セミナーレポート

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2015.11.12

最先端の通信制高校”サイバー学習国”とは!?

平成27年11月12日(木)開催
教員人材センター キャリアビスタセミナー

今回はセミナーの内容から、「女子教育の特徴」について掲載いたします。

自己紹介~明聖高等学校との出会い~



明聖高等学校 校長 花澤 悟史 先生
明聖高等学校 HP

教員としては専修学校の勤務から始まりました。約20年前の専修学校では高校を中退した生徒や不登校の生徒など一般的な学校ではなかなか預からない生徒が在籍していました。
その後専修学校に携わりながら、通信制学校の開校に携わりました。

専修学校のエピソードとして、勤務初日がスキー合宿で、移動のバスに私一人が乗る事態が起きました(理事長が、勤務始めたての私がいわゆるヤンキーたちの前でどう対応するかを見たかったという狙いがあったようです)。私も生徒もお互い初対面でざわつく中、何を話したか細かく覚えてはいませんが、その当時の私の培ってきたことを全てさらけ出した記憶があります。

その後理事長室で「このまま働いていくか」と質問されたことは今でも覚えています。

亡くなってしまいましたが、このような厳しい理事長に育てられたことはうれしく思っています。

本校はネットでの教育を行っています。恐らくそのことに賛否があるかと思います。

私の考えとしては教育に正解はないと思います。「どれも正解」だと思います。だからこそ、自分が何を伝えたいのかをしっかり持ち、生徒たちにアウトプットしていくことが大切だと思います。

時代が変わろうが、世の中の何が変わっても、その時その時に大切だと思ったことを真剣に伝えていくことが重要だと考えています。

柔軟な教育ができることが通信制の特徴~通信制高校の基礎知識~

●通信制高校とは

全日制、定時制、通信制課程があります。全日制は文字通り午前から午後に生徒が学校へ通う形になります。定時制はある一定の定時に生徒が通うことになります。ひと昔前は夜間が主でしたが、現在は3部制(午前·午後·夜間)や中間定時制(昼間の一定の時間)と幅が広がっています。



通信制課程ではレポート(添削指導)、スクーリング(面接指導)、テストが教育課程となっています。この3つをやることで単位を取得することができます。レポート、スクーリングの分量は、学力がある程度ある子だと2週間程度でできる分量になっています。もともとの通信制の成り立ちは社会人や主婦の方などが学ぶことを考えていました。現在は高校生年代が主となっていますが、学習指導要領としてはこの分量で単位が取得できることになっています。先ほど教育に正解がないと話しましたが、通信制課程の場合は「こういうことを学校でやりたい」が全日制と比べてやりやすいです。柔軟な教育課程の中で通信高校は特色を出しています。

●通信制高校のタイプ

まず、従来の通信制タイプがあります。これには、一般的なスクーリングタイプ(何曜日と決めたりしながらスクーリングを行う)や集中スクーリングタイプ(夏などに集中してスクーリングを行う)、ネット学校タイプ(ネットでバーチャルの学校へ通学し、通学回数をできる限り減らす)があります。

次に通学制スタイルとして、全日制スタイル(週5日通学する)や選択登校スタイル(週何日か決めて通う)があります。

全日制スタイルはいわゆる全日制高校に行けばいいじゃないかという疑問が浮かぶかもしれませんが、不登校だった生徒が高校から通いたいと考えた場合、全日制高校の場合は学校に“通わなければならない”状態となります。そこで生じる負担を避けるために全日制スタイルを選ぶ生徒もいます。

さらに、募集の形態として、広域制と呼ばれる認可を受ける段階で募集する範囲を決めるもの、狭域制と呼ばれる認可を受けている県と近隣の県から生徒を募集する学校があります。最近は広域制の通信高校が増えています。

生徒に合わせた学習を徹底する

●明聖高等学校について



千葉駅が最寄り駅です。千葉県初の私立通信制高校として、2000年に開設されました。全日制、通信制、WEBの3つのコースがあります。生徒数は734名、卒業生数4200名です。2015年度から広域の通信制になりました。

学び直しの支援であったり、不登校生徒へのサポートも行ってきました。近年5年間の卒業率は97%、進路決定率は昨年度が88%でした。県立の通信制高校の卒業率は4割程度なので、高い割合で卒業をさせていることになります。

●設置コースについて

WEBコースは「サイバー学習国」、平成28年4月から始まる「サイバーアカデミー」があります。アカデミーは趣味や資格がネットで取得できるような仕組みになります。年間4回登校をし、それ以外ではWEBで授業動画を見ることで学習していきます。

全日制コースは週5日制で、7割程度が中学のとき、不登校の子です。学校に適応し、最終的には社会に適応できるようになることが目標のコースです。不登校の子へのサポートをし、基礎学力をきちんとつけていきます。学校オリジナルテキストを作成し中学の学び直しをやっています。

通信コースは、月2回のスクーリング、そしてレポートを定期的に提出し、添削を行います。年1回の単位認定試験を行うことで単位を認定します。

学内には部活もいくつかあり、公式野球部やテニス部、バスケ部などは全日制の子たちと同じようにやっています。通信制の学校で部活をやっているところは少ないですが、本校では全日制の生徒と一緒に行います。

●学習支援について



不登校生徒へのサポートとして、カウンセラーの資格を全員取得しています。資格がなくても務めることはでき、入職後に研修を受けて取得をしてもらっています。もちろんスクールカウンセラーもおりますが、日々の生徒に対応するために全職員が取得をしています。

また無理のない登校日数や時間を相談しながら決めていきます。段階的に登校支援を行うことで、生徒が学校に無理なく来ることができるように配慮しています。3年間かけて決められた日時に登校できるように心と体を作っています。

集団が苦手な生徒のために、個別学習室を用意しています。また、何かあったときのために、夜間保護者相談室を作っており、夜でも出来る限り保護者の相談を受けられるように体制を作っています。

●WEBコース(サイバー学習国)

不登校や引きこもり、悩んでいる子を何とかしたい、ということを毎日大真面目に考えました。実際、年間20日間でさえも通学することが厳しいという子たちもいます。この子たちが一歩踏み出せない中で、垣根を取り払いたいという思いから、サイバー学習国をつくりました。すぐに変化はしなくても、何かのきっかけになればと考えています。

開発の中心になったのは20代の教員たちでした。

実際、小学5年生から引きこもり、中学3年間カーテンもあけていなかったような子が本校を受験しに来てくれました。夏のスクーリングの時に、この子は教室に入って1人で授業を受けてくれました。いろいろな人のフォローで授業に行くことができ、楽しく過ごすことができたみたいです。きっかけは何でも良いので、0から少しずつでも成長してくれればと思っています。そのきっかけのためのコースです。基本的にはWEB上で動画授業を見て、そのあと確認テストを行い、一定の合格点をこすと出席扱いとなります。ソーシャルゲームのような工夫をしたり楽しく参加できるようにしています。

行動から変えることが大切

●求められる教員像

5つの点を挙げます。1点目は先生になるのが目標ではなく(なってしまったら達成してしまう)、どういう教員になりたいのかという目的を持っている人かどうかです。その目的が2点目の「どういう教育をしたいのか」になります。自分の教育ビジョンを持っているかどうかです。持っていると教員として悩むときでも自分で打開できます。3点目はなかなか難しいことですが、自分を理解している人。自分は何が得意で何がダメで人からどう見られているかということを理解できる人です。生徒から見たときに自分の思いとは違うように見られている場合がよくあります。

4点目は多チャンネルをもつこと。いろんな幅がないと学校では対応できません。「価値観のチャンネルを合わせる」(NPOスチューデント・サポート・フェイス代表 谷口仁史さんの言葉)という言葉を聞いたことがあります。谷口さんは小学生なら小学生のチャンネルと合わせる、お母さんならお母さんのチャンネルと合わせることができる方でした。このようなことはなかなか難しいです。どうしても自分が出てしまいます。生徒と対応するとき、保護者と対応するときに自分のエゴが入ってはいけないと思います。そのため「チャンネルを合わせる」ことは大切だと思います。

5点目は「○気」です。例えば本気、根気、勇気、元気などいろいろあります。子どもに本気で向き合わないと、子どもに見透かされます。逆に格好つけたりしても痛い目にあってしまいます。

これらを身につけるためには、1点目、2点目は自分で変わることができます。3点目~5点目は他人との関わりからでないと生まれません。

ウィリアム・ジェームズという心理学者の言葉に「心が変われば行動が変わる」がありますが、まずは行動を壊さなければ何も変わりません。例えば何かいい話を聞いて「よかった」と思っても何も変わりません。今の自分自身の行動を変えるということがとても大切です。例えばコミュニケーションが苦手な人は近所の人に挨拶を必ずするとか様々です。何かを変えないと何も変わりません。ぜひみなさんも様々な人と出会って、様々な経験を積んでください。