教員の雑務は、生徒が帰った後に行います。
次の日の授業の準備や行事の準備、部活動と多岐にわたります。この仕事の多さから、早く帰れず精神的なストレスが溜まり、辞めたいと考える教員は少なくありません。
この記事では、教員を辞めたい理由を詳しく掘り下げ、それに対する文科省や各自治体の取組、さらに転職の考え方と解決できる方法について解説していきます。
子供のころからの夢、あるいは教育実習での子供たちとの出会いに感動して目指した道、教員。憧れの職業だったはずなのに、教員を辞めたいと悩む方が多くいらっしゃいます。原因として、多忙でストレスフルな毎日を過ごさなければいけない教員の働き方が問題視されています。
教員を辞めたいと悩む原因は主に3つあります。
教員は「すべては子供たちのために」という崇高な使命感に拘束され、さまざまな仕事を日々こなしています。
教員の1日の流れは以下の通りです。
・出勤時刻前の部活動
・あいさつ運動
・登校指導
・午前の授業
・給食時間の食育指導
・休憩時間の子供たちとのふれあい時間
・午後の授業
・下校指導
・再び部活動
・学年会や教科部会
・校務分掌による作業と続き
・子供たちの提出物の点検やその日の評価
・翌日の授業の準備
「翌日の授業の準備」をする時間に至るまでに、勤務時間が終了しています。
小学校では全学年の英語授業も始まり、防災教育、食育教育、ICT教育、プログラミング教育など、いわゆる主要教科以外にもたくさん学ばせるべき教育があり、すべてを教員がこなします。
そのほかにも、児童・生徒指導、進路指導、行事の準備、保護者対応、各研究会や研究授業、教育環境整備など、挙げればきりがありません。
教室の天井埋め込みエアコンの掃除やプールの管理まで教員の仕事ですから、「なんでも屋」と揶揄されてもしかたありません。
1番大切な仕事は、子供たちに質の高い学びを提供することと、子供たち一人ひとりの成長に寄り添い支えることのはずなのに、多忙極まる教員たちは、その部分に時間をかけることができなくなるくらい、疲弊しているのが現状です。
教員は勤務時間外の仕事もたくさんあります。
直接子供たちに関わることとしては
・特別に児童・生徒指導が必要となった場合などの保護者面談
・不登校や欠席が続く児童・生徒の家庭訪問
・部活動の試合やコンクールの引率
などがあり、これらは休日や夜に対応します。
それ以外にも、地域の行事への参加、祭事などでの見回り、学校協力隊の方々との打ち合わせなどで、年間何回も駆り出されます。
「子供たちのために」という使命感により、教員自身のプライベートな時間が削られています。
教員のストレスの原因としては、膨大な量の仕事、保護者対応、職場同僚との人間関係、教員としての立場などが考えられます。
多忙な毎日により、自分の家族やプライベートにかける時間が保てなくなることは、大きなストレスになります。
また、子供たちの成長にとってよりよい環境を作るために保護者との良好な関係が欠かせませんが、稀に困難な場合もあり、これもストレスの大きな原因になっています。
そして、学校単位という狭い職場環境のなかで同僚教員と信頼関係が築けない場合、その教員の日々のストレスは溜まる一方です。
さらに、教員は教育公務員として、常に子供たちの模範となり、規範に則った行動が求められます。教員を続けている限り、教員という肩書によって勤務時間以外でも周囲の目が気になり、束縛されている毎日にストレスを感じている方も多いのが現状です。
このような教員の現状を把握した文科省は、平成28年から学校における働き方改革を進めています。
中央教育審議会でも議論が行われ、平成31年1月には「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」という答申が取りまとめられました。
答申の冒頭には、以下のような内容があります。
” ‘子供のためであればどんな長時間勤務も良しとする’という働き方は、教員という職の崇高な使命感から生まれるものであるが、その中で教員が疲弊していくのであれば、それは’子供のため’にはならないものである。教員のこれまでの働き方を見直し、教員が日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで、自らの人間性や創造性を高め、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようになるという、今回の働き方改革の目指す理念を関係者全員が共有しながら、それぞれがそれぞれの立場でできる取組を直ちに実行することを強く期待する。”
[引用元]中央教育審議会:新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)
これを受けて、実際に学校現場も変わり始めています。今年の2月に公表された「学校における働き方改革~取組事例集~」には、働き方改革を実際に行って成果を上げている全国の学校の取組が紹介されています。[注3]
[注3]文部科学省:学校における働き方改革~取組事例集~
たとえば、業務の精選と効率化の例として
通知表回数減
行事の精選
欠席遅刻連絡のデジタル化
家庭訪問廃止
小学校での教科分担制
ICT活用による効率アップ
などが報告されています。
4つの具体的な改善例をご紹介します。
職員室業務アシスタントの導入や民間企業との連携による職員室のレイアウト改善などが報告されています。
ICカードやタイムカードの導入による勤務実態の「見える化」により、教員の意識改革や管理職による教職員の実態把握などの例が取り上げられています。
中学校教員の多忙の原因である部活動についても、指導時間の見直しや地域資源の活用、地域と連携した部活動の運営例などが報告されています。
学校閉庁日の設定や留守番電話の導入、保護者や地域に対する働き方への理解や協力を求めた事例なども報告されています。
教員の現状を踏まえた文科省の取組により、教員がよりよく働けるように各自治体も改革を進めている状況がわかります。
働き方改革は発展途上中であり、今は一部の自治体や学校での取組かもしれませんが、必ず全国的に、全ての学校が何らかの改革に着手します。そして確実に、多忙な教員の姿を変える希望の光が見えてきています。
現在は教員の働き方改革の成果も出てきており、各自治体の教育現場の意識改革も進み、よい方向に変化してきています。
今現在つらい状況にあり、教員を辞めたいと悩んでいる方々にとって、せっかく手に入れた教員の仕事を辞めるという決断は、もう少し先送りすることもひとつの選択肢です。
働く環境を変える2つの解決方法をご紹介します。
全国の小中高等学校の数は、約2万6,000校。そのうち私立学校は約2300校あります。
国公立学校も、地域のカラーや学校の教育目標によって、それぞれの雰囲気に違いがあります。
しかしそれ以上に私立学校は、学校創始者の理念に基づく教育方針、特色ある教育カリキュラム、個性豊かな学校文化など、個々の特色の違いがはっきりと表れています。通っている児童生徒の傾向もさまざまです。
民間企業も同業他社で特徴が全く違うように、私立学校の場合も、同じ学校とはいえ、職場環境や職場での共通理解は全く異なります。
それはつまり、さまざまな環境のなかで働くチャンスがあるということに繋がります。教員というスキルを武器にして、自分に合った環境を求めて職場を変えることは、教員を辞めたいという悩みを解決する方法の1つです。
平成28年度学校教員統計調査によると、定年以外で離職した教員のうち、約24%は家庭の事情が原因です。[注1]
教員のなかでも小学校は女性の割合が高く、結婚や出産、育児、介護など人生のステージごとに家庭と仕事の両立に悩みます。真面目な性格の人ほど、家庭のために授業準備の時間がなくなったり、子供たちと関わる時間が少なくなったりすることに罪悪感を覚え、思い悩むケースが多々あります。
そのような悩みがある場合は、辞める前に雇用形態を変えてみるのも1つの解決方法です。
公立学校では管理職に相談することで変更が可能になりますが、私立学校にも非常勤講師や専任講師といった雇用の募集が多数あります。
自分にあった雇用形態や校種や教科を選択し、学校の方針や特徴を調査することによって、ピッタリ合った職場に出会う可能性もあります。
教員の過酷な勤務実態に悩み、教員を辞めたいと考えている方々も多くいらっしゃるなか、文科省が進めてきた働き方改革がようやく各自治体や私立学校に浸透し、学校の意識も変わり始めてきています。
教員を辞めたいと悩んでいる方は、他業種への転職を考える前に、自分のスキルを生かして「職場を変える」という選択を考えてみてください。
教員人材センターは、そんな方々が数あるなかから最適な学校と出合うことができるように、エージェントが責任をもって全力サポート致します。求人票からだけでは見えにくい部分もあります。プロである私たちにお任せください。
もう1度働く喜びを感じられるように、私たちも精一杯お手伝い致します。ぜひお気軽にご連絡ください。
教員人材センター編集部
教員人材センターでは、教員の方、教員を目指している方に、教員採用や働き方、学校教育に関する情報を発信していきます。