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一覧へ戻る学校勤務のお悩み解消!若手教員のためのトラブル対応術
平成29年8月22日(火)開催
教員人材センター キャリアビスタセミナー
講師・学校紹介
西武台千葉中学校高等学校 須田 秀伸 先生(以下 須田先生)
私は、新潟県佐渡島の出身ですが、千葉県の公立高校に奉職し、主に松戸や柏で勤務していました。教科は国語です。柏市の教育委員会にいたこともあります。
柏市立柏高校で3年、東葛飾高校で3年校長を務めた後、定年退職しました。その後、縁があって現在の学校で勤務しています。今年で2年目です。
公立で勤務していた頃は、進路指導部会、国際教育研究部会、中国語部会、それから定時制がありましたので給食部会と、4つの部会長を同時に務めていたこともあります。
教員生活をとおして主に国際理解教育や日本語教育、卓球部の指導に携わりました。
西武台千葉中学校高等学校は、千葉県野田市に位置しています。中学校・高等学校の併設校です。
最寄駅は川間と言って、春日部から電車で10分くらいの駅です。
昭和61年に武陽学園高校という男子校として開校し、その後男女共学になり、更に中学校も併設されました。高校は今年で32年目です。
中学校は143名、高校は944名在籍しています。素朴で、挨拶がしっかりできる生徒が多いです。中学校は60%が野田市在住の生徒で、高校は65%が千葉県、30%が埼玉県在住の生徒です。
部活動が盛んな学校で、バドミントン部は19年連続で千葉県で優勝しています。今年のインターハイでも1年生が個人戦でベスト8に入りました。また、ゴルフのジュニア選手権ではゴルフ部の生徒が個人優勝しました。他にも陸上部、ダンス部、吹奏楽部など100人規模の部活が目白押しです。
本校の教育方針は、学習活動・部活動・体験活動の3つをバランス良くやる、というものです。
西武台千葉の校章の「武」は武士の「武」という字がモチーフですので、武士道の精神=人に優しく接する、他人のために頑張ると言ったような精神性の上に、先の3つのバランスが取れた学校を目指しています。
卒業後は7割が大学に進学しますが、特に教員志望、看護系・医療系の志望者が多いことが特徴です。国際交流活動も年々盛んになっており、オーストラリアや中国等と交流をしているところです。
中村中学校・高等学校 永井 哲明 先生(以下 永井先生)
私は校長になって2年目ですが、中村には34年勤務しています。
34年のうち、24年間は進路指導に関わっており、進路指導部長も務めました。進路指導部長になった最初の年に、リクルートの「キャリアガイダンス」という雑誌に触発され、日本進路指導学会(現在の日本キャリア教育学会)に参加しました。それから、日本教育カウンセラー協会にも参加し、少しずつ勉強をして、今はキャリアコンサルタントと上級教育カウンセラーの資格を持っています。
教頭と副校長を8年務めましたので、要するにトラブル対応を8年間やってきたと思って頂いて良いかと思います。教頭・副校長まで来ると、トラブルは全て自分のところで解決しなければいけないという状況ですので、随分貴重な勉強をさせて頂きました。
本校は女子校で、清澄白河という駅から3分ほどの位置にあります。創立から今年で108年目です。かえつ有明さんと芝浦工業大学さんが江東区に移転されるまで、江東区に私立の学校は本校しかなく、「深川の地に女子教育を」という建学の精神で始まりました。生徒はほぼ100%が4年制大学に進みますが、学力差がありますので、学習指導も様々なレベルの生徒が対象となります。
校訓は「清く、直く、明るく」ですが、創立当初から「機に応じて活動できる生徒を目指す」と謳われています。つまり、どんなことがあってもそれに対応、適応できる女性の育成を目指すということです。そのために2002年から、「キャリアデザイン授業」というものを行っています。職場体験などのイベントだけでなく、生徒が自分のキャリアをデザインする力を6年かけて身につけていく、そういったことを非常に大切にしています。その取り組みが認められ、4年前には文部科学大臣からキャリア教育に関する表彰も受けました。
また、自分のキャリアを大切にすると同時に、社会貢献、社会創造という点についてグローバルな視点を持つということも大切にしています。
― 西武台千葉 須田先生が挙げるトラブルの5つの要因
①単独で判断をしてしまう
若い人に限った話ではありませんが、報告がないまま、縺れに縺れた状態になってから管理職に委ねられることがよくあります。
教員は必ず学年や学校の方針で動いている訳ですから、周りの人に相談する、ということが1番大切です。単独行動も良かれと思ってやるのだとは思いますが、やはり学年主任や教頭に相談することは必要です。
②強すぎる生徒指導、生徒指導力がない
ベテランの先生は、一定の信頼関係が既に生徒との間に構築できていたりします。
ところが、若い方がそれを知らずにベテランと同じように振る舞ってしまうと、大きなトラブルの元になります。
また、注意しなければならない場面で注意をしない、ということも多いです。意味がないように思えても、注意する、指導するということ自体が大切なのです。
③服務の理解不足
引越しをしても申告しない、書類を出さずに出張に行ってしまうなどしてしまう人がたまにいました。
そのように自分の書類を提出したり、ルールを守ることができない人は、やはり生徒の調査書などの記入も雑なことが多いです。そういった部分がきちんとしている人は、生徒の面倒も細かくみられる人だと思います。
④安全配慮等の不足
「暗い道は1人で帰らないように」とか「遅くなったら家族に連絡を入れるように」といった一言(配慮)が、実は後で大変重要になってくることがあります。
「予見可能性があれば、安全配慮義務がある」と解釈されます。何もしないことは「不作為」と呼ばれ、そこを指摘されます。安全配慮については、ベテランと若い人とで大きく差が出ます。気を付けられた方が良いかと思います。
⑤授業力不足
中学校はどちらかと言うと生徒指導をしっかりできる人が重宝されますが、高校は何よりもまず授業が第一です。忙しいかとは思いますが、勉強の時間を捻出することは必要だと思います。
― 中村 永井先生が挙げる5つのトラブル要因
①拙速な言動
例えば生徒同士でトラブルになり、当事者である生徒から訴えがあった時に、すぐに相手の生徒に対応する、ということです。もしかしたら、生徒が自分に都合の良いことだけを話しているかもしれません。もしかしたら、その生徒も相手に嫌な思いをさせている部分があるかもしれません。それは、生徒を疑うということではなく、事実関係を正しく確認する、ということです。
また、周囲の生徒に状況を聞いてみるということも大切です。
そこまでしておくと、後々大きなトラブルに発展することは少なくなると思います。
②無意識のひいき
ひいきしようと思ってしている先生はいないかと思いますが、何となく、話しやすいと感じる生徒はいると思います。反対に、声を掛けづらい、話しにくい生徒もいるかもしれません。
それを、きちんと自覚することです。
自覚をすることで、自分が苦手としている生徒にも平等に接しようとする意識が生まれると思います。
③約束
これは本当に単純な話です。生徒から「ここだけの話」と打ち明けられたことが、漏れてしまったらそこで信頼関係は終わってしまいます。
では、誰にも相談してはいけないのかと言うと、そうではありません。相談はすべきです。ただ、相談する際には相手の先生にも、絶対に広めないという約束をしてもらわなければいけません。
また、もっと単純な約束として、私達が授業でよくやることがあります。
例えば、「10分でやってください」と言ってプリントを配ります。そして、10分経ってほとんどの生徒が終わっていないのを見て、「じゃあ5分延長しますね」と言うことがあります。
それはいけません。10分と言ったら、必ず10分で切ってください。終わらなければ時間を延ばしてもらえると思うと、生徒達はいつまで経ってもその問題を10分で解けるようになりません。そういう意味での約束もあります。
また、よく学年集会などに遅刻する教員がいますが、絶対に遅れてはいけません。私達が約束を守ることによって、生徒も約束を守るようになります。
④「早く解決しなければ」と思い込む
これは①に繋がることですが、自分が楽になるために、「早く解決しなければ」と無意識に思うことがあります。早く解決すること自体は良いことですが、そこにばかり縛られてしまうと冷静な判断力を失ってしまいます。
⑤保護者に強硬に要求されるとひるむ
若ければ若いほど、強硬な要求に対し怯んでしまうことがあると思います。
例えば、「弁護士に相談する」「訴える」「東京都生活文化局の私学部に電話する」など。確かに言われるとドキドキしてしまいますが、怯む必要はありません。
その際は、「それは私が決められることではございません」と、冷たく思われないように伝えてください。そして、「私が大事にしていることは、生徒が安心して、安全に学校生活を送ることです」と自信を持って言って頂ければと思います。そのために協力して頂けませんか、とぶれずに言い続けることが大切です。
― トラブルを未然に防ぐ、適切に対応するために心掛けて欲しいこと
中村 永井先生
生徒に対しては、1人1人を出来る限り見てあげることです。
そして、面談などを行った際には記録をしっかりと取ることが重要です。ただ、面談をしながらメモを取っていると取調べのようになってしまうので、それは止めた方が良いと思います。もちろん、進路希望などメモを取った方が良いこともありますが、メモをしない方が生徒は話しやすい、ということはあると思います。
それから、過去志向ではなく未来志向の言葉を掛けられると良いと思っています。
これは保護者に対しても生徒に対しても同様です。単純な例ですが、遅刻した生徒に対して「何故遅刻したのか」「どうしていつも遅刻するのか」「この前注意されたばかりでしょう」。これらは全て過去志向の言葉です。生徒は謝るしかありません。そうではなく、「どうしたら遅刻しないようになると思う?」と問いかけて、生徒に考えさせてみてください。「目覚ましを3つかける」とか、「親に起こしてもらう」といった単純な答えで構いません。そうした解決策が出てきた時に、それをしっかりと褒めてあげるという、未来志向的関わり方が大切です。
私達は、保護者の方に「KSOO」を止めてくださいとお願いしています。「KSOO」とは、「キレる」「責める」「怒る」「脅す」です。それを「S3H」にしてください、とお願いしています。「S3H」とは、「叱る」、「褒める」、「励ます」、「育む」です。これが、未来志向ということです。
西武台千葉 須田先生
服務・法令の順守をする、連絡・報告をする、相手の立場に立って想像力を働かせる。
この3つがあってトラブルになる先生はまずいません。それらを自分の体に沁み込ませて、教員生活を送ることが大切だと思います。
少し法律的な話をすると、公務員は「国家賠償法」という法律で守られています。それは、「故意または過失で相手に損害を与えた場合、国または公共団体がこれを賠償する」ということです。ただし、「公務員に故意または重大な過失があった場合は、国または公共団体はこれを求償できる」という規定もあります。国や公共団体が支払った分を、後で個人に払わせることができるということです。
ただ、実際に求償されている人がいるかと言うと、調べてみてもほとんどそういう人はいません。それくらい、守られているということです。
では私学はどうかと言うと、私学の教員は公務員ではないので国家賠償法は適用されません。
ですから学校に損害を与えるような不祥事を起こした場合には、責任を負うことになる可能性があります。
もっとも、それほどびくびくする必要はありません。
最終的には社会通念上問題がなければ、裁判等の争いになっても心配することはないと思います。
しかし「土佐高校事件※」以来、教員の安全配慮と予見可能性、注意義務については年々判断が厳しくなって来ているように感じますので、私たちも意識してゆく必要があります。
※1996年、校外でのサッカー大会の試合中に落雷事故に遭い、一命をとりとめたものの重度の障害が残ってしまった。その生徒と家族が引率教諭の注意義務違反等を根拠に損害賠償請求を行なった出来事。
― こんな時はどうすべき?状況別対応方法
生徒がカンニングしたとき
学校(生徒指導部)でルールが決まっているはずなので、それに従って共通の行動をとります。客観的に見て、確証となる物、事柄は確実に押さえて下さい。また、試験監督の場面では、絶対に隙を見せないようにすること。
対応のポイント
①生徒にきちんと認めさせる
②認めた際は、自分の口から、どんな方法でカンニングをしたかを言わせる
③なぜカンニングしたのか、その理由を具体的に説明させる
④カンニングをした時、どんな気持ちだったか
⑤友達の目が気にならなかったか、問う
⑥カンニングが発覚した時、どんな気持ちで何を考えたか、問う
⑦親に知られて、どう感じ、どんなことを考えたか問う
⑧親を呼び出し、親の前で、やったことを自分の口から言わせる
⑨自分の現在の気持ちや考え方について語らせる
⑩カンニングをすることは、自分の生き方に関して絶対にやってはいけない行為の一つであることを厳しく指導する(自分を大切にさせる)
異性の生徒を指導するとき
1対1の場面を作らないように努めます。やむを得ない場合もドアを開けておく等の配慮をします。
対応のポイント
①「自分の価値観と違う部分もある」という前提で、言動を制御する必要がある。異性の同僚に、事あるごとに相談することは有用。
②「何だか様子が変だな」と思った時は、物怖じせずに、その本人に確認した方がよい。「最近、先生に対する態度が変わったように思うんだけど、私の言動で何か嫌なことがあったかな?」という質問を、自信を持って、卑屈にならずにすべきである。お互いにモヤモヤしたままで過ごしていても、何の解決にも結びつかない。
③教育関係図書の中に、女子校、男子校についてのものが多々あるので、そこから知見を得て、自校の現状に合致する指導方法を構築していくことも有意義である。
LINEやtwitterなどSNSツールで繋がる申請が来た
メール等が原因のトラブル、不祥事が多いため、公立高校では生徒とのメール等は管理職の許可を得ることの指導がある。許可を得て最小限にとどめるのが適当です。私立学校でも同様でSNSツールの申請は承認しません。
例外として・・・
長期欠席や極度の緊張症の場合には、SNSツールをうまく使うことも一案である。
ただし、その場合には言葉の使い方に充分に注意し、生徒の立場に立って、その言葉をどのように受けとめるか、さまざまな角度から想定してから送信する。SNSツールのやりとりについては、時系列に保存しておくことが必須。自分の言葉に矛盾を生じさせないように、適当な時期に振り返りが必要である。
常識が通じない保護者の方には・・・
管理職とすぐに相談の上、教育上譲れない線はきちんと丁寧に説明し後退させない。対応は学年主任等にも立ち会いを願い、必ず複数で行う。
対応の際のポイント
①保護者は今、7態様(支援者、見学者、一員、モンスター、ヘリコプター、カーリング、毒親)のどのレベルになっているかを把握し、その特色を踏まえながら対応する
②組織で対応する。一人で対応せずに、学年副主任、学年主任、主幹、教頭、副校長などと共に、対応する。
③学校は社会性を養う場でもあるので、学校におけるマナー、ルール、規範意識、道徳性については原則として、自校の教育理念は譲らない。
④どんな生徒でも、長所を褒めることを忘れない
⑤校内でのことなので、生徒と教員で解決するという根本理念に立ち戻ることを忘れない