教員採用試験とは?難易度が高いといわれる理由と対策を解説
公立学校の教員を目指している人の最後の関門が教員採用試験です。これまで努力してきた成果を発揮する場所ですが、同じように教員を目指しているライバルも多くいるため、残念ながら不合格になる場合もあります。また、教員採用試験に合格して教員採用候補者名簿に記載されても、成績順に採用されるため、必ず教員として働けるとは限りません。
そのため、教員採用試験を受ける人は、最悪のケースを想定して、教員になれなかったときの進路について考えておくことも重要です。そこでこの記事では、主に中学や高校の教員を目指している人に向けて、教員採用試験に落ちてしまったときの進路について解説していきます。
教員採用試験の難易度は一般的に高いといわれています。文部科学省の「公立学校教員採用選考試験の実施状況」に関する調査によると、令和元年度の公立学校教員採用選考試験の倍率は4.2倍でした。教員採用試験が難しいとされる理由には倍率の高さも関係していますが、「再チャレンジしている人が多い」ことが大きな理由です。
教員採用試験の受験にあたって回数制限はありません。自治体によって年齢制限を設けているところもありますが、厳しくても40歳前後となっており、それまでなら何回でも受けられます。
再受験している人は不合格だったときの反省を活かしてしっかり対策を練っているため、結果的に合格ラインが上がってしまい、大卒者が初回の受験で合格するのは難しいとされているのです。
また、近年は筆記試験よりも面接を重視する傾向にあり、単純な暗記だけでは突破できなくなってきている点も難しさに拍車をかけています。そのため、不合格になったからといって恥じる必要はありません。不合格になっても、翌年やそのまた翌年といった具合に何度も受験する人も珍しくはないのです。
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令和元年度の教員採用試験の倍率は4.2倍でしたが、実は倍率そのものは低下傾向です。教育新聞によると、教員採用試験の倍率は平成12年度の12.5倍をピークとして右肩下がりの状況にあるということです。倍率が低下傾向にある原因としては「団塊世代の定年退職」「民間における売り手市場」などが要因として挙げられます。
日本では少子高齢化が進んでおり、団塊の世代はちょうど定年退職の時期を迎えている上、新しく教員を目指す若い世代は昔に比べて数が少なくなっています。 民間も売り手市場が続いており、厚生労働省が毎月発表している「一般職業紹介状況」を見ると、新型コロナウイルスによる影響が及ぶ前の2019年までは有効求人倍率も全国的に右肩上がりに上昇していました。
そのため、好条件が提示されやすくなっていて、公務員である教員よりも民間企業へ就職を目指す人が増えていたのです。「辞める人の増加と応募する人の減少」という状況によって、倍率は低下傾向にあります。
また、「教員の人気低下」という問題もあります。近年、報道によって「残業時間の多さ」や「保護者対応」の大変さなどが話題になったことで、「教員は大変な仕事」というイメージを持つ人が増えてしまいました。結果的に「教員としてのやりがい」を求めるよりも、「労働条件の良いところで働きたい」という人が多くなってしまい、教員採用試験を受験する人は減少しています。
教員採用試験の倍率は低下傾向にあるとはいえ、令和元年度時点で4.2倍なので合格はそう簡単ではありません。教員採用試験に落ちる原因をよく分析して、入念な対策を取りましょう。
教員採用試験に落ちる原因として挙げられるのは、大きく分けて「筆記試験の勉強不足」「面接や模擬授業の対策不足」の2つです。
教員採用試験における筆記試験は「教職教養試験」「一般教養試験」「専門教養試験」「論作文」の4つがあり、基本的には勉強量がものをいいます。そのため、まずはそれぞれの基本的な対策をきっちりこなしていくことを考えましょう。
教職教養試験は、いずれかの自治体で過去に出題された問題の類似問題が全体のおよそ8割程度を占めているので、過去問を重点的にこなすことが大切です。
一般教養試験については、問題の難易度はそれほど高くありませんが、広い範囲から出題されるため参考書などを読み込むことをおすすめします。 ただし、時事問題や地方ならではの問題が出題されることもあるため、ニュースや新聞などで情報収集しておくことも大切です。
専門教養試験は一般教養試験より深い問題が提出されるため、参考書や教科書を読むだけでなく問題集などを解いて実践力を高めておく必要があります。中学や高校の教員を目指す場合は大学入試レベルの問題になるので、入試問題を解くのもよい勉強になるでしょう。
論作文は実際に子どもたちを教える教師の目線に立って具体的な解決策を記述できるかどうかが重要です。学術論文のように難しく考える必要はなく、基本的には序論から結論までわかりやすく説明できているかどうかが問われます。論作文についてはある程度の慣れも必要なので、練習あるのみです。何度も模擬テストをこなして感覚をつかんでいきましょう。
近年の教員採用試験では筆記試験よりも面接や模擬授業が重視される傾向にあります。面接や模擬授業では知識量だけでなく、状況に応じたフレキシブルな対応力も必要になるため、答えを暗記するだけでは合格は難しいのが現実です。
例えば、面接で「なぜ教員になろうと考えているのか」を質問された場合に、「高校時代にお世話になった恩師に憧れがあったから」と答えたとします。すると、面接官は続けて「なぜ、恩師に憧れを抱いたのですか」と質問してくる可能性が高いでしょう。 単に定型的な答えを用意していただけでは、こうしたより深い質問に答えられない事態が想定されます。
全ての質問を想定して対策を練るのは事実上不可能なので、自分が用意している答えのバックグラウンドをしっかりと整理しておき、臨機応変に答えられるよう準備しておくのがポイントです。
模擬授業については経験を重ねることで対処できる問題も多いので、実習などでできるだけ実践経験を積んでおきましょう。失敗した事柄などをメモしておき、同じ失敗を本番で繰り返さないようにするなどの入念な準備が求められます。
教員採用試験に落ちたからといって、教員への道が絶たれるわけではありません。スキルを高めつつ、再受験をする選択肢もあるため、それぞれの方法をよく理解しておきましょう。
教員採用試験に落ちてしまっても、他の進路を選択せず勉強に集中して、翌年に再受験するケースは多くあります。一般的に教員採用試験は9~10月に結果がでますが、翌年の一次試験は7月ごろに行われるため、実質的に1年もありません。
1年後にそのまま受験をするメリットは、「翌年の再受験に向けて勉強に集中できること」です。働いたり、大学に通ったりしながら勉強するよりも、余計なことを気にせず準備ができます。その期間の生活費をどうするかといった問題が解決できれば選択肢に入れてもよいでしょう。
ただし、時間があるからといって、だらだらと過ごしてしまわないように注意しなければいけません。 教員採用試験の日程が発表されるのはその年の3月ごろですが、それまで待つようなことはせず、不合格の結果が出てからすぐスケジュールを立てて準備を始めることが大切です。
教員採用試験で不合格だった人の進路として最も一般的なのが、臨時的任用教員または非常勤講師として働きながら翌年度の合格を目指す方法です。臨時的任用教員や非常勤講師として採用されれば、実際に子どもたちを指導できるので実践力向上が期待でき、面接や模擬授業への対策としては非常に効果的です。 また、働き方によっては正規職員と同等の給料がもらえる点も魅力で、生活費の不安を抱えている人にとっては一石二鳥な方法です。
自治体によっては、臨時的任用教員で勤務することで次年度以降の筆記試験の一部が免除になることもあります。
ただし、臨時的任用教員または非常勤講師として働くということは、それだけ自分の時間を削られるということでもあります。特に臨時的任用教員は実質的に正規教員とほぼ同じ仕事が課されるため、教員採用試験に向けて勉強する時間は少なくなるでしょう。 臨時的任用教員と非常勤講師の仕事内容をよく吟味して、自分に合った道を選ぶことがポイントです。
教職大学院に通うメリットは、「教員としてより深い専門技能を身につけられる点」です。一般的な大学院は研究指導に重点が置かれますが、教職大学院では教員に必要なスキルを高めることに重点が置かれるため、教員としての総合力を高めてくれるでしょう。
また、実習経験のカリキュラムも多く用意されているので、模擬授業に自信がない人にも向いており、修了者は「専修免許」を取得できる可能性がある点も魅力です。専修免許は教員の普通免許の中でも最も高い専門性を証明する免許で、教員採用試験で有利になったり、採用された場合の初任給が高くなったりするメリットがあります。
教職大学院は2年間通わなければいけませんが、1年目から教員採用試験を受けることが可能です。仮に1年目で合格した場合には卒業後にその自治体に採用してもらえるので、その後は安心して授業に集中できます。 教職大学院に通うためには学費がかかるというデメリットはありますが、それを補って余りあるメリットもあるので、進学を選択する人は多くいます。
年齢や家庭の事情などによって再受験するのが難しい場合は、就活をするのが現実的な選択肢になるでしょう。公立教員を目指していた人は、「雇用が安定している」という同じ理由から公務員を選択するケースも多いようです。
民間企業で就活する人は教育関係で働くことを目指す道もあります。典型的なのが塾講師です。教員と同じように子どもを相手に勉強を教えられるため、教員を志していた人に人気があります。
近年では塾講師であっても、勉強面だけでなく生活面のアドバイスを送ることが求められる傾向にあり、仕事内容は教員に近づいてきています。再受験のことも考えて、貴重な実践経験を積める場所として塾講師を選ぶ人も少なくありません。
ただし、塾講師の場合は公立教員と違って雇用は不安定になるケースがある上、勤務時間も平日の遅い時間帯や休日が中心です。そうした働き方の違いがある点には注意しましょう。
教員採用試験は公立の教員を目指す人が受ける試験なので、仮に不合格だったとしても私立教員を目指す道も残されています。ただし、私立教員は公立教員と比べて採用の流れや待遇が多少異なる点には注意しなければいけません。 私立教員を目指すことも視野に入れている人に向けて、私立の採用フローや私立教員になるメリットなどを紹介していきます。
私立学校では、採用活動をしている時期は学校ごとに異なるのが特徴です。教員採用試験の結果が出た後の1~3月にかけて募集をしているケースもあるので、「まずは公立教員を目指して、ダメだったら私立教員を目指す」という方法を選択できる場合もあります。
ただし、私立学校は公立に比べて、より厳しく経営状況を見極めながらの採用活動になるため、一度に大人数を募集することはあまりありません。各学校の年度あたりの募集人数は2~3名程度というのが一般的ですが、必ずしも予定数を採るとも限らないので、あらかじめ情報収集をしておくことが重要になります。
試験で実施される項目については筆記試験や模擬授業、面接試験といった具合に公立と私立での違いはほとんどありません。ただし、内容は受験する学校ごとで異なり、重視されるポイントにも差があります。
私立学校では、異動がなく長期間勤めることになるという理由から、教育理念や校風といった各学校のカラーにマッチした人材であるかどうかを重視する傾向が強いのが特徴です。そのため、公立の教員採用試験とはまた違った対策をして挑む必要があります。
私立教員として働くうえでの3つのメリットをご紹介します。
公立学校は基本的に年功序列の賃金体系になっているため、年齢を重ねないと収入は増えていきません。
私立学校も年功序列を採用しているところは多いですが、中には生徒の成績などを勘案して給与に反映させる実力主義を採用しているケースもあります。やりがいのある職場で働きたいと考えている人は、実力主義を採用している学校で働くのが向いているでしょう。
公立教員は各自治体によって採用されるため、一定年数勤めると、管轄内の学校へ異動させられます。
しかし、私立教員は学校ごとに雇用されるため、基本的に異動はありません。定年退職まで同じ学校で勤め上げることになるので、異動による引っ越しなどの不安やストレスを感じることなく、安定した環境で生活できます。
授業の内容は基本的に教員同士が集まる会議で決定されますが、その際に意見が採用されれば、すぐに授業に反映されることもあります。
公立学校では難しい、最新のニュースやトレンドを取り入れた授業も実施しやすいでしょう。
私立教員になる方法は大きく分けて「自分で就職活動をする」「スカウトされるのを待つ」「マッチングサービス(人材会社)を利用する」の3つです。自分で就職活動をする場合は、私立学校のホームページなどを参考に求人を見つけて直接応募します。 最も一般的な方法ではありますが、それぞれの学校の試験対策を自力でしなければならない点はデメリットです。
スカウトされるのを待つ場合は、私立中学高等学校協会が主催する「私学教員適性検査を受ける」または「履歴書委託制度を活用する」という2つの方法があります。前者は毎年8月ごろに行われており、その成績が各私立学校の学校長に配布され、それをもとに各学校がスカウトする仕組みです。
後者は名称通り、私立中学高等学校協会に履歴書を預けて、その情報をもとに各学校がスカウトするかどうかを判断する制度となっています。いずれの場合も実施の有無や内容については都道府県ごとで異なるため、事前によく確認しておきましょう。
マッチングサービスを利用する方法では、一般的な就活サイトなどと同じように「応募者が希望する条件と、募集する学校側の条件がマッチしたところを紹介してくれるサービス」を利用します。私立教員を目指すといっても場所によってはその数はかなり多くなるので、自分に合った学校を探すだけでも大変です。
マッチングサービスを利用すれば、自分で探す手間が省けて試験対策に集中できる上、充実したサポートを受けられることから利用する人も増えてきています。
教員採用試験に落ちた後で私立教員を目指す場合には、マッチングサービスを利用したほうが効率的です。どのサービスを利用したらよいか分からないという人は、私立教員専門のエージェントサービスである「教員人材センター」にご相談ください。
教員人材センターは首都圏にある300校以上の私立と取引実績があり、利用者の勤務継続率は99%という高いマッチング力を誇ります。 それに加えて「充実したサポート体制が整っている」「すべて無料で利用できる」といったメリットがあるので、私立教員を目指す人は検討してみてはいかがでしょうか。
教員人材センター編集部
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