学校における「いじめ」問題の報道は、いつの時代も絶えません。
中には「この学校にはいじめは無い」と、事実を隠ぺいする教員まで存在します。
いじめは、受けた側に一生消えない心の傷を負わせてしまう可能性も大いにあり、野放しにしていては決していけない問題です。
では、いじめをなくすためにはどうしたらいいのでしょうか。
本記事では、いじめの問題と予防策について考えていこうと思います。
そもそも「いじめ」とは、どのように定義されるのでしょうか。
文部科学省の「いじめ防止対策推進法」によると、以下のように定義されています。
いじめ防止対策推進法
「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」
文部科学省「いじめ防止対策推進法」
つまり、いじめられる側が「つらい」「嫌だ」と感じていたら、それは「いじめ」と定義されます。
「いじられる」「ちょっかいを出される」などの言葉がありますが、これらはあくまでやるほうが楽しいと思っているだけです。
いじめは「受け手」側の気持ちに立って考えることが大切なのです。
また、周りの児童・生徒などが、「そんなことで」と考えていると、取り返しのつかないケースに陥ってしまう可能性もあります。
さらにいじめの当事者だけでなく、いじめをすすめたり、傍観したりする行為も同様に許されないことです。
いじめにおいて傍観者の態度も問題視されているのは、大多数の人がいじめを見て見ぬ振りをすることでいじめを容認する雰囲気が作り出されてしまうためです。
このため、いじめ問題を解決するカギを握っているのは、傍観者であるとの見解も存在します。
「いじめ」という行為は、いじめられる側に重大な傷を残すだけでなく、その他のさまざまな懸念点も考えられます。
いじめによって学校に通うことが困難となり、そのまま生徒が不登校になるケースもあります。その延長で社会とのつながりが断たれ、引きこもりになってしまう可能性も大いに考えられるでしょう。すると社会に適応できなくなり、引きこもりから脱却することが難しくなってしまいます。
また、いじめによって「心的外傷」とも呼ばれる非常に強い心理的ストレスを抱えてしまうと、精神のみならず、脳の生理学的な働き全体に対し、半ば恒久的な変化を及ぼすこともあるため、誰かを信じてサポートを受けることすら拒んでしまうケースもあるのです。
受けた傷が深ければ深いほど、再起するまでに時間がかかってしまいます。
いじめはいじめられる側だけでなく、いじめる側にも大きな問題が生じます。
いじめの加害者が罰せられることがなかった場合、「何をしてもいいんだ」「誰も気付かれなければ問題ないんだ」を感じてしまう点に大きな問題があります。
相手の気持ちを考えることを学習しないままに大人になることにより、社会に出たあとにチームワークを乱す、協調性が無いなどの問題に直面することが考えられます。
また、いじめの加害者は、健全とは言いがたい家庭環境のもとで育ったようなケースも少なくありません。
そのため、いじめの加害者に対しては単に罰を与えるのではなく、健全な心を育むサポートも併用したほうが、再発防止につながるとの指摘もあります。
受け手が心理的なストレスを感じることで、中には自ら死を選んでしまう生徒もいます。
いじめによる苦しみは、いじめられている当人しか分かりません。
たとえ友達や家族が「ささいなこと」や「他に逃げ道はある」「相談してくれればよかった」と思っていても、いじめられている生徒にそれが伝わらなければ意味がありません。
そのため結果的に一人で苦しみを抱えこんでしまい、「死ぬしかない」というところまで追いつめられてしまうケースもあります。
いじめをなくすためには、まずいじめられている生徒が一人で抱えこまないようにすることが大切です。
周囲の大人、特に担任を持っている教員が予防線をはり、万が一いじめが起きてしまった場合は早急にケアを行うことが重要です。
いじめと考えられるような出来事があったら、学年主任や生徒指導の教員と情報を共有します。
その上で「いじめなのかどうか」の判断を行い、学校としてどのような対応をすべきかを考えましょう。
いじめだった場合、問題として取り上げ再発防止策を講じることも大切です。
また各学校では教育相談機能の充実を行うべきです。
被害者の心理的状況によっては、スクールカウンセラーを派遣していじめられた生徒に適切な支援を行います。
またいじめられている当事者の心理的負担をしっかり受け取り止め、本人だけでなく周りの人間から情報収集をし、事実関係の把握を行うことも重要です。
いじめを行った生徒に、一定の配慮のもと、いじめがいかに他者に傷を与える行為であるかを気付かせる指導を行うことが必要です。
また、一定期間他の生徒と異なる場所での指導計画を立てることが有効なケースもあります。
いじめの度合いが一定の状態を超えている場合は、出席停止や警察などの機関に協力を求めることも必要です。
特に暴行・恐喝などの行為を伴っている場合は、速やかに警察との連携を図るべきでしょう。
いじめの予防策として、「いじめは絶対に許されないこと」という意識を生徒に持たせる指導が重要です。
またいじめに加わったり、はやし立てたり、傍観したりなどの行為も、同様に許されないという認識を持たせましょう。
そしていじめを両親や我々教員に相談することが大切な行為であると教えることも必要です。
いじめの問題を学校のみで解決することにこだわらないことも大切です。
学校内でいじめを把握した場合、迅速に保護者と教育員会に報告し連携します。
個人情報の取扱いには気をつけつつ、正確な情報を入手・公表して保護者などの信頼を確保することも重要です。
いじめをなくすためには上記のような対応に加え、生徒の「ストレス・マネジメント」スキルを育むことも重要といえるでしょう。これは、「いじめ」に限らず他罰的な行為の多くが、行き場のないストレス発散のはけ口として行われていると考えられるためです。
いじめは、いつ起こってもおかしくない問題です。確かに、いじめの問題は教員にとっては頭の痛すぎる問題かもしれませんが、教員という立場は、いじめの問題において重要なキーパーソンです。
教員が能動的に動かなければ、いじめの問題の解決は難しいことです。
まずはいじめが起こらない環境作りを全力をあげて行うべきですが、万が一いじめが発覚した場合は、一刻もはやく、いじめをした側にもいじめられた側にも適切な対処をできるようにしておくべきでしょう。
教員人材センター編集部
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