を書かせます。高校生に論文の形式を理解させ、書かせることができるかどうかは、自分がそういうことをやってきたかどうかによります。これからの学校は、そういうことを求めるところが増えてくると思います。
それから、「何故、教員を目指したか」ということも重要です。
単に○○先生に憧れて、ということではなくて、目指す教員像まで具体的に聞いていきます。
もう1つ、教師になって生徒や学校にどのような貢献をしたいのかということも聞きます。
また、社会的な貢献に対して肯定的な考えを持っている方を本校は欲していますので、ボランティア活動などの経験についても聞いています。
非常勤講師の場合とどこが違うのかというと、やはり専任の先生は色々な先生方と共同的に、目的を持ってひとつのプロジェクトを創り上げていかないといけません。これからは特にそういう時代になっていきますので、主体的に人と関わり、多様的な価値を認め合うような人材を欲しています。
浅野 前田先生
本校では管理職面接というものを行っていません。二次試験の面接で8割がた、更に模擬授業の際の最終的な話し合いでほぼ決まります。
どうしても1人に決められないという時には私がお預かりすることがありますが、それ以外の場合は、ほぼ二次試験か模擬授業で決まっているのが現状です。
選考を行っていて一番感じるのは、「どれだけ学校の現状を理解して受験していただいているのか」ということです。本校には「九転十起」という校訓がありますが、それについてだけ色々と書かれていても、私達の琴線にはあまり 響いてこないことが多々あります。
しかし本校の様子、例えばブログを見て「この学校はこんな部活が盛んなんですね」「こういう進学実績を持っている学校なんですね」といったことをある程度分かっていただいている方は、やはり面接でのこちらの聞き方も大きく変わってきます。
そして、教科面接において教科担当者がかなりシビアに質問をしている様子を見ながら、「この人は質問をされても相手の目を見られていないな」というような点をつぶさに観察して、私達はその辺りを確認していくという流れになります。
先ほど申し上げた、適性検査の結果と非常に合致するのはその部分ですね。
受ける時にはアットランダムに色々な学校を受けられるかもしれませんが、行きたい学校がどんな学校で、その学校の特質がどういうところにあるのか、ある程度きちんとイメージをお持ちになった方が、コミュニケーションもきち んと取れると思いますので、そういった準備をされる方が良いと思います。
芝浦工業大学 大坪先生
面接では、まず「教師になりたい理由」を最初に聞くようにしています。
先ほども申し上げた通り、最初に出会う職業人が教員なので、皆さん教員についてはよく知っていると思います。それに「なりたい」と思うのも自然なことですが、それが中高の時に端を発していたとしても、その後、今に至るまでに教師という職業をどのように捉えているのか、自分自身ときちんと向き合って考えているかということが一番重要です。
○○先生に憧れたから、だけでは話になりませんし、部活を教えたいからだとか、そういう理由で止まっていると難しいかと思います。
また、自分の教科に対する愛情と自信がないとまずできない仕事だと思いますので、専門としてどういった勉強をしてきたか、どういった研究をしてきたかというのは非常に重要です。
新卒の方であれば、自信はともかくとして、自分の教科を愛しているかどうかが非常に重要だと思っています。
あともう1つは、教育観や、社会の様々な問題に対する問題意識ですね。それについては正解は当然ない訳ですから、当たり障りのない答えでなくても構いません。私自身は、社会に対する批評的精神、批判的精神というものは非常に重要だと思っています。
その回答の中で見るポイントとしては、まず論理性です。自身の考えを、相手に共感してもらいながらきちんと展開できるか、ということです。
それから、先ほど申し上げた社会に対する問題意識を自分の中でしっかりと持っているかどうか。
あとは、笑顔です。リラックスしていなくても構わないのですが、笑顔を交えながら落ち着いて喋ることができるかどうかということも結構重要で、もしそれがない場合にはこちらで場を和ませるようなこともします。
所謂紋切り型の答え以上のものを引き出したいと思っているので、そういった点も重要かな、と思っています。
教員というものは職業選択の1つであると私は考えていて、他の職種と比べた上で教員を志望するという形でも構いません。ただ、それを客観的に語れるかどうかという点は、非常に重要視しています。