教員採用試験とは?難易度が高いといわれる理由と対策を解説
教員採用試験は、公立学校の教員採用にあたり行われるもので、名称は自治体によって多少異なります。試験は筆記試験と面接試験で構成され、特に面接試験は形態が多様であることから対策に頭を悩ませる受験者も少なくありません。
面接試験は面接官という相手がいるため、画一的な対策では不十分です。この記事では、教員採用試験における面接試験の対策ポイントや、よくある質問と回答例、面接試験に落ちる人の特徴などを詳しく解説します。
教員採用試験は、都道府県および政令指定都市の教育委員会が実施しています。そのため、面接の形態や評価基準も全国一律ではなく、自治体や学校によって異なるのが実情です。受験する自治体や学校の試験傾向に合わせた対策が求められます。
面接試験の形態は多岐にわたり、例を挙げるだけでも、個人面接・集団面接・集団討論・集団活動・模擬授業・場面指導など、実にさまざまです。近年は人物評価が優先される傾向があり、筆記試験より面接試験の配分が高くなっています。
これまでは、筆記試験に焦点を当てた暗記型の勉強法が重視されるケースが多くありました。しかし、面接試験の配分が高くなった現状では、従来と同じような対策で合格するのは難しいと考えましょう。
面接試験では、いわゆる「人となり」をチェックされます。しかし、相手となる面接官とは初対面であるケースがほとんどであるため、短時間で自分の人柄や長所を伝えるには、相応の工夫が必要です。ここでは、身なりや言葉遣いなど、主に第一印象アップのための基本的な対策ポイントを解説します。
面接試験の内容は事前に公開されません。一方で、過去の受験者による経験談などから、聞かれる質問にはおおよその傾向があることも事実です。
内容としては、人物論的な質問と教育論的な質問が半々というのが一般的です。面接試験は総じて、あなたはどういう人物なのか、どんな教員になりたいかと聞かれると思ってよいでしょう。昨今のトレンドや自治体・学校ごとの特徴も調べておくと、より効果的な対策が立てられるでしょう。
第一印象に影響を及ぼすのは、身なりや言葉遣い、所作などです。面接に適した清潔感のある服装で臨む、入室や退室の際には所作に気をつけるなど、社会人として基本的なマナーは心得ておく必要があります。
言葉遣いについては、略語やネットスラングなどはもちろん、二重敬語など過度に丁寧な言い回しにも注意が必要です。普段から正しい日本語での会話を心がけましょう。
質問に対して回答するときは「相手はこの質問で何を知りたいのか」という意図を的確に理解することが大切です。基本的には結論から始め、その後に理由を述べるのが望ましいでしょう。
自分の得意分野や相性が良いと感じた面接官からの質問には、つい勢い余って聞かれていないことまで話してしまいそうになります。しかし、面接試験では避けたほうが無難です。自然な笑顔で明るく話せば、相手からの印象はなお良くなるでしょう。
面接試験での質問に一定の傾向はあるものの、時代や社会の変化にともなって内容にも差が出てきています。たとえば、オンライン授業に関する質問などは、10年前であればほとんど聞かれることはなかったでしょう。 また、自治体によっては独自に注力している分野があることも多く、その分野に関する知識の深さを問われることもあります。
このように、その時々のトレンドや自治体ごとの特徴があることを理解しておくことは非常に重要です。
面接試験にはさまざまな形態があるものの、よく聞かれる質問はある程度固定化しています。ここでは、これまでの教員採用試験で多く聞かれた質問と回答例を挙げていきます。より中身の濃い回答ができるよう、ポイントを把握しておきましょう。
教員を目指す理由は、必ずといってよいほど聞かれる質問です。ここで面接官が求めている回答は「子どもが好きだから」「昔からの夢だから」といった表面的なものではありません。また「安定しているから」「地元で働きたいから」などの待遇面を強調する回答も良い印象を与えないでしょう。
面接官はこの質問で、どのような教員になりたいのか、教員として子どもたちに何を伝えたいのか、といった将来の展望や熱意を知りたがっています。教員を志したきっかけや、学校生活で得られた自分自身の成長から、自分も子どもたちの成長をサポートする人物になりたいという話につなげるなど、回答にストーリー性を持たせると熱意が伝わりやすくなります。
将来の展望を回答に盛り込む必要があるのは、すでに教育に長く携わっている面接官に対し、自身が教員としてどのような価値を生み出せるのかイメージさせるためです。また、仕事をしながら自分自身も成長していくという気概がなければ教員は務まらない、という見方を持つ面接官も少なくありません。
その自治体や学校で長く働きたいという思いが伝わるような回答を意識してください。
自分の長所と短所も良く聞かれる質問のひとつです。長所は漠然と説明するのではなく、どのように教育の場に生かせるかを具体的に説明しましょう。
短所については、まず自分自身が短所としてきちんと理解していることを伝えた上で、その短所を改善するために実践していることなどを説明します。 ここで忘れてはいけないのは、長所と短所は表裏一体であるということです。例えば、思慮深い性格は長所とも捉えられる一方で、決断に時間がかかるという短所と捉えることもできます。
逆にいえば、短所を必ずしもネガティブに捉える必要はありません。短所と思われるようなことを生かして何ができるのかといったことも考えてみましょう。長所と短所をコントロールし、自分自身の武器とすることは社会人として非常に重要です。
自分自身の性格にかかわる質問に対する回答では、面接票(志願票)の自己PRと連動させることが大切です。ここで整合性の取れない回答をしてしまうと、相手にちぐはぐな印象を与えてしまいますので、自身をよく分析することから対策を始めましょう。
いじめや体罰は教育の現場における大きな問題の一つでもあります。一方で、加害者と被害者が存在するため、デリケートで難しい話題です。若く柔軟な頭で考えれば、飛び抜けた改善策を提案することもできるかもしれません。しかし、面接試験の場では一般的な回答をするのが無難です。
すでに自治体や学校で防止策を講じている場合は、その取り組みと絡めて回答するのも良いですが、「この対策では不十分」「もっと良い方法がある」といった批判的な内容になると、相手の心証を悪くしてしまいます。
本来、これらの問題は教育現場で働く者として意識を高く持って考えなければならないことです。一方で、実際の現場を見ていないと、実態とかけ離れた意見を述べてしまう可能性もあります。 「いじめや体罰については毅然とした対応を心がける」「コミュニケーションを重視する」といった回答が望ましいでしょう。
学校の教育にはカリキュラムがあり、それに沿って教育現場は動いています。一方で、求められる教育のあり方は時代によって変化するものです。そのため、面接試験でも「学力向上」「主体的な学び」「教育の情報化」など時代のトレンドと絡めた質問をされるケースが多くあります。
ここでは、文部科学省が発表する最新の学習指導要領に目を通してポイントを押さえた上で、実施したいと考えている授業内容を説明することが重要です。 「主体的な学び」のために、フィールドワークや生徒による積極的な発表の場を設けたい、「教育の情報化」においては、このような教材を使いたい、といったように具体的に回答しましょう。 他の自治体や学校での事例を調べておくのもおすすめです。
試験に絶対的な基準はないものの、不合格となった人にはある種の共通点が見られることも事実です。 逆に考えると、その点に気を付けることで合格する確率が上がるということでもあります。ここでは、面接試験に落ちる人の特徴を解説します。
話は長く内容が濃ければ良いというものではありません。面接試験の限られた時間の中では、分かりやすさや簡潔であることが求められます。
面接官からすれば「長々と話を聞かされたものの、質問に対する回答になっていない」というのは好ましくありません。面接では、基本的なコミュニケーション能力も見られています。
聞かれたことに簡潔に答え、結論から述べることを心がけましょう。しかし、大まかな内容だけ考えて、面接のときに的確な回答をしようというのは無理があります。時間を計りながら、実際に口に出して練習を繰り返すことをおすすめします。
暗記型の対策は筆記試験の一部には効果を発揮するものの、面接試験では逆効果になることもあります。「必ず聞かれる」といわれている質問であっても、その後に面接官がどのように話を広げていくかはわかりません。
想定外に質問を掘り下げられた結果、回答がしどろもどろになってしまうと、文章を暗記しているだけだと思われてしまいます。十分に準備をして練習を重ねるのは大事ですが、その答えに至った理由を自身でも深く考えて、表面的な回答にならないように注意しましょう。
面接試験の配分が高い傾向にあるのは、教員の人間性や教育に対する熱意が重視されているからです。 なぜ教員になりたいのか、どのような教員になりたいのか、といった質問に対して、目をキラキラと輝かせて笑顔で回答するのと、待遇面のことを淡々と話されるのでは、感じられる熱意がまったく異なります。
教員になりたい理由や教員としての理想など基本的な要素は明確にし、その自治体や学校を選んだ理由も具体的に伝えましょう。
教員採用試験では、重視されるポイントを押さえて面接試験に備えることが重要です。過去の傾向から十分な対策を講じるのは有効ですが、近年のトレンドやデリケートな問題に対しても的確な回答が求められます。その全てを一人で対策するのは容易ではありません。
しかし、きちんと対策すれば合格の可能性は高まります。この記事を参考に教員採用試験の対策をおこないましょう。
教員人材センター編集部
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