セミナーレポート

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2016.09.11

グローバル教育推進校が重視する採用のポイントはここだ

平成28年9月11日(日)午前開催
教員人材セミナー キャリアビスタセミナー

講師·学校紹介

佼成学園女子中学高等学校 教頭 宍戸 崇哲先生 (以下 宍戸先生 佼成学園女子)

本校は東京都世田谷区にあり、中高一貫にて女子教育を行っております。2000年には英語でのイマージョン教育を開始し、2004年には特進留学コースを設立しました。こちらが本校の教育の根幹となっています。2013年にはロンドン大学のSOAS校と業務提携しました。その後2014年に、SGHに選ばれました。なので今年で認定から3年目ですね。更に2015年には、シドニー大学とも業務提携を行いました。

本校ではSGHに対し、3つの柱があります。一つ目が2年前に作ったスーパーグローバルクラスですね。特進文理コースの一部として新設しました。1年次にリベラルアーツ、異宗教を学ぶなどを行っています。国際情勢に通じる人をお招きして事前学習をします。2年次にはタイでのフィールドワークを実施します。バンコクの大学やチューマイ大学にて行います。3年次にはこれらの結果をロンドン大学のSOAS校にて論文発表します。二つ目が留学コースです。こちらは14年目です。1年次の終わりから2年次2学期までニュージーランドにて学びます。とびぬけた英語力が身につきます。3年次にはシドニー大学で研究発表を行います。三つめは一般の生徒にも国際化してもらう取り組みです。日本とスリランカの青少年交流、こちらは年間に20人程度ですね、ホームステイにて交流します。次に中国宗慶齢基金会主催のサマーキャンプです。こちらは日本代表として参加しました。本校とICUのみが参加しておりました。また、修学旅行です。研修旅行後に残りたい生徒は1ヶ月残ります。ニュージーランドに3ヶ月いる子もいます。このように、生徒を支えながら行っています。

佼成学園女子中学高等学校 HP

富士見丘中学高等学校 国際部長 佐藤 一成先生 (以下 佐藤先生 富士見丘)

本校は渋谷区笹塚にあり、昭和15年に昭和商業実践女学校として設立し、昭和23年に富士見丘中学高等学校と名前を改めました。孔子の「忠恕」、真心や思いやりといった意味ですね、こちらと「国際性豊かな若き淑女の育成」を教育理念としており、国際教育と環境教育に力を入れてまいりました。UAEで開催されたザイード未来エネルギー賞では、グローバルハイスクール部門のアジア代表になりました。

SGHは指定されて2年目になります。サステイナビリティ、つまり持続可能性という観点から社会課題をとらえ直し、海外の人々と対話を行うのが本校のプログラムです。環境とライフスタイル、災害と地域社会、開発経済と人間という3つのテーマで課題研究を行うため、高校1年次に「サステイナビリティ基礎」、高校2年次に「サステイナビリティ演習」という授業を開講しています。「サステイナビリティ基礎」の授業の特徴は3つ挙げられます。まず教科横断型授業。主に社会、英語、理科の先生を中心に、チームティーチングを行っています。次に海外生徒との交流です。ICTを使用したグローバルワークショップを年8回行います。3つ目は、研究についてのモチベーションを高めるための岩手県釜石でのフィールドワークです。このような学習を経て、30人程度が「サステイナビリティ演習」に進み、大学の研究室と連携した授業とマレーシア、台湾などへの海外フィールドワークを行います。こういった、学校内のみでは終わらないプログラムが特徴です。

富士見丘中学高等学校 HP

法政大学女子高等学校 副校長 河合 知成先生 (以下 河合先生 法政大学女子)

本校は大学の付属校であり、受験に対するプレッシャーが少ない利点があります。また、付属でありながら、他大学を受けても同法人の大学への進学が保持されます。学校の気質としては、服従を迫らないと言いますか、自由です。本校の教育は、女性が良き妻良き母たれと言われていた時代から、その枠を出て自由な発想で考えたことを体現すべきとする教育です。生意気な人を育てるのがポリシーです。自分の帰属する集団、日本人であったり高校生であったり、そういった枠の中に安住しないで欲しいわけです。もうすぐ共学になりますが、今までの言葉「女性である前にまず人間であれ」はこれからも、「なにかである前にまず人間であれ」に置き換えられます。社会の設定した枠の中で考えるのではなく、自分の頭で考えられる人を作りたいのです。

SGHの取り組みはグローバル人材を育てる取組みです。そういう教育の開発を文科省から委託されることがSGHの指定を受けることです。本校では、“持続可能な社会の実現を担うグローバルリーダー”を育てることとしていますが、それを「持続可能な社会」の実現を三つの領域に分けて扱います。異文化の人とどう一緒に生きるか、自分のキャリアを世界の中でどう展開できる可能性があるか、と環境の維持、の三つです。テーマは生徒が自由に選びます。課題を自分で見つけて、答えも自分で見つけます。学校が課題を与えるのではないのですよ。学校が課題を与え、生徒が持ってきた答えに対して、それが正しいとかそうでないとかを言うような、そういう教育ではないのです。生徒が他人に説明し、提言する能力を身に付けるのです。そういう能力が“グローバル人材“には必要であると考え、SGHプログラムを行っています。1年次には好きなところに行って調査して、考えて、解決方法を提言します。2年次にはそれらをより抽象化し、学術的な後ろ盾をもって何が提言できるか考えます。

法政大学女子高等学校 HP

=パネルトーク開始=
― なぜSGH認定を得ようとしたのでしょうか?

宍戸先生 佼成学園女子

設立理念である「平和社会で役立つ人間を育成する」ということと、国の目指すグローバル人材の育成という目標が一致したことが大きな要因です。本校では、留学クラスをとても大切にしています。このクラスでは生徒は1年間厳しい状況に置かれるんですよ。知らない国に行き、ホームステイをする。日本の家庭教育とは違う部分もあります。日々課題を解決していくような事柄が、SGHの中で育成されるべき能力として非常に大きく設定されています。そういった国の目指すものと、本校の目指すところが一致したからですね。

佐藤先生 富士見丘

教育目標である「国際性豊かな若き淑女の育成」を推進するため、課題解決型の教育を活発にしなければと考えていました。今後グローバル社会の中でその動きを加速させていかなければならない、という思いがあり、国際バカロレアの導入も検討していたのです。しかし、SGHで国がやろうとしていることと、本校がやろうとしていることにはとても近いものがあり、また国際バカロレア導入には多額の費用もかかるため、SGHの方にアプライしたのです。

生徒に主体性を持たせる課題解決型の授業を行っていくことが大事だという共通認識はありましたが、大学受験のためには従来型の受験指導が必要だという教員もいました。後者のような教員にも、新しい教育に積極的に取り組んでもらう、後押しにするような形でSGHの活動を始めました。

河合先生 法政大学女子

従来型の教育は行き詰っています。それは必ずしも日本だけのことではありません。知識を教えて、それを受け取った人に理解させるという教育は、もう通用しません。

日本で言えば、貧乏だった時代からの脱却として、効率よく物を作って売る必要があった。それをするための、つまり、与えられたやり方に服従して仕事をこなす人を育てる教育はもう終わりです。これからは、設計の段階で知恵を使う時代。未来的思考を育てる教育に変えていくことが大事なのです。SGHという取り組みを国が行ったのは、そういう状況を見越してのことです。現状にあって必要なテーマであったから、本校も取り入れました。今、教育を180度変えることが必要なのです。国際バカロレアという言葉が佐藤先生から出ましたが、本校は国際バカロレアにも取り組んでいます。今は候補校の段階ですが、2018年度からは認定校となります。これは本校の「変えるしかない」という決意の表れです。

― SGHに認定されたことによりどのような変化がありましたか?

佐藤先生 富士見丘

本校ではすべての教員が、教科横断型の授業に関わるようにしていて、授業の開発に取り組んでいます。そのため、かなりの変化が生じています。他教科の先生と授業のやり方や成果の目標について話し合う等、教員同士の教科を越えた話し合いが増えました。従来の国際交流は英語科の教員がかなりの負担を強いられますが、現在のフィールドワークには理科や社会科の問題も絡んでくるので、様々な教員がプログラムに参加します。他の教員も積極的に関わらなくてはならない環境になっています。

河合先生 法政大学女子

アクティブラーニングという言葉を最近よく聞きますね。これは本来、当たり前に出来るべきものなのですが、出来ていないのが現状なのです。そんな実情を変えなければならない。「どう思う?」と投げかけることは、教員にとっても、そしてそれに慣れていない生徒にとっても、チャレンジングな取り組みです。そういうことが浸透しつつあることは、よい変化だと思います。訊ねられ、考え、説明することが、「楽しい発見」と思わせられればベストですね。

宍戸先生 佼成学園女子

子どもたちは座学で知識偏重型の教育を受けてきました。SGHになることでアクティブラーニングができ、プレゼンテーション能力が向上しました。また、自分が培ってきた知識を使って、課題を解決していく能力も上がってきています。タイへの引率の際に、生徒の質問力の向上を感じました。事前学習での知識もありますが、それ以上に専門的な質問が出来るようになりました。これらがアクティブラーニングの指導の結果として挙げられるかなと思います。教員サイドでは教科横断型という言葉も出てきておりますが、しっかりと腰を据えてやらなければならない状況ができています。英検まつりという行事も行っているのですが、数学科の教務主任が主体となっています。体育の先生は、生徒の指導をしながらご自身でも勉強しております。14年ばかりやってきているので、元々の活動をベースに教科を越えて、今は全校レベルで行っています。これがSGHに認定されてからの大きな変化だと思います。

― どのような教員を求めていますか?

佐藤先生 富士見丘

絶えず自己研鑽ができる人ですね。授業の研究に終わりはありません。生徒たちにきちんとした授業を提供しようという自己研鑽の意識を失わないことが重要です。また、生徒の命や人生を預かっているのだという責任感も必要ですね。

さらには、チャレンジする姿勢も大事です。我々は生徒にこれから生きていく力を身につけさせなければならないのです。先生は自ら課題を設定し解決するように、生徒のロールモデルとしての姿を意識してください。また、現在の本校の環境で必要とされているのは、英語科でなくとも海外の人との会話を嫌がらない方ですね。本校では理科の授業もネイティブの先生と組んで行います。資格は特に定めていませんが、ネイティブとのコミュニケーションを大事にするような姿勢をもっていただきたいです。

宍戸先生 佼成学園女子

アクティブラーニングはもちろん、コミュニケーション能力も当然必要です。私学はどんどん企業の取り組みに近づいています。受け身ではいけません。イノベーティブに、クリエイティブな姿勢であることが必要です。教員の仕事は、授業は部活、入試指導だけでは成り立っていかない部分があります。そこのところの認識をしっかりとお持ちいただくことです。

また、教員は非常に高い専門知識を持っている方が多いです。中には、コミュニケーション能力という面ではなかなか理解が難しい方もいます。会社に勤める時も同じですが、想像力を働かせ、相手のことを考えて業務を遂行する力が重要です。

河合先生 法政大学女子

今までの学校との比較で言うと、以前、学校とは、非常に閉じた世界だった。学校という塀の中に生徒たちを押し込めて、偏った社会を作っていた。そこだけで通用する独善があり、それがある種の気持ち悪さを生み出していました。今は壁はありません。むしろ、壁があった時点でその教育は失敗です。学校の先生がその中で威張っていてはもちろんいけません。これが正解だ、と知ったかぶりをしてはいけないのです。重要なのは、生徒と一緒に考えられる人かどうかです。単に寄り添うだけでなく、学んでいることが楽しいと思える人が良いですね。

従来型の教育と新しい教育、とよく言われますが、従来型の教育のどういった部分を変えていかなければならないと思うのか、自分で説明する責任を求められます。皆さんは、そこに注目して時間を過ごされると良いのでは、と思います。

― 教員を目指す方へメッセージをお願いします。

河合先生 法政大学女子

人のやり方を理想にして、そのやり方をなぞるような就職活動は、率直に言って、損だと思います。自身に価値を作っていってください。自身が丸裸になって、正直な状態になった時に、良い成果が出るのではないかと思います。

佐藤先生 富士見丘

SGH3校ということで、新しい形の授業や従来通りではない取り組みを話してきましたが、SGH校以外の学校も変わっていかなければならない時代です。学校教育は変化が遅いと言われていますが、我々の変化が遅いと、その後の子どもたちの世界が閉ざされてしまいます。世の中の変化に敏感であってほしいと思います。

宍戸先生 佼成学園女子

今は、より新しい取り組みが求められる時代になっています。SGHの取り組みを通して考えることは、先生一人一人が持っている個性を打ち出していけば、新しい取り組みに対応できる力になるのではないか、ということです。選考では、そう言った部分を出していかれたら良いのではないでしょうか。