セミナーレポート

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2015.10.04

私立はここがスゴイ!~公立との比較から見る私立教員の働き方~

2015年10月4日午後に開催いたしました、教員研修に関するセミナーのレポート後編です。
今回は、大妻嵐山中学校・高等学校 校長 真下 峯子先生のお話をまとめさせていただきました。

講師・学校紹介

大妻嵐山中学校・高等学校
校長 真下 峯子先生

大妻嵐山中学校・高等学校 HP

教員の仕事とは何かというと、私は、子どもたちの成長を見て嬉しいと感じることだと思います。

私はとにかく理科が好きで、それを子どもたちに伝えたいとの思いから教員の道を選びました。

埼玉県の公立学校で36年間勤め、その間に、県立総合教育センター等で行政の仕事にも携わってきました。自分が教えられる生徒の人数は限られているため、先生を教える先生になろうと思ったのです。

大妻嵐山は、今年で入職3年目です。理系の女の子を育てるというコンセプトに惹かれて志望しました。

教育は生徒の人生に深く関わるという責任の重い仕事ですが、生徒の成長を見守ることができるすばらしい仕事もあります。

当然苦しいことや辛いこともたくさんありますが、良いことが一つ二つあると、やはり教員の仕事は辞められないな、と思います。

本校は、埼玉県の北西部にあります。県外から通っている生徒もいますが、基本的に地域埼玉県の生徒が多い学校です。

理系の心を育てる教育に力を入れており、医療系の学校に行きたい生徒が多いです。また、近年では「グローバルな視点を持った、科学的な心を育てる」ということで、英語力、国際理解力の強化にも力を入れています。

高校は5クラス、中学校は2クラスで、全体で600人ほどの規模です。行事は高校生が中学生の面倒を見ながら、一緒に取り組みます。

また、学校周辺の自然環境は存分に使っています。理科の実験材料を校庭から取ってくる等、嵐山の地でしかできない教育に取り組んでいます。

生徒の雰囲気は創立者である大妻コタカ先生の教えが染みついていると感じています。

とてもおとなしく、何事も真面目に取り組む子たちです。もっと元気に、アクティブになってほしいと感じてもいるのですが、そこは今後私たちが背中を押していかなければと思っています。皆素直な女の子たちばかりです。

― 公立と私立、教員の仕事内容の違いについて

公立も私立も、最低限やらなければならないことは同じです。

一番大切なことは、まず授業です。授業の質がどのくらい求められるかという点において、一般的な公立の学校よりは私立の方が厳しいと思います。

教育内容が生徒募集の一番のポイントになります。先生の授業が、評価に値するものかどうか、という点が非常に重要です。

生徒募集に関しては、本校では入試広報部がコントロールをしています。ただ、入試広報部の先生だけが募集活動をするのではなく、説明会等の対応は全職員で行います。

他に募集活動としては、塾をまわったり、小学校・中学校に行って説明をしたりしています。小中学校では出前授業と言って、実際に嵐山で行っている授業をお見せします。ちなみに、この出前授業は今年は「ORサイエンスキッズ」と題して私が中心になってやっています。

また、私立の場合、保護者との連携をより丁寧にしていかなければなりません。公立にはない、という訳ではないのですが、子どもの様子を保護者に適切に伝えて、学校と保護者とで生徒を育てるという意識を作るのです。保護者と学校が密に連携して生徒を育てるという図式を作ることは大変重要なことです。

新しい取り組みを行う、例えば大学との連携を例にとると、公立ではやっていないという訳ではありません。ただ、公立ではなかなか予算配分がつかないという難しさがあります。やはり何をするにも予算は必要です。

私立の場合は、何か新しいことを始める時、それが生徒のためになるということをきちんと説明できれば、公立に比べダイレクトにそれを実行することができます。

― 教員採用について

公立と私立では採用計画が違います。

公立は二次試験の合格発表後、特性を見て、配属先を決定していきます。生徒数の増減にを見ながら数年先までの採用計画を立てており、定年で増やすか、新任で増やすか、年齢構成を見ながら決めていきます。

私立では、採用活動は各校ごとに行います。空きが出た時や、カリキュラムの変更で不足する分を補う時などに募集をかけます。学校を変えるエネルギーがほしい、という採用もあります。専任か非常勤か、確定するのは生徒数が決まってからです。そのため一旦専任で募集をかけ、採用した方が非常勤でも良いという方であれば変更することもあります。

公立の場合は、全員まとめて採用してから、特性に合わせてそれぞれの学校に配属されます。どのような人が来るのか、正式に校長に伝えられるのは2月を過ぎてからなので、人材の見極めは難しいです。対して私立の場合は、学校に合った先生かどうかを直接見ることができます。

本校では、まずホームページで募集をかけます。

最初は書類審査です。これまでに取り組んできたことや、教育観について等、志願書に書いていただきます。今年は英語の選考があり、「本校で取り組みたいと思うこと」というテーマを設定しました。一般的な話を書いていただいてもだめで、嵐山の子どもたちをどのように教育し、育てていきたいかということを見ています。

書類選考が通った方には学校に来ていただいて、センターレベルの筆答試験と模擬授業をお願いしています。筆答試験は、できれば初見で9割は解けてほしいです。模擬授業はその場で教材をお渡しして、15分だけ教材研究をしていただきます。私たち教員が生徒役を務めますが、そんなに簡単に授業は進みません。授業に乗らない生徒や、誤った方向に進ませようとする生徒もいます。そのような生徒への対応をどうするのか、というところを見ます。

最後に、理事長面接を経て採用となります。非常勤採用の場合には理事長面接はありません。

― 教員を目指す方へ

まず教員として身につけてほしいことは、教科指導に関する深い専門性です。

私たちが生徒に伝えられるのは、身につけた専門性のほんの一部ですが、その専門性の深さを生徒は見抜きます。

そして、生徒たちのことをよく見ていただくことです。また、学校が目指していること、その中で自分が果たすべき役割は何なのかを自覚していただきたいと思います。

体力、精神的なタフさも必要です。

公立の使命は、共通した教育を生徒に伝えていくことだと思っています。

一方で私立は、一人一人のニーズを把握して、個別の教育を行わなければならない場だと思います。