文部科学省は2019年4月より、デジタル教科書を導入しました。とはいえ、実際には一般的にまだそれほど浸透しておらず、デジタル教科書の普及は遅れているのが実情です。
デジタル教科書とは、具体的にどのようなものであり、何ができるのでしょうか。この記事では、デジタル教科書の概要とともに、必要性や課題について詳しく解説します。教員としてデジタル教科書をスムーズに使いこなすための情報として、ぜひ役立ててください。
目次
デジタル教科書とは、もともと紙に印刷して使用していた教科書の内容を電子的に記録した教材を意味します。
電子的な記録方法を使えば音声や動画も保存できますが、現時点ではそれらはデジタル教科書の定義には該当しません。
1)学習者用デジタル教科書とは
学習者用デジタル教科書とは、紙の教科書の内容の全部(電磁的記録に記録することに伴って変更が必要となる内容を除く。)をそのまま記録した電磁的記録である教材です(学校教育法第34条第2項及び学校教育法施行規則第56条の5)。このため,動画・音声やアニメーション等のコンテンツは,学習者用デジタル教科書に該当せず,これまでの学習者用デジタル教材と同様に,学校教育法第34条第4項に規定する教材(補助教材)ですが,学習者用デジタル教科書とその他の学習者用デジタル教材を一体的に活用し,児童生徒の学習の充実を図ることも想定されます。
3.学習者用デジタル教科書について:文部科学省
2019年4月に施行された「学校教育法等の一部を改正する法律」をはじめとする関係法令により、デジタル教科書が正式に制度化しました。
この中では、2020年度から実施される新学習指導要領を踏まえたうえで、小学校、中学校、高校、特別支援学校においてデジタル教科書を導入することが示されています。
そのため、要件を満たしたデジタル教科書が存在する場合、教育課程の一部においてデジタル教科書を扱うことができるようになっています。
デジタル教科書として認められるには、紙の教科書に含まれている内容のすべてを記録していなければなりません。また、デジタル教科書を使用できるのは、それぞれの教科の授業時間数のうち2分の1以下と定められています。
※参考:学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン
デジタル教科書には、さまざまな機能が備えられています。デジタル教科書の具体的な機能の例をあげると、以下のとおりです。
生徒と教員の両者にとって、デジタル教科書にはさまざまな良さがあります。具体的なメリットは、どのようなところにあるのでしょうか。
ここでは、生徒と教員のそれぞれから見たデジタル教科書の良さについて紹介します。
デジタル教科書を導入すれば、学習する生徒にとってさまざまなメリットがあります。たとえば、デジタル教科書なら、教科書への書き込みも簡単です。文字だけでなく線も書き込めるため、紙の教科書と比べても不便はありません。
一度書き込んだ内容もきれいに消せるので、書き間違えた場合はもちろん、後からまっさらな状態で見返したい場合にも便利です。さらに、デジタル教科書なら紙面の文字や画像だけでなく、音声や映像も活用して学習を進められます。
デジタル教科書単体ではなく、他の多種多様なデジタル教材と組み合わせて使用することも可能です。さまざまなデジタル教材を駆使すれば、より効率的に学習を進められるでしょう。
加えて、デジタル教科書は1つの端末で複数の教科の教科書を閲覧できます。そのため、たくさんの教科の勉強する場合も、持ち運びがしやすいです。紙の教科書は重くてかさばるのに対し、デジタル教科書ならどこへでも楽に持ち運べます。
デジタル教科書は教員に対してもさまざまなメリットをもたらします。
たとえば、デジタル教科書を使うと従来よりも生徒の視線を集めやすくなり、授業に対する集中力もアップすることがわかっています。生徒の興味をひきやすくなれば、授業の効率を一気に高められる可能性が高いでしょう。
デジタル教科書ならそれぞれの生徒の学習状況を把握するのも簡単です。学習がうまくいっていない生徒がいれば、早い段階で適切なサポートに取り組むことができます。
デジタル教科書では授業の記録も残せるため、振り返りもスムーズに行えます。デジタル教材は、授業に関する情報を共有しやすいのが特に魅力的です。
さらに、全体的につまずきやすいポイントを確認すれば、授業全体の質を向上させるためにも役立てられます。従来では気づきにくかった授業の課題も明らかになり、よりよい授業を展開することが可能です。デジタル教科書は、教員としての指導力アップにも貢献してくれるでしょう。
デジタル教科書には生徒と教員の両方にとって大きなメリットがあります。しかし、まだまだ普及は進んでいないのが実際のところです。
2019年3月の文部科学省の調査によると、指導者用のデジタル教科書(教材)の普及率について以下のデータが出ています。
【導者用のデジタル教科書(教材)の普及率】
小学校、中学校は現場に定着しつつある状況ですが、高等学校は20%以下の数値となっており、50%にも届いていません。
普及促進に向けての課題では、「環境整備」や、「自治体・学校への周知」「無償化の検討(公的支援)」が挙げられます。これらが今後の課題となってくるでしょう。
デジタル教科書は便利ですが、課題もまだ多いのが実情です。デジタル教科書には、具体的にどのような課題があるのでしょうか。
ここでは、デジタル教科書の導入を進めるためにクリアしなければならない課題について解説します。
デジタル教科書を授業で使用するには、学校のインターネット環境を整備する必要があります。
生徒や教員がスムーズに接続できるインターネット環境を整えられていない学校も少なくないため、大きな課題となっています。
また、インターネット環境を整えるだけでなく、コンピュータを設置したり校務支援システムを導入したりすることも重要です。
学校におけるIT基盤の構築は、地域による格差が出やすいといわれています。デジタル教科書の導入をはじめとするIT化を実現するには、そのような格差をいち早くなくす必要があります。
地域による格差をなくし、どの地域に住む生徒もきちんとしたIT基盤のもとで学習を進められるようにしなければなりません。
デジタル教科書の活用によって授業を有意義なものにするには、教員がデジタル教科書に関する知識をしっかり身につける必要があります。そもそも教員がデジタル教科書の機能をフル活用できていなければ、デジタル教科書の魅力を最大限に活かすことはできません。
教員がデジタル教科書を使いこなすためには、本人の努力も必要です。研修に積極的に参加したり、自らデジタル教科書を活用する機会を増やしたりすることが大切です。
実際にデジタル教科書を使用していけば、実務に即したノウハウを蓄積することもできます。デジタル教科書はまだ導入が始まったばかりの段階であるため、実際に使用しながらより有用な使い方を模索する必要があるでしょう。
導入が進められているデジタル教科書には、さまざまなメリットがあります。授業を効率化し、従来以上に有意義な授業を展開するために役立つでしょう。
デジタル教科書のメリットを活かすには、教員自身がデジタル教科書に関する知識やノウハウを増やすことも重要です。
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教員人材センター編集部
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