セミナーレポート

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2015.09.13

私立各校の教員採用責任者に聴く~教員の仕事が全てわかる!~

平成27年9月13日(日)PM開催
教員人材センター キャリアビスタセミナー

講師・学校紹介

逗子開成中学校・高等学校
事務長 岩佐 直樹 先生
(以下 逗子開成 岩佐先生)

もともと日暮里の開成の分校として1903年に開校しました。環境が豊かな場所、東京からも通える場所ということで逗子に開校いたしました。神奈川県では一番古い男子校になります。

110年ほどの歴史がある学校です。昔はいわゆるバンカラでスポーツが強い学校でしたが、およそ30年前に本校の卒業生であり、徳間書店の初代社長である徳間康快先生が校長・理事長になられてから大改革を行い、現在の学校の体制になっております。

現在では例えば中学生全員にヨットを行ったり、映画を見たりなどの情操教育に力を入れています。また大学進学にも力を入れています。

生徒数は1600名ほどで高校入試は実施していません。

逗子開成中学校・高等学校HP

専修大学松戸中学校高等学校
校長 小泉 毅 先生
(以下 専修大松戸 小泉先生)

高度経済成長期の人口増加の影響もあり、松戸市の要請もあり、昭和34年に専修大学の付属として開校しました。その後平成12年に中高一貫になりました。中学生500人、高校生1300人、合わせて1800人程度の生徒数の学校です。

建学の精神として「報恩奉仕」、いわゆるボランティア精神を掲げています。昭和38年からは「小さな親切運動」に全国で初めて団体(全教職員・全生徒)加入し、「小さな親切運動推進委員会」を校内で運営しています。

専修大学には1割ほどが進学し、残りの9割は他大学に進学します。

文武両道として、今年初めて甲子園にも出場しました。

グローバル教育にも力を入れており、アメリカの学校と中高でそれぞれが姉妹校をもち、ネイティブの教員も現在6名在籍しています。(平成28年度は7名)

専修大学松戸中学校・高等学校HP

=パネルトーク開始=
― 新任の教員に任せている仕事は?

逗子開成 岩佐先生

本校ではまず講師としてご勤務いただき、その後に専任として採用させていただきます。

新人の方を例にとると、専任になった後は、クラブ活動は必ず担当いたします。ただし本校では複数顧問制をとっているため、一人でクラブ活動の業務や責任を負うわけではありません。その他委員会をお願いすることもあります。

教員をされている方の中で、授業や生徒と接する時間以外は雑用と考える方もいるようですが、学校の仕事に雑用はありません。全ては生徒のためになる仕事です。

またクラブ活動が好きで時間の大半をクラブ活動に費やす方もいらっしゃるようですが、教員の仕事の主となるものは教科です。その点は必ず忘れないようにと新任の方には伝えています。

また担任を担当する場合は、生徒のメンタルな部分に触れたり、保護者とも話すこともあり、幅広く対応することが求められます。

本校では定期的な研修も行っていますが、校外の研修も推奨しています。

専修大松戸 小泉先生

担任、校務分掌、クラブ活動は担当していただくことになります。

1年目の方は校務分掌の中で生徒と直接関わる機会が多い「生徒会指導」「生活指導」のいずれかを担当することになります。

学校のことを積極的に理解していただくために「入試広報」の仕事も1、2年目の先生にはお願いしています。これは自身が勤めている学校を客観的に知ることができるためです。

授業に関しては教務主任や教科主任等の先輩から様々なことを学んで頂きます。

その他部会等も通じて、自分自身で考えて動くことを促していきます。時期に応じた研修もしておりますが、手取り足取りというわけではありませんので、分からない場合は気兼ねなく先輩等に聞くようにと話しています。

いわゆる「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」はキャリアを積んだ方でも怠ると職場が滞ります。そのため、常にホウレンソウを意識していただければと思います。

― 教員の方々はどのような1日を過ごしていますか?

逗子開成 岩佐先生

本校は45分授業で、7時間目まであります。授業は15:30に終わります。教員は8:15あたりから打ち合わせを行い、8:30に担任は朝のホームルームに行きます。8:45から1時間目に入ります。本校では土曜日に授業はありませんので、8時間目を行う曜日もあります。15:30以降はホームルームを行い、16:00くらいには補習授業やクラブ活動等になります。19:00まで残る方もいらっしゃいますが、すぐに帰る方もいます。中には遅くまで残る方もいますが、できるだけ早く帰宅するように促しています。

遅くまで残っている方が仕事をしている、早く帰る方が仕事をしていないと思われることもありますが、そうではありません。てきぱきと仕事をしていただくように心がけていただければと思います。

専修大松戸 小泉先生

中学校と高校の一部の生徒は8:00登校で、その他の高校生は8:30登校になります。中学の職員の朝礼は8:00に行います。高校は8:30に行います。それぞれ10分後にホームルームが行われます

中学、高校の職員室は別々でありますので、各教員はそれぞれで朝礼を行います。

本校も45分授業です。昼休みでは生徒の活動に参加したり、校務を行う場合もあります。6時間授業の日と7時間授業の日があります。それぞれ14:45、15:40が授業終了時間ですので、その後にホームルーム、掃除を行います。放課後には必修講座という70分~90分の講座や、希望制の一般講座を実施し、クラブ活動を行います。また曜日により教科会や学年会などの会議があります。

中学生は17:30に完全下校です。その時間になると中学の教員は教室を回り下校を促します。高校生は18:50に校内放送(ドヴォルザークの「家路」)を流します。生徒は放送を聞くと自主的に下校します。

その後は授業の準備をする方もいれば、帰宅する方もいます

― 勤務する上で気をつけて欲しいことは?

逗子開成 岩佐先生

私立と公立は大きく異なります。公務員と民間のサラリーマンと言えるかもしれません。また私立は1校1校すべて異なります。設立の背景も異なれば、男子校や女子校、宗教系の学校もあります。

まずは自身が働く学校をよく知って下さい。ミッション系の学校に勤務しているのにキリスト教に理解がないのでは働けません。

しかし応募するときに学校のことを理解し、自分に合っているかは分からない部分も大きいです。勤務していくうちに理解し、学校を好きになっていくようになってほしいと思います。勤務開始直後はまだそうではないこともあるかもしれませんが、生徒の前では学校の批判などはしてはいけません。生徒はその学校に来たくて試験を受けて来ています。同様に他の先生の悪口や噂話も生徒には言ってはいけません。

小泉先生が話していらっしゃいましたが、「ホウレンソウ」は大切です。学校では校長や教頭などの管理職を除けば明確な上司はわかりにくいかもしれません。しかし学校には「○○部部長」「○○部主任」など役職があります。組織として必ず上司に当たる先生には報告等を行ってください。学校は組織で生徒を育てていきます。中には先生が一人で問題を抱え込んでしまう場合もあります。しかし学校の問題は先生個人でなく、組織で対応する問題です。ある特定の生徒一人の問題だとしても組織で対応します。

入試広報・生徒募集はいわゆる営業と思って遠慮する方もいらっしゃるようです。しかし、小泉先生のお話にもありましたが、自分が務める学校のことを知ることができる機会になります。生徒あっての学校です。各私立の創業者は強い理念を持っていることもさることながら、それを広めて生徒に入学してもらう努力を惜しまなかった方々です。入学を考えている保護者から様々な質問も投げかけられる対応が難しいと思うことがあるかと思いますが、ぜひ行ってほしいと思います。

専修大松戸 小泉先生

大きく4点あります。1点目は「授業優先」です。来客対応や会議中だとしても授業の時間には必ず授業を行います。2点目は「分かる授業の追及」です。これは新人の方でも10年、20年の経験がある方でもこの姿勢を持っていただきます。時代や生徒が変われば分かりやすさも変わります。授業力アンケートも実施し、自己研鑽の参考として各教員にフィードバックしています。3点目は「現場主義」です。生徒とともに行動するという意味で、生徒が活動するその場にいて下さい。少し離れて様子を見るのではありません。

4点目として分からないことは聞くことは大切ですが、すぐ聞くのではなく「自分で考えたうえで、聞く」ことを大切にしてください。

― 教員を目指す方へメッセージをお願いします。

逗子開成 岩佐先生

私学の先生は「私学人」と呼ばれます。まずは自分の勤める学校を好きになって欲しいと思います。生徒、保護者も含め関係者はとても学校が好きです。

おそらく、学校が好きな先生に出会えた生徒はとても幸せだと思います。皆様もそういう学校に巡り合えることを祈っています。

専修大松戸 小泉先生

生徒に「夢を持ちなさい」といいます。その時「自分の夢は何だろう」と考えるときがあります。先生にはぜひ自分の夢を持ってほしいと思います。それは先生としてではなくても構いません。事の大小問わず、生きている限りは「自分はこんなことをやりたい」を持てると素晴らしいと思います。