セミナーレポート

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2017.10.29

第一線の授業を知る!グローバル教育で実践される英語教育とは? 質問回答

2017/11/16
平成29年10月29日(日)開催しました、第一線の授業を知る!グローバル教育で実践される英語教育とは?の際に出ましたご質問の回答を掲載いたします。

<参加校(講師)>

啓明学園中学校高等学校   英語科主任 木幡 朝子 先生

昌平中学・高等学校     国際教育副部長・英語科副主任 戸恒 和香子 先生

八雲学園中学校・高等学校  英語教育・国際教育アドバイザー 榑松 史人 先生

Q1 英語の先取り学習をどのようにお考えですか?

榑松先生(八雲学園) 

先取り学習が日本の受験の仕組みの弊害の一つと考えています。バランスのとれた人格形成において、学年、年齢に応じた学習活動が最善だと考えます。

木幡先生(啓明学園)、戸恒先生(昌平)

先取学習は先に学ぶことがポイントではなく、戻る期間ができることがメリットとして考えています。

Q2 音読の指導はどのようにされていますか?

榑松先生(八雲学園) 

技術をマスターしなければ無意味なのと同様に、文の構造や意味が理解できても音読できなければ英語をマスターしたことになりません。授業では方法論を具体的に示し、家庭で毎日練習することを奨励することが大切です。

・教材のすべて(語句・文法・意味)を理解した上で音読させる。

・意味のかたまりを意識させ、個々のアクセントと同様にかたまりの中でのイントネーション、アクセントをに焦点をあてる。

・内容をイメージし感情を注入する。

・個々の発音よりはアクセント、音節をしっかり意識させる(発音は完ぺきを目指さなくてよい)ことが大切。

・反復練習する際に何を意識(意味?アクセント?文法?等々)させるかが大切。

・家庭学習の成果を個人的に聞き、必要に応じて指導する。

(以上のように音読練習は英語学習の中で最も大切な部分として位置づけしているので、最終的には個人指導が不可欠となります)

木幡先生(啓明学園)

授業で必ず行っています。レッスン毎に穴あき本文を配り、ペアで英単語の穴埋めをしながら音読させています。

戸恒先生(昌平)

音読指導は引き出しを多く持つことが大切です。その方法次第でどの能力と音読をつなげることができるかが変わるからです。普段から10パターンくらいの音読アクティビティをしています。

Q3 英語の「なまり」はどのようにお考えですか?

榑松先生(八雲学園) 

世界中で英語がコミュニケーショ手段として使われている現実において、お互いのなまりを認識し、認め合い楽しむことこそが、英語の魅力の一つです。

木幡先生(啓明学園)

誰にでもアクセントはあるので、様々な英語を認める教育をすべきです。欧米人の英語がスタンダードではありません。

戸恒先生(昌平)

グローバル化が進む現代でどの地域でも英語を話すことでつながることができます。なまりがないに越したことはないのかもしれませんが、日本語でも同じことが言えますし、日本人の英語でも同じことが言えると思います。

Q4 中高の先生が求める小学校の英語教育とはどのようなものでしょうか?

木幡先生(啓明学園)

ある程度の単語力を持って、中学に入学して欲しいです。耳から入る英語も大事ですが、書く方も多少はやって欲しいと思います。

戸恒先生(昌平)

評価や定着は求めていません。正直に言うと、どのようなものでも構いません。スタートラインが同じならば、英語嫌いや英語落ちこぼれを作らなくて済む方法がたくさんあります。

榑松先生(八雲学園) 

個人的には小学校における英語教育には賛同できません。

学習者が初心者であればあるほど本来は教える側の英語力が求められます。小学校の英語教育だけではなく、中学以上の英語指導にも同様なことが言えます。中高の英語教育に携わり、初心者(中一)における指導がいかに大切かを痛切に感じていますが、現状は学習初心者に対して教える側も初心者を担当させる傾向があり、初期の英語学習の重要性がよく理解できていないようです。

しかしながら現実に小学校の英語教育が始まってしまっています。受ける側からの答えとしては、身近な単語、曜日・月・季節等の名詞や、鉛筆・消しゴム・テレビ・携帯・本等々の誰もが持っているもの等々できるだけたくさんの単語を覚えさせることを望みます。

余計なこと?は安易に教えて欲しくない思いが強いです。

Q5 生徒の英語学習へのモチベーションを上げるものは何でしょうか?(先生方の経験に沿ってお話しください)

榑松先生(八雲学園) 

学習するうえで最も大切なことです。進学・進級の目的以外に英語を学ぶ価値があることを英語を話したり、書いた聞き取ったりすることが可能になればなるほど自分を取り巻く全ての環境(人間関係、視野、世界観)が広がります。

私の場合は、アメリカでの高校生活(1962-1964)、訪問した国や人々のはなし、自分で撮影した動画や写真、海外からの英文メール等々、私の話を聞いて「英語を勉強したい」と思わせる機会があれば話題にします。またネットや英字雑誌、新聞記事等から話題を提供することもモチベーションを高める方法だと思います。

また、所属しているRound Squareのネットワーク(50ヵ国180校)を利用して海外の生徒と接する機会を校内において設けることが一番のモチベーションを高める手段だだと実感しています。

木幡先生(啓明学園)

外国人との交流において、自分の意思が伝えられなかったときに、もっと英語の力を伸ばせると思う生徒が多いのではないでしょうか。

戸恒先生(昌平)

アクティブな授業をしたときに少しのよいところも見つけてほめる、海外とのつながりを作り実際に使わせる等の成功体験は重要かと思います。また、日常からの環境作りを心がけています。授業は生徒がわかるレベルで英語を進める、いつでも(授業外でも)英語で話しかける等の英語を使う環境を教員が作ることは非常に効果的で、生徒が英語を使うとき感じる壁を低く、最終的にはなくすこともできます。

Q6 音声と文字に関して工夫していること(榑松先生に質問がありました)

榑松先生(八雲学園)

人が自分の思いを表現する際、大きく分けて文章表現が得意の人と口頭表現が得意な人に分かれるような気がします。英語の音が気に入って英語が好きになった小学生は少なくないと思いますが、中学レベルで文字が導入されると、理解度を試す手段としては筆記試験ということになり、点数化されると苦手意識が生まれ実力差が見えてしまいます。もちろん逆のパターンもありだと思いますが。

この現実を踏まえて初期(中一)の指導においては、私の恩師でもある松香洋子先生が日本で35年前に初めて取り入れたフォニックス学習法を取り入れることをお薦めします。(八雲学園では残念ながら取り入れていませんが)。35年前には日本では珍しがられていたこの指導方法は、現在では多くの指導者が取り入れているほど学習方法として多くの先生方から認められています。

高校レベルの指導においては、音読練習で意味のかたまりで読めるようになったら、かたまりで書かせるようにします。あくまでも音声→文字の順番で練習させ、個々の単語を繰り返し書く作業よりも意味のかたまりを音声的にスムーズにできるようになったら書く練習をさせます。