教育業界の現状とは?今起こっている変化や今後の動向を解説
近年注目されている働き方・学び方があります。それが「リカレント教育」です。
社会人がより長く働くため、キャリアアップを図るために、リカレント教育について理解を深めていきましょう。
本記事では、リカレント教育の概要と、近年注目されている理由について解説します。
リカレント教育とは、生涯ずっと教育と就労を繰り返す制度のことです。なお、「リカレント」は「循環、回帰」を意味します。
日本では義務教育を終え、高校や大学に進学し、就職したあとは働き続けるのが一般的です。しかし現在、同じ職場でずっと勤務し続けるケースは少なく、複数回転職をする方も珍しくありません。
あるインターネットサイトの調査では、社会人のうち半数以上が少なくとも1回転職を経験しています。
リカレント教育は転職を検討する際にも効果を発揮します。新たな知識を取り入れてスキルアップを図るため、より有利な条件を引き出す一助となるのです。
文部科学省では2019年より、大学教員になるためのリカレント教育を後押しする新事業を立ち上げており、国を挙げてリカレント教育を推進する姿勢を示しています。
リカレント教育と似たような概念に生涯学習があります。生涯学習は趣味や生きがいのために学習し続けることを含みますが、リカレント教育はあくまで仕事をするための教育です。
現在リカレント教育が注目され、推進されている背景を、4つの観点から解説します。
まず挙げられるのは、技術の進歩や働き方改革にともない、求められるスキルや技術が急速に変化している点です。今までやってきたことを踏襲しても、社会で通用しなくなってきたといえるでしょう。
教育の現場でも同様に、教員が教え方や教える内容をアップデートしていく必要が生じています。オンライン授業やタブレット端末の利用、より柔軟な発想を持たせるための教え方など、教員が向上させるべき技術やスキルは少なくありません。
リカレント教育によって新たな知識を身につけ、現場でその知識を実践し、さらなるスキルの向上へとつなげていくことが求められているのです。
現在では、定年退職後も働きたいと考える方が増えてきました。教育と労働のサイクルによって、労働期間の延長に対応していく必要があります。
日本の平均寿命が男女ともに80歳を超え、100歳まで生きることを想定した人生プランを立てる方が増えているなか、安定した老後を送るためにリカレント教育は役立ちます。
教員として定年退職したあとも学習を重ね、新たなスキルを身につけることができれば、再雇用や再就職も可能となるでしょう。
国として成長を続けていくためには、国際社会で活躍できる人材の育成や、新たな商品開発が必要です。リカレント教育は、企業や大学などの競争力を向上させる効果も期待できます。
すでに企業で活躍している人材がさらに新たなことを学習し、それを生かして仕事に励めば、企画・開発・営業などの分野でレベルアップを図ることができるでしょう。
教員の育成にも、リカレント教育は有効です。高校や大学の競争力が高まり、国内全体の教育レベルが上がっていくことが期待されます。
人材不足が深刻化している現在、定着率の向上は企業や教育機関にとって急務です。リカレント教育の導入により、より安定した運営が可能になるかもしれません。
社員・教員一人ひとりのスキルアップを後押しすれば、同じ職場で長く勤務したいと考える人材も増えるでしょう。
リカレント教育のメリットを4つ紹介します。ぜひ参考にしてください。
リカレント教育によって得られる最初のメリットは年収の増加です。
リカレント教育によってスキルアップし、業務内容が高度になれば、より多くの成果が見込めます。よって、年収の増加が期待できるのです。
専門的な仕事が行えるようになるのもリカレント教育のメリットです。
教員として働いている方の場合、より高度な内容を教えられるようになる可能性があります。企業で働いている方であれば、専門知識を職場で生かすことができるでしょう。
仕事の専門性を高めたいと考えている方にとって、リカレント教育は非常に有用な制度なのです。また、リカレント教育の教員として働ける可能性もあります。
リカレント教育の別のメリットは、より効果的に、意欲的に学ぶことができるということです。
社会人になってから、若い頃にもっと勉強しておけばよかったと感じる方は少なくありません。学生時代にはよく理解できなかったことも、大人になった今なら理解できるということもあるでしょう。
リカレント教育では、仕事のスキルアップに役立つ点を学習するため、高い意欲を保つことができます。自分が学ぶ目的や対象、さらに得られる成果がはっきりしているので、効果的に学ぶことが可能なのです。
リカレント教育は、より長く、やりがいをもって働くために役立つ教育といえるでしょう。
リカレント教育は幅広い職場・教育機関の方が必要とするため、広く人脈を持つことができます。
同業種・同業界や、似たような状況下の方ばかりが集まるとは限りません。教育を受ける者同士、よい刺激を受けられるでしょう。
仕事上のスキルを磨くのと同時に、思わぬ人脈が得られる可能性があるのです。
リカレント教育が必要とされる背景と、多くのメリットを確認したうえで、現在利用できるリカレント教育にどんなものがあるのか紹介します。
これからぜひリカレント教育を利用したいという方は、今後どのように制度が整備されていくかにも注目していくとよいでしょう。
履修証明制度とは大学などの教育機関が行っている、社会人向けプログラムの修了者に対して履修証明書を与える制度のことです。
学生ではなく、社会人を対象にしている制度なので、すでに仕事をしている方のキャリアアップのため、もしくは仕事を中断していたものの再就職を目指す方におすすめです。
学習時間は120時間としっかり学べるプログラムで、興味のある分野についての幅広い知識や技術を身につけるのにぴったりです。
履修証明制度は履歴書にも記載できます。自分のスキルをアピールするのにも最適です。
2019年から文部科学省が開始した新事業で、企業に勤務している方のなかから、スキルを身につけた人をリカレント教育の教員として大学に紹介するという制度です。
これまでビジネスパーソンとして働いてきた方も、これから教員を目指すことができる制度で、誰かを教える仕事がしたいと思っている方にとってはとても魅力的でしょう。
人工知能やロボット、女性活躍推進などの専門的な分野でリカレント教育を生かすことができるため、教員としてやりがいのある仕事に就けるかもしれません。
リカレント教育は仕事をしている社会人がスキルアップを図るために注目されているものの、課題も残っています。
欧米諸国と比較すると、日本はまだリカレント教育への理解が進んでいません。キャリアを中断して学習を行うことを疑問視する企業が少なくないためだと考えられます。
2019年8月末に行われた、人事・採用担当者を対象にしたある調査では、リカレント教育をすでに導入している企業は、わずか3%でした。社員の大学院修学を許可していない企業も多く、「リカレント教育を受けたくても受けられない」というのが現状です。
一方で積極的にリカレント教育を導入している企業もあるため、企業間の格差をなくしていく努力が必要となるでしょう。
リカレント教育の課題は、企業だけでなく教育機関にもあります。欧米諸国ではリカレント教育がすでに浸透しており、社会人向けに質の高い教育を施す機関もたくさん運営されています。
しかし、日本では専門性が高く、社会人のキャリアアップを後押しするような教育を受けられる機関がまだ少ないのが現状です。国や大学が協力しながら、教育の質を向上させていくことが望まれます。
現在国がリカレント教育を受ける社会人に対して支給する補助金がいくつかあります。教育訓練給付金や人材開発支援助成金などはその一例です。
しかし、社会人がキャリアを一時中断し、安心してリカレント教育を受けるのに十分であるとはいえません。
今後より支援制度が充実していけば、より一層リカレント教育も一般的なものになっていくでしょう。
リカレント教育は、社会人としてキャリアアップしたい、スキルアップしたいという方におすすめの教育です。
学んだことを仕事に生かすことが前提であるため、やりがいのある仕事を見つけたり、より責任ある立場に就いたりすることが可能となります。
今の仕事が好きな方も、転職を考えている方も、リカレント教育を検討しておくとよいでしょう。
教員人材センターでは、教員と私立学校をつなぐサポートができるので、ライフスタイルに合った働き方が紹介できます。教員としての働き方を模索している方はぜひ一度ご相談してみてください。
教員人材センター編集部
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