ブラック校則とは、生徒の人権や健康を害する恐れのある校則です。髪に特徴がある場合に地毛証明の提出など、根拠や意図が分からないにもかかわらず強要されることがあり、全国的にも問題となっています。
本記事ではブラック校則とは何か、具体例と問題点、廃止に向けた取り組みを解説します。
ブラック校則とは常識的ではない理不尽な校則のこと
ブラック校則とは、一般常識とはかけ離れた不合理な校則のことです。行き過ぎた校則は、生徒個人の尊厳を傷つけたり、ハラスメントに該当したり、場合によっては健康を損ねたりする可能性もあります。
校則の性質上、生徒が選択できる余地はなく理不尽であっても従わなくてはいけない点がブラック校則の問題点です。なお、生徒心得や学校独自のルールであっても、社会的常識を欠くようなものは、ブラック校則に該当します。
本来校則はルールの理解や自制心をはぐくむためのもの
校則の原型は1873年に文部科学省より発表された「小学生徒心得」であるとされています。同心得には授業中は雑談をしてはいけないなど、常識的な11の基本ルールが定められていました。
本来の校則は、生徒社会に出る上でルールを守ることの大切さを教え、自制心を育むためにあるものです。しかし、1980年代頃問題となった校内暴力や非行の管理を目的として校則は細分化され、厳しさを増していきました。これらの名残がブラック校則の一部であると考えられます。
とはいえ、現在は当時と状況が変化してきています。校則違反に罰則を設けるなどして対処した場合、かえって生徒を傷つけ、社会や大人に対する不信感を与えかねません。
ブラック校則の例を生まれた背景とともに解説
代表的なブラック校則を例に、その校則が生まれた背景を確認していきます。なお、次から紹介するブラック校則は全国的に確認されているものです。
ツーブロック禁止
ツーブロックとは、サイドを刈り上げ、頭部の髪と段差ができるようにした髪型です。特に男性にとっては、ごく一般的な髪型の一つといえます。
しかし、東京都教育委員会が行った調査によると、都立高校だけでも、ツーブロックの禁止に関する校則は一定数あることが判明しました。[注1]
なお、禁止の理由は「外見等が原因で事件や事故に遭うケースがあり、生徒を守る趣旨から定めているもの」と説明されています。
髪型に関する校則は男女ともにさまざまなものがあります。女子生徒の場合、髪が長いときは2つ結びにする、ポニーテール禁止などがブラック校則として一般的です。
[注1]東京都教育委員会:予算特別委員会速記録第三号
https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/budget/2020/3-06.html (参照:2022-05-27)
地毛証明や頭髪届
地毛証明や頭髪届とは、頭髪が黒の直毛以外の生徒が髪の毛を染めたり、パーマをかけたりしていないことを証明するための届け出です。届け出によっては、保護者の署名捺印が必要であったり、幼少期の写真の添付を求められたりするケースもあります。
なお、地毛の髪色が明るい場合、学校によっては地毛証明に加えて、黒に染めるよう求められることもあるようです。
このような校則は、風紀の乱れを防止するとともに、事実誤認による頭髪指導を防ぐために制定されたと考えられます。
下着の色指定
靴下は白でロゴはワンポイントのみ可など、肌着の色に関する校則も複数あります。また、靴下だけではなく、下着の色を白色に指定する校則も存在します。
白色に指定する理由としては、体操服から下着が透けないため、個性を出すことでいじめにつながる可能性があるためなどとされています。
学生や学校に与える影響や問題点
ブラック校則は生徒の人権を侵害する恐れがあります。また、納得がいかないまま生徒を指導するとなれば、教員のストレスや葛藤にもつながります。
個人の尊厳を傷つける
髪色や髪の質感などは人それぞれ異なります。経済がグローバルに展開していく現代社会では、日本人だけでなく、さまざまな国籍の生徒が同じ学校で学んでいることもあります。
そのような状況で、生徒の容姿の一部である髪色を証明させたり、黒く染めさせたりすれば、人権侵害ともなりかねません。
多感な時期であれば、精神的苦痛を受ける可能性も十分にありえます。
ハラスメントにつながる
下着の色の指定では、校則違反の確認として男性教員が女子生徒の下着をチェックするなどの指導もされています。
セクシャルハラスメントといわれてもおかしくない行為であり、生徒に一生のトラウマを与えかねません。
また、校則に従わない生徒に対して体罰を行うなど、本来の生徒指導を超え教員の気分によって利用されるケースもあり、ハラスメントの温床になる恐れもあります。
教員のストレスや葛藤にもなりかねない
存在意義の分からないブラック校則は、指導する教員のストレスや葛藤にもなっています。
理不尽な校則を生徒に強いる一方で、保護者などから問い合わせがあれば必要性の説明など対応が必要です。
自身が納得できない校則を守り続けるのは、生徒だけでなく教員のストレスにもなってしまいます。
ブラック校則を変えるためには
ブラック校則の問題が全国に広がる中、東京都教育委員会は2022年4月より、ツーブロックの禁止など必要性が定かではない5項目を廃止すると決定しました。[注2]
上記のように、教育委員会が調査に乗り出すケースもあるものの、そうではない場合は校内活動の一環として校則検討会を開くのも有効です。
その際は、生徒代表や保護者、教員、PTAなどが一丸となってどのような趣旨で制定された校則なのか、現在も必要か検討するとよいでしょう。
[注2]東京都教育委員会:都立高等学校等における校則等に関する取組状況について
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2022/release20220310_03.html (参照:2022-05-27)
ブラック校則は解消に向けた取り組みが求められる
ブラック校則とは人権や健康などを脅かす恐れのある不合理な校則のことです。
代表的な例としては、ツーブロックの禁止や地毛証明、下着の色指定などが挙げられます。
こうした校則の多くは、生徒が事件・事故に巻き込まれるのを防止するため、あるいは風紀の乱れ防止を目的として定められました。
しかし、行き過ぎた校則は現在の社会状況と合致しているとは限らず、場合によっては生徒個人の尊厳を損ねかねません。
ブラック校則は、全国的な問題となっています。東京都をはじめとして、各地でブラック校則を撤廃する動きが進んでいます。
学校では、校内全体での議論だけでなく、第三者機関の活用など、ブラック校則の撤廃に向けた取り組みが求められているのです。
教員人材センター編集部
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