EdTech(エドテック)とは?今注目されている理由を徹底解剖

#基礎知識

監修者

田坂圭吾

教員人材センター キャリアコンサルタント

学校教育

教員志望者・教員への転職希望者の方であれば、「エドテック」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
ただし、「聞いたことがあるだけで、詳しいことは把握していない」という方もいらっしゃるはずです。
近年ではこのエドテックという技術を導入して、授業や教員の業務改善を行っている学校が増えてきているのです。
それでは、エドテックとは一体どういった技術で、具体的に何ができるのでしょうか。
こちらの記事で詳しくご説明いたしますので、学校選びの参考にされてください。


これまで行われてきた「一斉授業」

「学校の授業」と聞いて思い浮かべる光景は、先生が教壇に立ち、黒板で授業の内容を説明し、生徒たちが黒板をノートに書き写す、といったものが多いのではないでしょうか。
いわゆる、これまで一般的に行われてきた「一斉授業」がこの形式です。

一斉授業では、どうしても教員側からの一方通行な授業になりがちです。
教員側から生徒の発言を促しても、なかなか手があがらない、といったことも少なくありません。

インターネットやパソコンなどがあまり普及していない時代、多くの生徒を相手にするには、これが一番効率的だったのは事実でしょう。

しかし、いまはどうでしょうか。
文部科学省の方針により、学校は個別最適化を進めています。また新型コロナウイルスの影響もあり、より学校は教育格差を無くしていかなければなりません。これからは多様性を意識したうえで子どもたち一人一人のニーズに応えていくことが重要であり、必ずしも一斉授業が必要ではない世の中になってきています。

一斉授業を変えるための方法はいくつか存在していますが、今回はその中でも「エドテック」に焦点を当てて解説します。


エドテックとは

それでは、エドテックとは具体的にどのような教育方法なのでしょうか。

エドテックとは、Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語であり、「テクノロジーの力で教育にイノベーションを起こす取り組み」というのが一般的な考え方です。

ITやテクノロジーが浸透していない領域で、それらの活用を進めていくことを総称して「X-Tech」といいます。
エドテックはこの「X-Tech」のうちのひとつで、学校や塾など、実際に教育を提供する現場で使用されるアプリやサービスの配信全般ことを指します。

自宅や外出先など、いつでも好きな時に授業を受けられるオンライン学習サービスなどが良い例でしょう。

また、生徒が学習するためのものだけではなく、教員が生徒の学習状況を把握・管理するツールの導入などもこれに含まれます。


エドテックとeラーニングの違い

エドテックと似たもので、eラーニングというものがあります。
こちらは一般的にエドテックよりも世間に浸透しているのではないでしょうか。

実はeラーニングはエドテックと大きな違いはなく、いつでも好きな時に授業や講義が受けられる、教員による教育の質の差がないなど、メリットも多く共通しています。
塾のサテライト授業などを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。

強いて違いを挙げるとすれば、eラーニングはPCやCD-ROMなどのメディアが広まりはじめた際に使われていた言葉で、エドテックはスマートデイバスが浸透してきてからの言葉、といった点でしょう。


エドテックでは何ができる?

では、エドテックでは具体的に何ができるのでしょうか。

とある高等学校では、Webで毎日10分間の小テストを生徒に行わせたり、毎日の学習時間を記録させたりし、週に一回それを必ず振り返るというPDCA学習を実施したとのことです。
その結果、模試での全体的な成績の向上が見られたという結果が出ています。

その他、夏季休暇中の宿題がスマートフォン宛てに配信され、教員が生徒の取り組み状況を即時に把握できるといった事例もあります。

※参考:首相官邸ホームページ「Edtechを活用した教育の質の向上」

これらの「教材の配布」はLMS(Learning Management System、学習管理システム)というエドテックの一種が用いられており、毎回プリントを配布する必要がないため、経費も手間も削減できるのです。

また、これまでの「連絡網」に取って代わったのが、エドテックの一種である「教育SNS」です。
少し前まではクラスに連絡網があり、担任から順に各宅に連絡事項を電話で伝達していく方法が取られていました。
しかし現代では、電話番号が個人情報にあたることなどから、連絡網を教育SNSに切り替える学校も増えてきています。

教員用SNSなども存在しており、教員同士のコミュニケーションに利用している現場も。
他のクラスはもちろん、場合によっては他の学校の教員ともコミュニケーションが取りやすくなるため、学校間・教員間での連携が強固なものになります。

補足として、これは大学の話になってしまいますが、講義をオンラインで受講できるMOOC(Massive Open Online Course)もエドテックのひとつです。
MOOCの中にも複数のサービスが存在しますが、大学で用いられているものは、決められた時間に大学に行かずとも、インターネット上で都合の良い時に受講をし、単位を取得することができるといったものです。
ポイントとしては、「単位まで取得できる」という点でしょう。


エドテックの市場規模

ITの普及が遅れていた教育現場ですが、近年ではIT企業が次々と参入し、新たなサービスが日夜開発されています。 エドテックと一口に言っても、教材や授業をオンラインで配信するプラットフォームの他、教員向けの学習支援・管理ツールなど、活用場面は多岐にわたります。

先ほど挙げたMOOCに含まれるものに「gacco」というものも存在しているのですが、これは、大学教授陣や企業のプロフェッショナルなどによる本格的な講義を、誰でも、いつでも受けられるWeb上の学習サービスです。
勉強をし直したい社会人などから支持を集めています。

また、学習用のSNSなども台頭してきており、エドテック市場は、まさに黎明期と言っても過言ではありません。

野村総合研究所(NRI)は2016年度におけるエドテック市場規模を約1,700億円と推計しており、まだまだ市場拡大の余地が残っていると考えられています。

※参考:株式会社野村総合研究所「EdTech市場の現状と課題」


エドテックが注目されている理由

エドテックのサービスやプラットフォームが開発された背景には、その企業ごとの事情がありますが、教育現場には、エドテックが解決できるであろう課題が多くあります。
それが、エドテックが今注目されている一番の理由ではないでしょうか。


双方向からのコミュニケーション促進

エドテック台頭前は、一斉授業を行い、教員が教壇で一人語りをする場面が圧倒的に多かったかと思います。
しかし、エドテックの導入により、教員から生徒、生徒から教員と、双方向からのコミュニケーションが可能となるのです。

質問やディベート、課題の配信、提出などもプラットフォーム上で行えるため、生徒とのやり取りの機会が増えるでしょう。


教育格差の解消

主に学外の話になってしまいますが、経済格差による教育レベルの差や、親の学歴・収入による学習機会の差を埋めることに、エドテックが貢献すると考えられています。

具体例を挙げるのであれば、リクルートマーケティングパートナーズが運営しているインターネット予備校「スタディサプリ」や、株式会社葵が運営する中高生向けインターネット学習塾の「アオイゼミ」。

いずれも料金は比較的安く、無料で受けられる講習も存在します。
こうしたものを利用し、学校に行かなければ学べない内容を学習。
結果、例えば、高校に通っている生徒と通えない子どもとの間にある学力を埋めることに繋がるのではと期待されているのです。


グローバルな人材の育成

また、英語力向上においても、エドテックが活躍する場面は多いです。
現代社会では、自身とグローバル化とを切り離すことは難しいでしょう。
教育に期待されていることは、世界でも通用する人材の輩出です。
そこで必ず必要になってくるのが、英語ではないでしょうか。

ビデオ通話などを利用したオンライン英会話、AIを活用した英会話や発音練習など、英語学習は日々アップデートされています。

これに伴い、多くの企業が英語関連サービスを提供しているのです。
もちろん、教育現場でも、これらを取り入れている事例があります。


教育現場の働き方の改善

教育現場での働き方の改善にも貢献するのではと、エドテックが期待されています。
教員を志望している方や、現在教員の方はご存知かと思いますが、学校教員の業務負担の大きさは、多くのメディアでも取り上げられているのが現状です。

その要因は様々ですが、非効率的な仕組みや、ITツールの未導入も一因と考えられています。

エドテックでは生徒の課題の進捗などをWebで確認できますし、オリジナル問題集などを作成する際は問題用紙の準備・整理が不要で、紙を使ってすべて手作業で行うよりも圧倒的に時短になり、教員の負担も軽減するでしょう。


エドテックで日本の教育はどう変わる?

エドテックがこれからどんどん教育現場に導入されれば、従来の教育環境が大きく変わる可能性が大いにあります。

これまで再三ご説明してまいりましたが、テクノロジーによって双方のコミュニケーションが深まり、授業を受ける側主体のアクティブ・ラーニングを行いやすくなることで、一方通行の授業がグンと減るはずです。
それにより、生徒が自ら考え、行動する・アウトプットするという機会が増えるのではと予想されます。
これは、生徒が社会に出た時に必ず役に立つ力です。
中学生・高校生のうちからエドテックによるアクティブ・ラーニングを行っていれば、生徒が将来社会人になった時、活躍できる場が増えるでしょう。

また、インプット系の学習も、AIの活用により、さらに効率化されるはずです。
生徒の学習効率が上がるということは、生徒にとって「学習しやすい」ということ。
学習から目を背けていた生徒も、エドテックによって勉強がはかどるかもしれません。
結果、模試の平均点数が向上する、といったことも期待できます。

さらに、先述のようにエドテックにより、学校に通えない子どもも、学校に通っている子どもと同じように平等に学習ができるようになれば、経済的な教育格差が軽減され、学力の差が改められる可能性も大きいでしょう。

教員にとっては、課題の管理や作成が効率化されることで、業務改善・環境改善が見られるのではないでしょうか。


エドテック導入校への就職は「教員人材センター」がサポート

こうして改めてエドテックによる影響を考えると、メリットがかなり多いことがわかります。
生徒に対してはもちろん、教員側にも多くの利点があり、エドテック導入校で教員を務めた場合は、生徒とのコミュニケーションの増加はもちろん、ご自身の中で忙殺されているイメージの教員像が改められるかもしれません。
もちろん、エドテックを導入しているからといっても、教員という立場の責務の重さは変わりありませんが、業務負担を少しでも軽減できるのであれば、その余った時間を、ご自身の成長のための学習時間にあてられる可能性もあります。
それこそ、エドテックを利用して学習しても良いでしょう。

「教員人材センター」は、1都3県300校の私立学校との密接な繋がりがあります。
そのネットワークがあるからこそ、求人票では見えにくい部分と、教員志望者・転職希望者の要望を擦り合わせることができるのです。
エドテック導入校への就職や転職をお考えの方は、ぜひ、教員人材センターへご相談ください。
個別就職相談などを通じてきめ細やかにヒアリングを行い、あなたにベストマッチな学校をご紹介いたします。


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