文部科学省によるGIGAスクール構想の推進などによって児童・生徒1人あたり1台のPCやタブレットを用意する学校が増えています。
その中で、家庭にある端末を学校に持ち込んで使用するBYODを導入するケースも増えています。
BYODのメリットや導入に関しての注意点などが気になるところです。
そこで本記事では学校教育におけるBYODのメリットや導入する際のポイントを解説します。
BYODとは?BYODの読み方と正式名称、意味を解説
BYODとは(Bring Your Own Device)の略称で、「ビーワイオーディー」と読みます。個人が所有するPCやタブレット、スマートフォンなどの端末を会社や学校に持ち込んで使用するという意味です。
USBメモリーやSSDなどPCやタブレットに接続して使用する装置もBYODに含まれるケースがあります。
企業でいう「BYOD」とは?
企業におけるBYODは、従業員個人が所有するPCやタブレットを業務に使用することです。業務上でクラウドサービスを利用するケースが増え、会社が所有する端末でしか業務ができないというケースは少なくなりました。
テレワーク推進の動きもこうした傾向が強くなった一因と考えられています。
このように、会社以外の場所で、会社所有の端末以外で業務が可能になる状況が一般化しつつあることで企業においてBYODが取り入れやすくなっています。
また、BYOD導入によってテレワークのためのデバイス購入の必要性は低くなり、急いでテレワークに取り組みたい企業にとっては効率的です。
学校や教育でいう「BYOD」とは?
学校におけるBYODでは、教員の使用デバイスや児童・生徒が個人(家庭)で所有するデバイスを授業で使用することです。ここ数年の新型コロナウイルス感染症の影響により、休校やオンライン授業が続く状況下でもBYODによって「学びを止めない」体制の維持につながりました。
「BYOD」とよく似た「BYAD」とは?
BYODとBYAD、1文字違いで違いが分かりにくいと感じる方もいるでしょう。違いを分かりやすく解説します。
BYADは(Bring Your Assigned Device)の略で「ビーワイエーディー」と読みます。これは指定された端末を持ってくるという意味で、企業や学校から指定された端末を個人で購入して持ち込むことを意味します。
「BYOD」と「BYAD」の大きな違い
「BYOD」と「BYAD」の大きな違いは、持ち込む端末が指定されているかどうかです。「BYOD」は、端末の指定はなく、すでに持っている端末を利用できます。
一方、「BYAD」は企業や学校から持っていく端末が指定されており、指定された機種を持っていなければ、新たに購入する必要があります。
学校教育に「BYOD」と「BYAD」を導入するメリットとデメリット
学校教育にBYODとBYADを導入するそれぞれのメリットとデメリットは、以下のとおりです。
「BYOD」のメリット
学校でBYODを導入する場合、教員と児童・生徒が使用する端末を全て学校で用意する必要がなくなるため、購入やメンテナンスにかかるコストが抑えられます。
教員や児童・生徒がそれぞれ自身の端末を持ち込むことで、学校のパソコン教室だけではなく、教室や、家庭、屋外などさまざまな場所で使用できます。
非常時で休校になった際も簡単にオンライン授業を行う環境が作れることもメリットの1つです。家庭にある端末をそのまま使用できるため、新たに購入する必要がなく、最初から操作に慣れているケースもあるでしょう。
また、デジタル教科書や電子黒板、動画などを活用するICT教育の推進が強く求められている昨今、BYOD導入は大きなメリットになります。
「BYOD」のデメリット
一方で、学校に持ち込む端末のOSや機種が多様なことから発生するトラブルも多種多様となるのが難点の1つです。
例えば、プライベートで使用している端末を学校のシステムへつなげる際、セキュリティリスクが高まり、不正アクセスが起こる可能性や紛失時の情報漏えいの可能性があります。
また、端末が自由に選べることから家庭格差が見えやすくなります。最新型の端末を持ってくる生徒もいれば、中古端末を持ってくる生徒もいるでしょう。家庭事情によってすぐに購入できない生徒が出てくるケースも考えられます。
そうした目に見えやすい格差から、人間関係のトラブルが発生する可能性も否定できません。
「BYAD」のメリット
学校でBYADを導入した場合、生徒・児童はみんな同じ端末を使用するので端末による格差は生まれません。
同じ端末を使用することで、操作やトラブルの対応もある程度パターン化されるため、教員の負担を軽減できます。
「BYAD」のデメリット
生徒・児童が指定された端末を使用する場合、保護者が指定以外の端末を購入してしまう、端末の購入方法が分からない、購入を忘れてしまうといったように保護者がスムーズに購入できない可能性があります。
そのため、指定端末や購入方法についての説明会を開くといった工夫が求められます。また、BYODと同様で家庭の事情によって購入できないケースも考えられるので、購入までに定額を集金するといった仕組み作りも必要でしょう。
学校教育で「BYOD」を導入する際のポイント
学校教育でBYODを導入する際は、以下のポイントを押さえておくことをおすすめします。
1. 生徒の経済状況への配慮をすることが大切
生徒の経済状況への配慮も重要です。端末の価格は安価ではないうえに、OSやスペックによって購入費用には幅があります。
購入した端末によって生徒間で分かりやすい家庭格差が生じる可能性もあります。例えば、端末を周囲に合わせようとするあまり、保護者が経済状況に合わない端末を購入してしまい大きな負担をかけてしまうケースもあるでしょう。そういった家庭格差が原因でトラブルにならないよう配慮が不可欠です。
例えば、未購入の期間に貸し出せる端末を用意しておくといった配慮がポイントとして挙げられます。また、端末の分割払いに対応している店舗を探し、保護者に共有することで経済的負担が和らぐでしょう。
2. 交付金を利用すれば保護者の端末購入負担を軽減できる
国はGIGAスクール構想に向けて予算を組んでいます。その予算のなかには、国公私立の小・中・特支等義務教育段階や高等学校の児童・生徒が使用するPC端末の整備費用や低所得者世帯等の生徒が使用するPC端末整備のための支援金も含まれています。
また、自治体によっては端末購入費用の負担軽減のための交付金が出ているケースもあります。
このような支援金や交付金の活用を促すためにも、丁寧な説明会を開くことがポイントです。
※出典:
文部科学省MEXT「GIGAスクール構想の最新の状況について」(2022-05-24)
3. 端末の導入や運用、管理支援をしてくれる販売店を利用する
BYADとは違い、使用する端末は自由に選べるのがBYODの特徴ですが、どこで購入すべきか迷う保護者もいるでしょう。店舗によって価格が違うケースも多く、店を何軒も回って選ぶ時間が確保できないケースも少なくありません。
そのため、学校は導入端末の購入やメンテナンス、サポートなどに対応可能な店舗と提携し、保護者に紹介するのもポイントです。
店舗と提携することは学校側が端末を運用していく上でもポイントとなります。提携店舗があることで、メンテナンスや運用・管理支援を行ってくれるため、いざというときに迅速に対応できます
「BYOD」を導入する際の注意点と導入する前にやっておくこと
BYOD導入の前にやっておくべきこともあります。
1. 保護者への説明をしっかり行う
BYODではすでに家庭にある端末でも、新たに購入する端末でも使用可能です。どのような端末が望ましいかや購入にあたって活用できる交付金の紹介など、導入前に十分な準備期間を確保した状態で保護者へ説明を行うことが重要です。
2. 導入端末のスペックや仕様に一定の基準を設ける
端末によってスペックやOSはさまざまです。BYODでは持ち込む端末に制限はありませんが、端末のスペックによる格差を生まないためにもある程度基準を設けることが大切です。
また、低スペックであっては授業や課題で使用する際にエラーなどが起こり、スムーズに進行できない可能性が考えられます。
スムーズに授業を進めるためにも、使用する端末の基準を設けておきましょう。
3. 「BYOD」の運用ルールをしっかり決めておく
個人の端末を学校に持ち込むことで、授業中に集中できなかったり、授業や課題以外の目的で使用したりなどの問題も出てきます。さらにプライバシー保護やセキュリティ対策の面も考えた運用ルールをしっかり決めておき、教員・児童・生徒・保護者に周知させる必要があるでしょう。
4. 「MDM」を利用し、セキュリティ対策を万全に整えておく
BYODの導入で懸念されるセキュリティ対策について、どのような方法を採用するか迷う場合は端末を一元的に管理するサービスであるMDM(Mobile Device Management=MDM)の活用をおすすめします。
児童・生徒、教員それぞれの端末をリモートで制御することが可能で、紛失や盗難時には端末ロックやデータ削除、不正アクセスの検知も可能ですので、いざというときでも安心です。またアプリケーションの利用許可や機能制限などもそれぞれに管理できるので、不適切利用を制限できるなどのメリットもあります。
学校教育におけるBYOD導入はメリットが多い!ただし適切な準備が必要
学校教育においてBYOD導入は、ICT教育推進に役立ち、緊急時に休校となっても学習機会が大幅に損なわれないなどのメリットがあります。
ただし、児童・生徒・保護者に十分な説明や、BYOD運用ルールを利用者全員に周知することが大切です。また、セキュリティ対策のためのMDMを活用するといった取り組みも必要です。
教員人材センター編集部
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